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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第二十四章 遠方より○○来たる?恋の天気は晴れのち竜巻注意報!?編
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第百八十二姉「な~に~、お姉ちゃんが恋しくて会いに来ちゃったのかな~?」

 ヤンデレ怖すぎぃぃぃ!

 ヤンデレがかわいいのはゲームの中だけでした!




「行き止まり!?」

「マジかよ・・・」


 なんとか逃げ回ったが、ついに追い詰められてしまった。


「袋小路ですねぇ・・・!」

「きやがった・・・」


「大丈夫です、さっきはああ言いましたが、殺したりはしませんから・・・ただ、この魔剣でサクッと刺すだけですから・・・」

「絶対『サクッ』じゃすまないだろ!? 美味しいクッキーみたいな音でごまかすな!」

「ヒ、ヒイロさん・・・私、水虫になっちゃうんですか?」

「大丈夫です、マリーシアさんは俺が(水虫から)守ってみせます!キリッ!」

「ヒイロさん・・・!」

「茶番は・・・そこまでだぁぁぁぁぁ!」

「危ない!」

「「「え?」」」


 突然頭上から怒声が響く。

 上を見ると木材がいくつか落下しているところだった。

 しかも、落下予想地点はちょうどアウロラさんの立ってる場所。

 これは・・・!


「アウロラさん!上!」

「・・・え?」


 俺の声に上を見上げるアウロラさん。

 ちくしょう、間に合え!

 全力で駆け寄り、アウロラさんを抱きしめると結界魔法を創造した。


「≪玄武陣≫!」


 ガラガラガラガラ!


 木材が落下し何かにぶつかった激しい音が消えると、シーンと静まり返る。


「・・・成功したかな? アウロラさん、大丈夫?」


 成功してよかった。

 一応今俺が使える最高の防御結界だったけど、緊急時に咄嗟に創造できるかとなると話は別だったからな。


「え、私、なんで・・・? さっき、何かが落ちてきて、それで・・・」

「ヒイロさん!大丈夫ですか!?」


 マリーシアさんも駆け寄ってくる。


「なんとかみんな無事ですんだみたいです。いやー危なかった。」

「ほんとですよもう!危ないことはしないでください!」


 民家からおっさんが顔を真っ青にして近寄ってきた。


「大丈夫でしたか!本当になんと謝罪すればいいか・・・!」

「屋根の修理をするのはいいけど、ちゃんと安全確認はしてくださいね?」

「本当に申し訳ない・・・」


 何度も直角に頭を下げるおっちゃんを手で押しとどめる。


「もしかして、シスコンさんが私を助けてくださったんですか・・・?」

「そうですよ!? ちゃんとヒイロさんにお礼を言ってください!」

「・・・・・・なんでですか?」

「え?」


 アウロラさんがじっと俺を見つめる。


「なぜ助けたんですか? 私はさっきまであなたを害そうとしていたんですよ?」

「ん~・・・ただ、助けようと思った。それだけですよ。」


 それにクリスの婚約者に怪我でもさせたら、それこそ師匠として申し訳が立たないしね。


「アウロラさん。クリスを呼んでちゃんと話し合おう? 俺も同席するからさ。婚約者の話も今日初めて聞いたし、みんなで納得できる道を探そう。」

「・・・・・・いえ、いいんです。」

「「え?」」


 ハモる俺とマリーシアさん。

 いいって何が?


「親に決められた婚約者だからって私が勝手に固執してただけなんです。相手がどう思ってるかなんて考えようともしてませんでした・・・彼のことはあきらめます。」

「えぇ!? いやいやいやいや、ちょっと待って!一回クリス呼んで俺がガツンと言ってやるから!そこまで思いつめないで!」

「もういいんです。私、新たな恋に生きます!」

「「えぇ~・・・」」


 マイペースすぎるだろなんなのこの子。

 まぁ前向きになったようだからいいか。俺が魔剣で刺される心配もなくなったし。


「あ~・・・うん、頑張ってね。」

「はい!よろしくお願いいたしますヒイロお兄様!」

「「・・・ん?」」


 マリーシアさんと一緒に首をかしげる俺。

 今なんか聞き逃すことが出来ない言葉があった気がする。

 ・・・『ヒイロお兄様』?


