最終姉「「大好きだぁーーーーー!!」」
本日12月6日は姉の日!そして評価してくれた人がさらに何人も!感謝です!
ついに最終話でございます。
もしこのあねおれを読んで心に残る何かを感じ取ってくださった方がいらっしゃったら、評価でも感想でも活動報告内のコメントでもどんな些細なことでもいいので『あねおれ読んだぞゴラァ!』という足跡を残してくださると、ヒロくんやムラサキさん達の生みの親として嬉しく思います。
私、親バカな者で。
「この世界に来てもう一年ねー。」ポリポリ
「もうそんなに経つかー。短かったようで長かったような、でもやっぱ短かったような・・・」ポリポリ
居間でお菓子をぽりぽりと齧りながらダラダラしゃべる俺とさきねぇ。
「異世界漂流一周年記念として、なんかでっかいことやりたいわね。」
「例えば?」
「冒険者ギルドアルゼン支部、謎の大爆発!とか。」
「テロるな。」
スケールがでかいとかじゃなくて、普通に犯罪です。
「じゃあマリーシア宅、謎の大爆発?」
「なんでそんなテロりたいの?しかもあの人アパート暮らしでしょ。周囲の人の迷惑になるからなー。」
「ちょっとヒロ、代案のない反対意見なんてヤジと同じよ?なんか意見出しなさい。」
「ふむ。じゃあ・・・噂の王都にでも旅行にでかけるとか?」
「せっかくだから結婚とかどうだ?ロマンチックではないか?」
「「え?」」
ノエルさんから爆弾発言が飛び出したのだった。
「え、ちょっと待って。この世界、姉弟で結婚できんの!?」
「そりゃできるだろ。え、そっちの国はできないのか?」
「できないっすよ!法律で禁じられてますから!」
「そうなのか。みみっちいな。トポリス王国は親子でない限り結婚可能だぞ?」
「「異世界すげぇ!」」
「ちょっとヒロ、今日結婚しましょ!」
「早い、早いよ!指輪だったり式場だったり色々あるやん!あとKAKUGOとか!」
「くぁwせdrftgyふじこ!」
「もはや何を言ってるのかわからない!
興奮したさきねぇの顔には右目に『結』、左目に『婚』という文字がでかでかと踊っていた。
しかし、結婚。結婚か・・・
俺なんかが姉さんの相手として一生そばにいてもよいのだろうか。
とりあえず色々考えなくてはいけないので、ノエルの森で瞑想しよう。
「ちょっとでかけてきます。」
「しかし まわりこまれてしまった !」
「なんでだよ!?」
「知らなかったのか? 魔王からは逃げられない・・・」
知ってたけれども!
「んで?なんで逃げようとしましたか?」
「いや、逃げようとしたのではなく・・・」
「はぁ・・・どうせ『俺なんかが姉さんの相手として一生そばにいてもよいのだろうか』とか考えたんでしょ?」
「ピンポイント!なぜわかるし・・・」
「姉が弟のことわからないわけないでしょ?」
「そっか。でも、そういうことなのよ。俺は姉さんのこと本当に大好きだけど、姉さんを幸せにできるかどうかわからないんだ。」
「なめんな。」
ねえさんの本気の怒り声にビクッとなってしまう俺。
「誰が『私を幸せにしてほしい』なんて頼んだのよ。私はヒロがそばにいてくれるだけでいいの。つーかヒロが私を幸せにするんじゃなくて、私がヒロを幸せにすんのよ。勘違いすんな!」
「・・・はい。」
姉さんが本気でそう思っていることが伝わる。伝わってしまう。
なら、これ以上俺がグダグダ言うのは姉さんを侮辱するのと一緒だ。
俺は自分を信じられないが、姉さんが信じる俺なら信じられる。
「・・・よし。結婚すっか!」
「その意気よマイブラザーダーリン!」
そして、結婚式当日である。
しかも、あれから一週間しか経ってない。
だが、結婚式当日である。
みんなビックリしているかもしれないが、当事者である俺もビックリしている。
この電撃結婚はこの大陸の文化レベルというか、制度に由来している。
現代日本では当然存在する戸籍だが、実はこの大陸には戸籍というものがないに等しい。
国が把握している戸籍は騎士や貴族といった高い身分の人間たちだけなのだ。
普通の庶民はどこで生まれようと(国内であれば)どこに移動しようと誰からも何も言われない。
なので結婚しても国に届け出る必要なんてないのだ。
