第百六十五姉「いい歳こいたババアが何言ってんだ歳考えろきめぇな。」
感想がいっぱいきて嬉しい。ありがとー!
「あのー、ノエルさん。この変態金髪女と知り合いなんですか?」
「ああ、紹介しよう。こいつはレイリア・エクスペリア。生魔大戦時の同期で元S級冒険者だ。」
「どもー♪」
「「・・・うえぇぇぇ!」」
ノエルさんの発言に驚愕のハモリを見せる俺たちなのだった。
「改めましてこんにちわ、レイリア・エクスペリアです。よろしくね?」
「よろしくねレイレイ!」「・・・よろしくお願いします。」
騒動も収まり、いつもの定食屋で飯を食う。
そしてなぜか仲良くなったさきねぇと変態金髪女改めレイリアさん。
近しい何かがあるんだろうな・・・
「しかし、珍しいなお前がこんな辺境にくるなんて。」
「だって隠居してたノエルが弟子をとったなんて聞いたら来なきゃまずいでしょ?」
「いや、別にこなくていいが・・・」
「もう、ノエルったら意地っ張り♪かーわーいーいー!」
「ウザい。」
美女と美少女が戯れている。
何も知らなければ目の保養だが、どっちも大戦時から生きてるから100歳オーバーなんだよね・・・
でも耳も長くないし、どう見てもレイリアさんは人間っぽいんだよな。
「ノエルさん、レイリアさんは人間なんですか?それにしては若作りな気が。」
「いや、レイリアは獣族、らしいんだが・・・実際は何族なのか知らん。」
「ウフフ、ヒ・ミ・ツ!」
「いい歳こいたババアが何言ってんだ歳考えろきめぇな。」
「きゃー!その罵倒美味しくいただきましたー!」
「・・・お前たちに一体何があったんだ?」
ノエルさんがビックリしてる。
「ノエル、私ヒイロクンのおかげで気付いちゃったの。年下の男の子に蔑まれながら罵倒されるの、気持ちいいって!」
「・・・お前がどんな性癖に目覚めようがいっこうに構わないが、私とヒイロに関わるな。」
「エルエル、私は?」
「ムラサキなら問題ないだろう。お前ら似てるし。」
「「いぇー!」」
肩を組んで踊り出すさきねぇとレイリアさん。
周囲は『なんて美しい踊りなんだ・・・』とかいってるけど、落ち着いて見てみろ。
単に変態が二人いるだけだぞ。
「なるほど、ノエルさんがさきねぇに引かなかった理由は同じ属性を持つものと知り合いだったからなんですね。」
「まぁそんなところだな。そういえばムラサキとレイリアは属性も同じだな。」
「もしかして風と火の二重属性って呪われてるんじゃないですか。」
「否定はできんな。」
「「いや、否定しろよ。」」
仲良くなったさきねぇとレイリアさんから抗議の声が上がる。
否定材料がどこにもないよー。
「レイレイも火風の二重属性なのね。私とかぶるとかやるじゃん。」
「まぁ私は魔法力Aの魔法量Sだけどね。」
「へー、そこも私と同じね!」
「「ダウトぉ!」」
なぜ笑いながら平気でホラを吹くのか。
姉が来たりてホラを吹く。
「そういやレイレイ、S級だったら二つ名持ってんでしょ?なんてーの?」
「私?私はすっごいわよー。『嵐空女王』よ!どうよ、すごいでしょー?」
「・・・なんかもっと卑猥な感じかと思ったら案外普通ね。ツマンネ。」
「こ、この小娘・・・」
仲良くなったと思ったら険悪になったでござる。
「この二つ名はノエルとの友情の証なんですー。だからいいんですー。」
「と被疑者は話しておりますが。」
「あーあの時の戦いでついた名だったか。懐かしいな。」
「二人でブイブイ言わせたものねー?」
ブイブイって・・・発言に年を感じるな。
「どんな戦いだったんです?」
「私がノエルを抱っこしたまま翼を広げて風魔法で空飛んでねー。」
「上空から私が≪火球≫を乱射だ。」
「オークの群れも『ブイー!ブイー!』とか叫びながら焼肉になってたわね!」
「「わっはっはっは!」」
ほんとに(オークに)ブイブイ言わせてたよ・・・
「あ、そういやムーちゃん、この街に爆笑必死の面白人間いるの知ってる?」
「ほう、アルゼンの主とも言われる私も聞いたことがないわね。誰誰!」
「今ここのギルドで支部長やってるラムサスちゃんってのがいて、これまた面白いのよ!」
・・・ラムサスちゃんって、ラムサスさんのこと?
「もしかしてカツラムサスのこと?」
「え、今そんな風に呼ばれてんの!?ウケルー!さすがラムサスちゃんね!自称天才剣士なだけあるわ!」
「え、ちょっとちょっと、何それ詳しく!」
「ラムサスちゃん、私たちに初めて会ったときに『俺はラムサス・クラブ!A級冒険者の天才剣士だ!そして、お前を倒す人間だ!』とか言ってたのよ。」
「あははははは!何それやばい!小物臭がすげぇ!」
ラムサスさんトークで盛り上がる二人。
自称美少女の二人が自称天才剣士を爆笑。
うーん、この理不尽感。
「ノエルさん、真偽のほどは?」
「確かそんなこと言ってケンカ売ってきた気がするな。どうでもよすぎてあんまり覚えてないが。」
ノエルさん、COOL!
