第百八十七姉「さっさと何か聞け。」
完結まであと二日!
なんかPV増えてるなーと思ったら久しぶりにコメディランキングトップテンに入ってました。
ポイント的に評価の付け直しをしてくれてる方がいるのかな?
ご支援ありがとうございます。最後までがんばるよ!
まぁもう書き終わってるんですけどね(笑)
「えー、素晴らしい宴会芸をありがとうございました。では次の方!エントリーナンバー五番!カチュア・グラールさんでーす!」
「ど、どうも。カチュア・グラールです。よ、よろしくお願いします・・・」
ワァァァァァァァァァァ!
お、けっこう声援が多いな。
さきねぇと違って隠れファンがいるのか。
「カチュアさんは今大会唯一の獣人の参加者ですが、どうしてエントリーされたんですか!」
「えっと、その、兄が、勝手に応募しちゃってたみたいで。恥ずかしいから辞退しようかと思ったんですけど、辞退したら迷惑がかかるかもしれないので・・・」
「なんと!お優しい言葉ありがとうございます!カチュアさんがいない美少女コンテストなんてロウソクのない誕生日ケーキのようなもの!大会運営に関わる一人として御参加ありがとうございます!」
「そ、そんな・・・!」
顔を赤くしてワタワタするカチュアさん。
横を見るとニヤニヤしているヴォルフの姿が。
「おいヴォルフ。締りのない顔してんぞ。妹の晴れ舞台なんだから引き締めろ。」
「わかってるよ。わかってるけどよ・・・!」
「あとヒイロさん、今のヴォルフの顔、ムラサキさんが出てた時のヒイロさんの顔にそっくりっす。」
スレイの言葉はスルー。
「えーではカチュアさんに質問です。趣味はなんですか?」
「趣味、ですか? 特には・・・強いてあげれば、家事、でしょうか?」
「おー!家事とはまた家庭的ですね!例えば?」
「んー、お料理をしたり、お掃除をしたり・・・兄さんにはいつも助けてもらってばかりなので、これくらいはしてあげたいなって。」
オォ・・・!
ここにきていきなり超正統派が登場してきたな。
エントリーナンバー一番と四番がひどかったから余計に素敵に見えてしまう。
「兄思いの素晴らしい妹さんですね!ではそろそろアピールタイムの開始です!どうぞー!」
「うーん・・・では、狼獣人族ではポピュラーな踊りを。」
そう言うと短剣を取り出しステップを踏み出すカチュアさん。
歌や音楽がないため、少しでも観客から声が出れば響いてしまうのだが・・・無音。
誰も声を発さない。
聞こえるのはカチュアさんのステップの音のみだった。
「・・・ふぅ。終わります。拙い踊りで申し訳ありませんでした。」
・・・・・・ワァァァァァァァァァァァァァァァ!
カチュアさんがペコリとお辞儀をすると、一拍遅れて大歓声が巻き起こる。
ぐぬぬぬ!強大なライバル出現!
ちくしょう、さきねぇだって歌も踊りもすごい上手いんだぞぅ!
奇を衒てらわずに正攻法でいけばさきねぇの完勝だったはずなのに!!