早い話、当事者同士が「結婚しようか!」「うん、結婚しよう!」で結婚終了。両者の合意のみで夫婦になっちゃうのだ。
加えて、結婚式をする人もいればしない人もいるし、するにしても教会で精霊王様の前で誓いをする場合もあれば、知り合いを招いて飲み屋で騒いで終了の場合もあるらしい。
異世界のアバウトっぷりに、久しぶりにビックリしたぜ。
一応俺たちはアメリアさんに頼んで教会で結婚式をすることにした。
招くのはマリーシアさんやスレイ、ヴォルフなど親しい友人のみのこじんまりとしたものだ。
最初はノエルさんが『王国から王族を呼ぶ!』とか『現役のS級冒険者を全員招集する!』とか張り切っていたのだが、なんとか思いとどまってもらった。
面識のない偉い人に来られても困っちゃう。
「それでは、新郎の方。どうぞ。」
「は、はい!」
神父さんの声が聞こえたのでドアを開き、教会内に入る。
うう、今更になってタキシードのネクタイが途轍もなく苦しくなってきた。
そして緊張しすぎて前しか見れません。
「ヒイロー!右手と右足が一緒に出てんぞー!」
ヴォルフの声が聞こえたが、意味が理解できない。
え、右手っていつもどうやって動かしてたっけ?
右手なんだから右足と一緒に出してなかったっけ!?
もしや左手と一緒に出してたっけ!?
混乱しながらもアメリアさんの呼んでくれた神父さんの前まで到着する。
神父さんがなんか言ってるけど、頭の中に全く入らない。
何語? 俺日本語と英語しかわからないよ?
(注 神父さんはちゃんと日本語でしゃべってます)
「では、新婦の方。どうぞ。」
その言葉と共に、後ろのドアが開いた音がする。
俺の心臓の音はまるで大型バイクのエンジン音かと思うくらい激しい鼓動をうっている。
そして、後ろを向く。
そこには。
「・・・・・・綺麗だ。」
桜色の着物を着た、美しい女性の姿があった。
どこのかぐや姫かと一瞬思ったが、もちろん俺の姉である初月紫である。
その隣にはノエルさんの姿がある。
本来新婦の隣を歩くのは父親の役目だが、俺たちとしてはノエルさん以外に頼む気はなかった。
ノエルさんも快諾してくれたのだが、そのノエルさんの顔面はすでに涙と鼻水ですごいことになっている。
そして、さきねぇが俺の隣に立つ。
目が合うとニコッと笑ってくれた。
・・・不思議だ。それだけでさっきまでの緊張が嘘のように霧散していった。
「では皆様。精霊王様にお祈りをいたします。」
その言葉を受け、目を閉じる。
すると、走馬灯のように色々な出来事が思い浮かんだ。
子供のころだったりこの世界に来てからの事だったりと様々だが、どれも大切な思い出だ。
「・・・精霊王様へのお祈りを終わります。では、新郎。ヒイロ・ウイヅキ。」
「はい。」
「あなたはムラサキ・ウイヅキを妻として迎え、一生涯愛することを誓いますか?」
「・・・はい。誓います。」
神父さんがさきねぇに向き直る。
「では、新婦。ムラサキ・ウイヅキ。」
「はい。」
「あなたはヒイロ・ウイヅキを夫として迎え、一生涯愛することを誓いますか?」
「当然。」
さきねぇの『何当たり前の事言ってんだこいつ』みたいな発言に参列者たちから苦笑が起こる。
「・・・・・・では、指輪の交換を。」
俺とさきねぇは同時に向き直る。
交換に使うのは冒険者の指輪だ。
ちゃんとした指輪は後日用意するとして、結婚式で使う指輪はこれ以外に考えられなかった。
だって一回これで愛の誓いやってるしね!(第五十九姉参照)
「・・・・・・」
無言でさきねぇの左薬指に指輪をはめる。
うわー、緊張で自分の手がめっちゃぷるぷる震えてるのがわかる。
「・・・・・・」
次にさきねぇが俺の左薬指に指輪をはめる。
そこでちょっとびっくり。さきねぇの手もちょっと震えてる。
結婚式のさなかにも関わらず『さきねぇでも緊張することあるんだなー』なんて場違いなことを思ってしまう俺がいた。
「・・・では、永遠の愛を精霊王様の前で誓う、誓いのキスを。」
一歩前に進み、さきねぇの前に立つ。
すると。
「・・・健やかなるときも、病めるときも。」
にっこり笑うさきねぇ。
はは、あの時の再現か。いいね、やろうか!