「アウロラはヒイロお兄様をお慕い申しております!」

「ヒイロさん!なんでホイホイ変な女ばっかりひっかけるんですか!?」

「知らねぇよ!俺に言うな!」


 なぜか俺に文句を言うと、キッとアウロラさんをにらみつけるマリーシアさん。


「あなたもあなたです!愛人一号の座は渡しませんからね!」

「勝手に愛人を自称しないでくださーい。訴えますよー。」

「どうぞ。私は本妻を狙ってますので。」

「あのー話を聞いてくださーい。」


 友人Aと知人Bが俺を取り合って修羅場とかいみわかめ。

 俺、あなた方に恋愛感情ゼロですけどー。


「百歩譲って、私のほうが先にヒイロさんに目をつけたんですから私の言うことには絶対服従ですよ!?いいですね!?」

「あのーマジでいいかげんにしてくださーい。困りまーす。」

「・・・ならばグリーングリーン家の全力で排除します。」

「勝手に一家総出の総力戦にしようとしないでくださーい。」

「や、やれるもんならやってみやがれですよ!いついかなる時でも挑戦を受け付けますよ!」

「マリーシアさん、とりあえずその言葉は道端に落ちてる小石じゃなくてアウロラさんに向かって言おう?」


 いつのまにか下を向き、地面の小石に向かって叫んでるマリーシアさん。

 うん、この人、地位とか権力とかお金とかに弱いからね。仕方ないね。


「てゆーかマジでやめてそういう話。こういう時に限って絶対あのひとが「あ、ヒロじゃないやっほー!」ほらね!」


 タイミングよく女性冒険者の会を終えたらしいさきねぇと遭遇する。

 期待は裏切り予想は裏切らない!


「な~に~、お姉ちゃんが恋しくて会いに来ちゃったのかな~?」


 ぎゅっとハグされる。

 ああ、気持ちいい・・・

 こんな意味不明な修羅場でなければ最高だったのに・・・


「・・・誰ですかこの女。」

「・・・は? それは私のセリフなんですけど? しかもあんたから発情した泥棒猫の匂いがするんですけど?」


 アウロラさんの瞳から輝きが消えてる!

 対するさきねぇは『一歩でも動いたら消す』みたいな殺気を放ってる!

 この中にお医者様か場を収める能力に長けた方はいらっしゃいませんかー!


「ムラサキさん!この女、ヒイロさんにちょっかいかけてましたよ!無能で無用で無駄飯喰らいで有名な風魔法使いのくせに!やっちゃってください!」

「ほう・・・? 風魔法使いとな?」


 さきねぇの後ろに隠れるようにして告げ口するマリーシアさん。

 マリーシア・・・お前・・・


「ヒイロお兄様が褒めてくださった風魔法をバカになんてさせない!」

「・・・≪神風≫ぇ!」


 さきねぇが指をクンッとさせると、ビュオオオ!となかなかの音を立てて小規模な竜巻が巻き起こる。

 マリーシアさんを中心として。


「マ、マリーシアさーん!」

「ヒ  さ  !たす   さ  !」


 竜巻の中から、途切れ途切れにマリーシアさんの声が聞こえてくる。

 生きてはいるようだ。よかった。

 さきねぇが指をパチン!と弾くと竜巻が消滅する。

 そこには真っ青な顔をしてピグモンみたいな格好で立っている、髪がボサボサのマリーシアさんの姿が!


