第百八十八姉「おーっと、ちょっと待ったコールがかかったー!」
完結まであと一日!ちょっと泣きそう!
また評価や評価の付け直しをしてくださった方が何名かいらっしゃったようで、まだ日間コメディランキングトップテンに残れてます。ありがたいことです。
さきほどまでのざわめきから、急に静かになる。
まるで、これから来る嵐を予言しているかのようだ。
「えー、それでは発表いたします。彼女にしたい子は誰だ!第一回アルゼン美少女コンテスト、栄えある優勝者は・・・!」
「優勝者は、エントリーナンバー・・・・・・・・・五番!カチュア・グラールさんでーす!!」
「・・・え?」
ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!
観客たちから絶叫と拍手が送られる。
状況が飲み込めず目をパチクリ、キョロキョロしているカチュアさん。
「ではカチュアさん、前へどうぞー!」
「え!? え!?」
司会の言葉に顔を真っ赤にしつつ前に出るカチュアさん。
「優勝おめでとうございます!まずは一言!」
「えっと、あの・・・何かの間違いではないでしょうか?」
「いやいや、間違いなくカチュアさんが一位ですよ!」
「あ、あぅ・・・あの、ありがとうございます・・・」
ワァァァァァァァァァ!
「マジかよ・・・さきねぇじゃないのかよ。たしかにカチュアさんもかわいいが・・・えー。」
「まぁドンマイだな親友。ムラサキも・・・まぁ悪くは無いがカチュアには、な。」
横を見ると一見冷静に事実を受け止めているように見えるヴォルフ。
でもしっぽの動き方が半端なく激しい。ぶぉんぶぉんいってる。
「入賞理由につきましては『冒険者の鏡』『淑女な冒険者って超貴重』『ぜひ孫の嫁に!』ということでした!
「ははははは!聞いたかヒイロ!やっぱ妹は最高だぜ!嫁になんてやらんけどな!お前でもだぞ!」
「いらんがな。」
「あ? 俺のカチュアを嫁にいらんだと~?」
「あ? だって俺姉一筋ですし~?」
これが世に言う第一次シスコン大戦の始まりであった。
嘘。
「えー、カチュアさんに寄せられたコメントを紹介いたします。こほん。『普通に嫁にほしい』『ささくれ立った冒険者の心を溶かす優しみが最高』『絶世の美少女というわけではないが、普通にかわいい。そしてそれがいい』『優しいし穏やかで礼儀正しい。アルゼン唯一の癒し系冒険者』と大絶賛でした!」
「そ、そんな・・・」
両手をほほに添えてイヤイヤしているカチュアさん。
何アレかわいいな。
「オラァー!どういうことだ責任者を呼べぇ!」
「ひぃ!」
絶対に自分が優勝すると思っていたさきねぇがフリーズから回復し、司会に詰め寄る。
さすがにやばいと思い、俺も関係者席から駆け寄る。
「なんでこの私がランク外なのよ!マリすけと一緒とかありえないでしょ!? てゆーか私だって癒し系だし!」
「確かにそうだけど、とりあえず理由を聞いてみよう。」
「あの、二人とも?それ、私に対するすごい悪口なのわかってます?そしてムラサキさんが癒し系だったことなんて我が冒険者ギルドでは今まで一度も確認されてませんからね?」
「・・・実はですね、ムラサキさんへのコメントは大半がほぼ同じ意見でですね。これはどうしようもないなっていうのがこちらの見解でですね・・・」
なんだろ。『ムラサキ女神!』とかかな。
「えーではここで惜しくもランク外になってしまったムラサキさんに寄せられたコメントを読み上げます!」
司会がカンペを取り出す。
俺もそれを覗き見る。
「えっとですね・・・『ムラサキさんの相手はヒイロさんしかいないっす!』『ムラサキ様の相手は百歩譲って会長しか認めません』『ヒイロくんラブ過ぎて付き合える可能性が砂粒ほども見つけられない』ということです!他のコメントもほぼ似たようなものです!」
「それは当然だけど、それとランク外となんか関係あるの?」
「この大会の趣旨は覚えてます?」
司会の目線を追うと、垂れ幕がかかっている。
そこには『彼女にしたい女の子は誰だ!第一回アルゼン美少女コンテスト!』と書かれている。
「つまり、絶対に彼女にならないから票が入らなかったんですよ。」
「あーあーあーあー、つまり私とヒロがアルゼンベストカップル賞だからってことね!?」
「そんな賞はありませんが・・・まぁそんな感じです。」
「じゃあじゃあじゃあじゃあしょうがないんじゃんじゃんじゃんじゃんじゃん!?」
さきねぇ、体全体を左右に動かす謎のダンスを踊りつつ満面の笑顔。
「えー他のコメントですと『すごい美少女だけど、四六時中一緒にいたら疲れそう』『金遣い荒らそう』『命がいくつあっても足りなさそう』とかもありますねー。」
「・・・・・・アルゼンベストカップル賞のムラサキ・ウイヅキでーす!いやっはー!」
都合の悪い情報はシャットアウト!さすがお姉さまや!