でも、たまには反撃してやるぜ!
「喜びのときも、悲しみのときも。」
「富めるときも、貧しいときも。」
「晴れのときも、雨のときも。」
「死がふ「例え死が二人を分かつとも!」
俺の叫びにちょっとビックリしているさきねぇ。
「例え、死が二人を分かつとも。俺は、死んだとしても、生まれ変わってまたさきねぇを探し出してみせるよ。俺は、未来永劫、さきねぇのことが大好きだ。」
そして、俺はさきねぇにキスをした。
「まさかマジで結婚するとはな。おめでとう親友!」
「さんきゅー親友!」
「ヒイロさん、おめでとうっす!マジリスペクトっす!」
「たしかに姉と結婚した男ならリスペクトされても仕方ないな!」
「お師匠様、おめでとうございます!」
「クリスもわざわざ学校休んでまで来てもらって悪いな。」
「ヒイロくん、とりあえずおめでとうと言っておくよ。相手がムラサキなのがちょっとアレだけど。」
「はははは!ラムサスさんもありがとうございます。」
「まぁ、なんだ。おめでとうヒイロ。祝いの品は今度作って持っていってやる。」
「ありがとうございますアルゴスさん。楽しみにまってます!」
ヴォルフ・スレイ・クリス・ラムサス・アルゴスさんに囲まれてお祝いの言葉をいただく。
ちなみに誓いのキスをしてから30分と経っていないが、まだ教会内にいます。
というのも。
「オベデドウムラザギィィィィ!」
「ムラザギザンオメデドウゴザイマズゥゥゥゥ!」
「アンダラナギズギデジョォォォォ!」
あれからすぐノエルさんとマリーシアさんとさきねぇが大号泣していまだに泣き続けてるからだ。
カチュアさんやアメリアさん、レイリアさん達も最初は泣きそうなほど喜んでくれていたが、今はさすがに苦笑いで三人を見守っている。
しかし、さきねぇが号泣ってすげー珍しいから俺もちょっと感慨深い。
「おいムラサキ。いつまでも泣いてないで、ヒイロと二人で街の奴らにお披露目してこいよ。」
「ハッ!?ぼるきちナイスな提案ね!よーしヒロ!このまま街を練り歩くわよ!」
「おー!」
体当たりするように抱きついてきたさきねぇを一回転しながら受け止める。
そして腕を組んでバージンロードを進み、教会の扉をバンッ!と開いた。
すると。
ウワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
「「・・・は?」」
人。人。人。
決して広いとは言えない教会の庭には大勢の人でごった返していた。
それだけではない。
敷地の外にも大勢の人が溢れかえっている。
何百人いるんだコレ。千人超えてねーよな?