「いやー素晴らしかったですね!では最後の方!エントリーナンバー六、番・・・!?」
笑顔で語っていた司会の言葉が途中で止まる。
・・・あの人だな。
「六、六番・・・ノエル・エルメリア様です!」
ワ・・・・・・・・・
一瞬歓声が上がるも、すぐ途切れる。
現れたのは、白のゴスロリ服を着たノエルさん。
非常にかわいらしい。
非常にかわいらしい、のだが・・・その身からはクリスのものとは比べ物にならないほど強大な炎の魔力が吹き荒れていた。
さきねぇに無理やり出場させられたから機嫌が非常に悪くいらっしゃる。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
誰もが沈黙している。
「・・・・・・・・・おい。」
「はっ、はい!」
沈黙を破ったのはノエルさん本人だった。
司会の人も顔が真っ青になっている。
「さっさと何か聞け。」
「は、はい!なぜノエル様はこのような大会にエントリーしてくださったのでしょうか?」
「ムラサキが勝手に応募したからだ。絶対に許さん。」
・・・・・・・・・
『絶対に許さん』の時に魔力の熱風が会場に吹き荒れる。
さっきまでの盛り上がりから一転、お通夜状態になってしまった。
仕方ない。
「ノエルさーん!頑張ってくださーい!」
俺の声援を受けると、さきほどまでの魔力の波動がどんどん減少していった。
ふぅ。これで大丈夫だろう。
「・・・そ、そのー。休日は何をされて過ごされているのでしょうか?」
「ふむ、休日か。ムラサキに稽古をつけたりヒイロと一緒に料理をしたりしているな。ヒイロの料理は独特でな。168年生きている私でも初めて見る料理が多くて参考になる。」
「そ、そうですか!家庭的でいらっしゃるのですね!」
「家庭的?料理は冒険者にとって大事だぞ?食は冒険の生存率に直結するからな。最近の冒険者はそこらへんをまるでわかっていない!私が若い頃は~」
ああ、お義祖母ちゃんの『最近の若者は~』『私が若い頃は~』が始まってしまった。
司会の人が助けを求めるようにこっちを見ている。
「つまりだ。そういう時に大事なのは「エルエル話なが~い。」・・・あん?」
しかし、俺が助け舟を出す前にさきねぇが話の腰をパキッと折った。
「ほらほら、腰に来るからこっちに座ってお茶でも飲んで落ち着きなさいよ。」
「年寄り扱いするな!」
司会の人がこっちを見ているので、右腕を前に突き出し『今だ!いけ!』の合図を送ると、決心したかのようにコクッとうなづく。
「ノエル様ありがとうございましたー!皆さん、大きな拍手でお送りください!」
・・・ウ、ウォーーーーーーー!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
アピールタイムなしで終わらせやがった。
すごい力技に出たな。正解だけど。
ノエルさんは仏頂面でノシノシと出口へ歩いていった。
「これにて全出場者の紹介が終わりました!では今から三十分間、審査員の方々の審査を行います!今のうちにトイレにいきたい方はどうぞー!また、出場者の方へのコメントもお待ちしておりまーす!」
司会の言葉に一気に活気付く会場。
色んなところで誰が一番かを話し合っている。
ケンカにならないように注意しなければ。
それから三十分経ち、ついに運命の時間が訪れた。
壇上には六人の女性が立っている。
ある者は自信満々に、ある者は不安気に、またある者は飲みすぎて気持ち悪いような顔をしている。
「えーそれではまず三位の方から発表します!第三位は~・・・」
司会の言葉に観客たちも固唾を呑んで見守る。
「エントリーナンバー・・・二番!リムル・リクルさんでーす!」
「え!? 私!?」
ワァァァァァァァ!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
意外だな。まさか不人気属性てんこ盛りのリムルちゃんが入賞するとは。
「第三位おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます!嬉しいです!」
「入賞理由としては『若者の青春が感じられて良かった』『綺麗な歌声だった』『アルゼン愛を感じた』ということでした!では、今の心境を誰に話したいですか?」
「えっと・・・それは・・・スレイー!私三位になったよー!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
「あいつ、恥ずかしいことやってんなよ・・・」
「いいじゃん、彼女頑張ってたんだから。手くらい振ってやれ。」
俺の言葉に、恥ずかしそうにしてそっぽを向きつつも手を振るスレイ。
・・・こりゃひょっとしたらひょっとするかもしれんね!
「では次に第二位の発表です!第二位は・・・!」
さきねぇが一位として、カチュアさんあたりかな?
「第二位!エントリーナンバー・・・・・・・・・三番!クリス子さんです!」
ウォォォォォォォォォォォォォォ!
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
ク、クリスが二位!?
おいおい、審査員何考えてんだ。
あいつ男だぞ。多分。
「クリス子さん、二位おめでとうございます!」
「ありがとうございます!でも優勝を逃したのは悔しいです!」
悔しいんかい。
「入賞理由は『素晴らしい魔法だった』『わざわざ王都から来てくれてありがとう』『とてもかわいらしかった』とのことでした!今の心境を誰に話したいですか?」
「ボクの大切なお師匠様に嬉しさを伝えたいです!お師匠様ー!大好きでーす!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!
えー、とても感動的な師弟愛でしたが、ワタクシ、今一部の客からすごい目で睨まれてまーす。怖いでーす。
「・・・さて、それでは最後に、今大会優勝者の発表に移りたいと思います!」
さきほどまでのざわめきから、急に静かになる。
まるで、これから来る嵐を予言しているかのようだ。
「えー、それでは発表いたします。彼女にしたい子は誰だ!第一回アルゼン美少女コンテスト、栄えある優勝者は・・・!」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
優勝予想
◎ ムラサキさん
○ カチュアさん
△ ノエルさん
マリすけ