勝手に特別賞を捏造して手を振りつつ後ろに下がるさきねぇ。いい笑顔してますね。
「じゃあ私は!?私はなんでランク外なんですか!」
「え、聞く必要あります?」
「なんでこの街は私に対してこんなに冷たいの!?」
司会の心無い言葉に、壇上からマリーシアさんの絶叫が響く。
ちょっとかわいそうだな。
「さすがにそれはかわいそうでしょ。コメントくらい読み上げてあげてもいいんじゃないですか?」
「ヒ、ヒイロさん!やっぱりヒイロさんは私の唯一の味方なんですね!」
「いや、でも、しかし・・・これですよ?」
なぜか言葉を濁す司会さんがそっとマリーシアさん用のカンペを差し出す。
「えー、なになに・・・」
そこには『年齢にしてはかわいい』の文字が!
お、なんだよなんだよ。実はマリーシアさん人気あるんじゃん!
と思いつつ次の文言を読んで愕然とする。
『年齢にしてはかわいい。しかし、それでもババアはババア。美少女を見たくて来てるんだからひっこんでてほしい』
「ヒイロさん!なんて書いてあるんですか!?」
「・・・・・・」
次のコメントを見る。
『顔は悪くないが、貧乳とも巨乳ともいえずどっちつかずで反応に困る』
・・・次。
『いい人なんだけど、いつも酒場で酒をガブ飲みして酔っ払って客にからんだ挙句、外で吐いてる姿を見ているせいで恋愛対象として見れない』
・・・・・・次。
『個人的に悪くはないと思うが、作るメシがマズそうだからアウト。食べたことないけど』
辛いよ。コメントが辛いよ。
これをマリーシアさんに伝えるのか・・・?
「ヒイロさん!どんな感じですか!?」
「えっとですね・・・」
俺は魔法袋からそっと炎のナイフを取り出す。
そしてカンペを突き刺した。
ボワッ!
カンペは一瞬にして燃え広がり、残った燃えカスは風に舞って消えた。
「アーイッケネェ、マチガッテサシチャッター。」
「間違って刺しちゃったって何!? おかしくないですか!? なんて書いてあったんですか!?」
「まぁフィフティーフィフティーって感じでしたよ?」
「じゃあ見せてくれてもよくないですか!?」
これでいいんだ。
真実を知ることが幸せに繋がるわけじゃない。
「俺はマリーシアさんのことけっこう好きですよ!それでよくないですか!?」
「!? それでいいです!!」
ヒャッホー!と言いながら小躍りするマリーシアさん。
うわーさきねぇが無表情でめっちゃこっち見てるよー怖いよー。
いつでもマリーシアさんに≪聖杯水≫かけれるように準備しておかないと。
「あー、私はこういうことには全く興味はないんだが、一応なんでランク外なのか聞いておこうか。全く興味ないけど。」
あ、ノエルさんも来た。
なんか『全く興味ないけど』を連呼してるけど・・・
あんな態度だった割には結果に興味があるのか。乙女心はなんとやら。
「ノ、ノエル様のコメントは・・・ヒイロさんパス!」
「え、俺!?」
ノエルさん用と思われるカンペを俺に渡して俺の背に隠れる司会。
「えっとなになに~?」
『相手がS級冒険者じゃ釣り合わなさ過ぎる』
ですよねー。
『すごい美少女だと思うけど、さすがにあの見た目で付き合ったら衛兵に逮捕される』
OH、すげー正論。
『デート中、一言失言する度に燃やされそう』
あー、街中でナンパ野郎を燃やしたことあるしね。
『ノエル様ペロペロ!』
衛兵さん、こいつです!