「な、なんで私がこんな目に・・・」バタッ

「私の目の前で風魔法をバカにした罰よ。」


 前から倒れるマリーシアさん。

 とりあえず≪聖杯水≫をぶっかけておこう。


「あ、あなたも風魔法使いなのですか・・・? しかも、なんて強力な風・・・」

「ふっ、『アルゼンの黒い疾風』といえばこの私よ!」

「す、素敵・・・!」


 目がキラキラしだしたアウロラさん。


「あ、あの!お名前をお聞きしても!?」

「私?ムラサキよ。アルゼンナンバーワンポイントガードとしても有名よ!」

「名前も素敵・・・! ムラサキお姉様!」


 自称の異名がどんどん増えていくなーしかし。

 そしてアウロラさんの言葉にゲンナリした顔を俺に向けるさきねぇ。


「・・・あー、そっち系かこいつ。」

「さっきまではそういうわけでもなかったんだけど・・・」

「ああ、ヒイロお兄様とムラサキお姉様が仲睦まじくお話してる・・・!なんて素敵な光景なのかしら!ブハッ!」


 ハァハァ言いながら鼻血を噴出すアウロラさん。


「・・・ねぇヒロ。お姉ちゃん、久しぶりに『恐怖』って感情を思い出したわ。」

「そりゃよかった。恐怖を感じる心って大事だからね。」

「で、こいつなんなの?」

「実は・・・」


 ~事情説明中~


「へ~、クリボーの婚約者ねぇ。」

「(クリボー?)でも婚約解消されちゃいましたから!クリスさんは正直今でも好きですけど、今はお兄様とお姉様一筋です!」

「「キモい。」」

「ああ、イケズなお返事!」


 うっとりした顔で話すアウロラさん。怖い。


「つまり、ヒロがクリボーの婚約者を寝取ったってこと?」

「さきねぇ、間違えちゃいけないよ? 正確には『俺たち姉弟が』だからね? 俺一人の責任にしないでね?」

「わかってるってば。」

「とりあえずクリスに手紙出さなきゃまずいな。誤解を解かないと!」

「・・・誤解?」


 チラッと後ろを見るさきねぇ。

 そこには目を輝かせているアウロラさんが。


「・・・ええ、もちろん誤解ですよ?」

「・・・なんて書くの?」

「それは・・・」


 ほわんほわんほわんほわん(考え中)


『君の婚約者が俺 (とさきねぇ)のこと好きになっちゃったんだって!でも俺には全然その気ないから!君の婚約者が勝手に俺 (とさきねぇ)に熱をあげてるだけだから!俺 (とさきねぇ)関係ないから!』


 ほわんほわんほわんほわん(考え終了)


「いや、それはダメだろう・・・」

「う~ん、その文面だけ見るとすげー嫌なやつねー。」

「うん、もう『なんで俺の頭の中の言葉がわかるの?』なんて聞かない。」

「まぁとりあえずやることは一つね。」

「そうだね。」


 二人で頷きあう。


「「帰ってもらおう。」」


 その後、ストーカーでヤンデレな上、両刀使いであることまで発覚したアウロラさんは『お兄様とお姉様のいうことならなんでも聞きます!』ということらしく、笑顔で(鼻血を何度も垂らしながら)帰っていった。

 家に帰ってから俺は頭を抱えながらも、なんとか事の経緯を説明する文面を書き上げ、クリスへと送ったのだった。


 そして後日。

 クリスから返信の手紙がきた。

 そこには『正直な話、今まで彼女には全く興味がなかったのだが、お師匠様と姉君という共通の話題ができて話すのが楽しい。今では一緒に食事をしながらお師匠様や姉君の話をするようになった。今度二人で会いにいく』という内容だった。

 胃潰瘍寸前になるまで悩みながらクリスに手紙を書いた俺が、クリスからの手紙をクシャクシャに丸めて全力で壁にぶん投げたのは言うまでもない。

 もう結婚しちゃえよお前ら・・・お似合いだよ・・・


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


これにてまた変態が増えた!編の終了です。

アウロラさんはチョロイン→ヤンデレ(凶)→ヤンデレチョロインでした。

そして知らないうちに大陸魔法四聖の火と風を支配下に置いたヒロくん。

S級冒険者が身元保証人だしトポリス王国の王女とも知り合いだしで何気にすごい友好範囲です。


次は番外編で、珍しくムラサキさんピン話です。

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