「驚いたかい?」
後ろからラムサスさんに話しかけられる。
「・・・ラムサスさん、これは一体?」
するとスレイがニコニコしながら答える。
「自分たちからのサプライズイベントっす!」
「さぷらいず?」
「そうですよ!」
今度はマリーシアさんが。
「アルゼンの冒険者たちでお二人をビックリさせるために陰でがんばったんですよ!あ、でも一応いっときますけど、これ強制じゃないですから。あくまで『時間がある人たちだけ余裕があったら来てください』としかお願いしてないんで!」
でも、あそこに串焼き屋のおっちゃんとか露天のおばちゃんとかもいるぞ。
明らかに仕事放棄してきてんだろこれ。
「ほら、何ぼさっと突っ立ってんだよお前ら。お前らのためにこんなに集まってくれたんだから挨拶くらいしろよ。」
ヴォルフの言葉で俺たち姉弟に再起動がかかる。
「それもそうね!よーし・・・みんなー!今日は来てくれてありがとぉー!!」
オォーーーーー!
「ほら、ヒロも!」
「お、おっし・・・みんなー!きょー!俺とさきねぇは結婚しましたぁーーーー!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
「今後ともヨロシクゥーーーーーー!」
オォーーーーーーーーー!
「よーし・・・今日は無礼講だぁー!飲食代は俺たちが全部出すから、そこらへんの店から好きなだけ飲み食いしやがれぇーーーーーー!!」
ウォォォォォォォォォォォ!
「ヒロ、ずいぶん大きくでたわね!」
「たまにはこんな日があってもいいんじゃない!?」
「それもそうね!」
そんな会話をしていると、周囲から『キース!キース!』という掛け声が。
「お、ヒロ、お客さんから要望がきてるわよ!?やっちゃう!?」
「・・・やっちゃおう!」
言うや否や、さきねぇを抱きしめてキスをする。
キャァーーーーーー!
ウオォーーーーーー!
ムラサキさぁーーーん!
ヒイロくぅーーーん!
会長ぉーーーー!
すごいな。声で地面が地震みたいにビリビリ震えてる。
しかし、会長って・・・あとでMFC総会開いてお話しないとな。
会員たちにボコボコに殴られるくらいは覚悟しよう。
そう思っているとカチュアさんがトコトコと近づいてきた。
「ムラサキさん、これ、どうぞ。」
「ちゅーべえ・・・」
カチュアさんから花束のブーケが手渡される。
周囲から今度は『ブーケ!ブーケ!』とブーケコールが巻き起こる。
ブーケトスってやつか。
「じゃあさきねぇ、思いっきりやっちゃえば?」
「そうね・・・よーし食らえー!必殺、ザトペック投法ー!」
全力でブーケを投げるさきねぇ。
上ではなく、横に。
そこにいるのは・・・
「・・・え、もしかしてわたぶべぇ!?」
ブーケはマリーシアさんの顔面にぶつかり、後ろにひっくり返るマリーシアさん。
その姿を見て、周りの人たちも大爆笑している。
なんだかんだ言って、さきねぇも街のみんなもマリーシアさんのこと大好きなんだよな。
「よーし、聞けぇお前らぁー!」
さきねぇが大声で叫ぶと、みんながさきねぇに注目する。
「ヒロは当然として!エルエルもマリすけもアルゴスのじっちゃんもカツラムサス支部長もスーもぼるきちもちゅーべえもクリボーもガルダじいもレイレイも!」
そこでいったん区切って息を吸う。
そして。
「そしてもちろん!あんたらも!この街も!この国も!この世界のありとあらゆるもの、ぜんぶぅー!」
さきねぇの手を握り、俺も一緒に叫ぶ。
「「大好きだぁーーーーー!!」」
空は、雲ひとつない晴天。
あたりを見渡せば、人々の笑顔と笑い声。
祝福を告げる教会の鐘の音は遠く、高く。
いつまでも、どこまでも街中に響き渡っていた。
あねおれ!~姉と弟の楽しい異世界生活~
(旧題 姉と弟と異世界と)
はっぴーえんど!
これにてなんちゃってファンタジー姉弟いちゃラブコメディ『あねおれ!』完結でごさいます。
今までご愛読ありがとうございました。
最後に。
ブクマしてくださった方、評価をしてくださった方、感想をくださった方、レビューをくださった方。
そして、この作品を読んでくださった全ての方に。
ありがとうございました。
ブラコン姉とシスコン弟は永久に不滅です!