「ヒ、ヒイロ!なんて書いてあるんだ!全く興味はないが!」
「えっと・・・要約すると『ノエルさんが偉大すぎて釣り合いが取れない』ってことらしいですね。」
「・・・なるほど。私が悪いわけではなく私の名声や能力が大きすぎるのが問題なのか。なら仕方ないな。」
ノエルさん満足げ。これでよかったんや。
そんな感じで敗者たちのコメントを読み上げていると、一人の若い冒険者が壇上に上がってきた。
なんだ?
「カ、カチュアさん!好きです!俺と付き合ってください!」
「・・・え?」
冒険者の突然の告白に、状況が全く飲み込めていないカチュアさんと一斉にざわめきだす観客たち。
すると。
「ちょっと待ったー!」
「おーっと、ちょっと待ったコールがかかったー!」
もう一人若い冒険者が壇上に駆け上がってくる。
そして司会から拡声魔道具を奪い、実況に移る俺。
「カチュアさん、俺も好きです!一目ぼれでした!俺と付き合ってください!」
「なんと二名の冒険者から告白がー!他のやつらは大丈夫かー!?」
「・・・お、俺もいく!」「・・・僕もです!」
「おっとー!さらに二名の冒険者だー!」
俺の言葉に触発された二名の冒険者が壇上に上ってくる。
そして。
「「「「好きです!付き合ってください!」」」」
「えっと、あの・・・」
計四名の冒険者が一斉に手を差し出し頭を下げる。
顔を真っ赤にしてオロオロしているカチュアさん。
今回の顔真っ赤係はカチュアさんかー。
経緯を見守っていると。
ビュゥゥゥ・・・ドガァァァァン!
風を切る音がすると、大きな剣が壇上に突き刺さっていた。
シーンとなる会場。
そして。
「カチュアがほしけりゃあ・・・」
関係者席からノッシノッシと近づく・・・
「俺を倒してからにしろぉーーーー!!」
そこには、一人の獣人、いや、兄の姿があった。
四人の冒険者はとまどっていたが、覚悟を決めた顔をしてヴォルフに突撃していった。
今、俺の目の前では大乱闘が繰り広げられている。
だが、さすが親友だ。一対四でもなんともないぜ!
「待ってください!!」
そこにカチュアさんの声が響く。
何を言うのか、会場にいる全ての人が固唾を呑んで見守っている。
「わ、私!に、に・・・兄さんが好きだからお付き合いできません!ごめんなさい!」
「「「「「!?」」」」」
キャーーーーーーーーーーーーーーー!
観客、大・興・奮!
ひざをつきorz姿になった四人の冒険者と、立ち尽くすヴォルフ。
「・・・ヴォルフ。カチュアさんに言うことが、あるだろ?」
「・・・!?」
俺の言葉にヴォルフがカチュアさんに近づく。
そして。
「・・・カチュア。俺も、お前が大好きだ!」
カチュアさんをぎゅっと抱きしめたのだった。
なんかすげーな。ゲームのルート最後の盛り上がりみたいだ。
もうちょっとしたらEDが流れてスタッフロールが始まるレベル。
こうして『彼女にしたい女の子は誰だ!第一回アルゼン美少女コンテスト!』は無事に終了した。
アルゼンの住人たちにとても好評だったらしくこれから毎年開かれることとなった。
そして、カチュアさんの影響でコンテスト終了後は有志による告白会場となるのが通例となり、アルゼン名物となるのだが。
それはまた、別の話。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
これにて異世界は癒し系を求めてた編の終了でございます。
大会の結果はカチュアさんのほどよいかわいらしさがアルゼンの男たちに「もしかしたら俺にもかけらほどのチャンスがあるのでは?」と錯覚させた結果でした。
ムラサキさんは「俺らじゃ手に負えねぇ……」って感じです(笑)
そして次回、いよいよ感動(?)の最終回!
一話のみだけどボリュームはいつもの二倍です!
よろしくお願いします!