「でもノエルも昔はすごかったのよー?」
「ちょ、レイリア!黙れ!」「なになに、ちょう聞きたい!」
俺も聞きたいので無言の応援。
「私と初めて会ったときの第一声なんてやばかったわよ。『見てんじゃねーよ殺すぞ』だったからね!」
「・・・ノエルさんが、ですか?」「うわーただのDQNなヤンキーじゃなーい。」「こわーい!」
「て、適当なこと言うな!そんなこと言ってない!・・・はずだ。」
とはいいつつ、下を向き『え、言ってない、よな?多分言ってない、はず。・・・アレ?』とぶつぶつ言っているノエルさん。
「ノエルさんも昔はヤンチャだったんですね。」
「ち、違うぞヒイロ!あいつは適当に私の言葉を婉曲して伝えている!」
「えーそんな感じだったわよー。」
「待てよ・・・いいか、ちょっと待てよ・・・・・・思い出した!『ガンつけてんじゃねーよブチ殺すぞ』だったはずだ!」
「「もっとひどいじゃねーか!」」
はっ!つい勢いで突っ込んでしまった!
レイリアさんはノエルさんを指差して爆笑している。
ノエルさんは顔真っ赤プルプルだ。
「いっつもいっつも私をいじりおって!忙しいんだろ!?さっさと帰れ!」
「はいはい、わかりましたよ。帰る、帰りますよ。」
そう言うと立ち上がり身支度をするレイリアさん。
「まだいてもいいですよレイリアさん。ノエルさんも恥ずかしくて言い出しただけですから。」
「あら、ヒイロクン優しい。お姉さん惚れちゃいそう♪」
「「「今すぐ帰れ。」」」
「うふふふふ!・・・まぁ忙しいのも本当なのよ。お仕事めんどくさーい。なのでここの支払いはノエルにお任せ!」
「なぜ私がお前の分まで払わなくてはならんのだ・・・」
とか言いながらも会計をしに席を離れるノエルさん。
すると、レイリアさんが俺たちに近づき、周りに聞こえないような小さな声で話しかけてきた。
「二人とも、ノエルをよろしくね。」
「よろしくというか、よろしくされているというか。」「おう、まかせんしゃい!」
「すごく心配だったんだけど、今の様子を見る限り大丈夫そうだし。ありがとうね。」
「どういうことです?」
「・・・私が去年会ったときのノエルはひどかったのよ。死んだ魚みたいなどんよりした目をしてて。」
「エルエルは最初から顔真っ赤にしたり年相応にプルプル震えたりしてたけど、そんな目はしてなかったけどね?」
「きっとあなたたちのおかげなんでしょうね。アルゼンに隠居するって聞いたときは、ひょっとしたら森の中で一人で朽ちていくのかと不安になったものよ。」
「あのノエルさんが、ですか・・・」
今の様子を見る感じ、そんな様子は全くないが・・・
「私も調停者なんてめんどくさい職についてるからちょくちょくノエルに会うこともできなくてね。困ったものだわ。」
「あ、無職じゃなかったんですね。」
「もっと蔑んだ目で言ってほしかったわそのセリフ。」
「黙れ。」
「ごちそういただきましたー!」
くっ、変態というのはどうしてこう御しがたいのか・・・
「まぁ頼まれなくてもエルエルの介護は私たちでするから心配しないでいいわよ。」
「ふふ、ノエルを老人扱いなんてあなたたちくらいしかできないわよ。でも、だからこそいいんでしょうね。じゃあ、ノエルをお願いね!」
ばっはは~い!なんて言って手を振りながら去るレイリアさん。
「・・・ノエル!ちゃんとその子たちの面倒見てあげるのよ!じゃあね!」
「言われなくても!・・・またな。」
レイリアさんが定食屋から出て行くのを確認すると、ノエルさんが席に戻ってくる。
「なんかさっき、あいつがこそこそ話していただろう。何の話だ?また私の過去話か?」
「違うわよ、エルエルはもうおばあちゃんだからボケたら介護してあげてねって言われたわ。」
「あいつ次会ったらブッ殺す・・・あいつは昔からそうなんだ。聞いてくれ二人とも!あいつは~・・・」
それからレイリアさんの奇人っぷりを聞いて爆笑するさきねぇとドン引きする俺がいるのだが。
なんだかんだ文句を言いつつも楽しそうに親友の話をするノエルさんなのだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
この世界の半分は優しさで、残りの半分は変態で出来ています。
ヒロくんはスキル『年上殺し』と『状態異常・魅了無効(姉を除く)』という(実用的かはさておき)かなり希少なスキル持ちなので、元S級冒険者レイリアさんの唯一の天敵と言っても過言ではありません。
まぁだから好かれちゃったんですけどね。
次回はいつもどおり番外編です。
 




