第百五十六姉「物理技の遠距離攻撃があってもいいんじゃないかって、お姉ちゃん思ったの。」
感想を4件と、久しぶりに評価をいただきました。ありがとうございます。
今後もあねおれをよろしくお願いいたします。ぺこり。
そんな姉弟ネーミング会議の傍らで。
「た、他人の魔法に魔法を混ぜる?しかも、私の≪火炎王蛇≫クラスの魔法に?ありえるのかそんなの・・・」
ノエルさんは一人頭を抱えていた。
「どったのエルエル。」「どうしたんですかノエルさん。」
「いや、もういいや。悩んでも答えでないし。そういうものだと納得しておく。」
なぜか悟りを開いたようなすまし顔で答えるノエルさん。
「おーい、ヒイロー!無事かー?」
「ヴォールフー!お前、心の友と書いて心友の俺を見捨てて、に~げ~た~な~・・・」
「いや、俺じゃどうしようもなかっただろアレは。だからこっちを優先しといたぞ、お師匠様。」
ヴォルフが指差す方を見ると、お腹がぽっこり膨れたクリスが横たわっていた。
弟子を助けにいってくれてたのか。さすが心友!
「クリスくん、気をしっかり持つっす!傷は浅いっす!」
全裸のスレイがクリスのお腹を押すと、クリスの口から噴水のようにピューっと水が飛び出す。
すげーシュールだな。
「はっ!そんなことを考えている場合じゃない!大丈夫かクリスー!」
「・・・はっ!?ここは!?」
余裕で無事でした。さすが勇者体質。
「・・・・・・」
さきねぇがじっと焼けたエロタッコンヌを見つめている。
まさか。
「・・・匂いは良い感じね。」
「ちょっと待ってちょっと待ってお姉さん。絶対やめたほうがいいって。おっきいから大味だって。」
「でもせっかくだから一口くらい食べてみてもバチは当たらないんじゃないかしら?」
「バチは当たらなくても違うものがお腹に当たっちゃうから!」
指を咥えてじぃ~っと熱い視線を送るさきねぇ。
はぁ・・・仕方ない。
「あいつ、ヤローどもの汗くさい皮鎧とかをモグモグしてたんだよ?やつを食べるってことはそれを口に含むってことに・・・」
「ムラサキ流奥義!≪室伏大車輪≫!」
魔法袋の中からミカエルくんを取り出したさきねぇがグルグルと回転したかと思ったら、何を思ったかミカエルくんを放り投げた!
「ダァーーー!」
ヒュー、グシャァ!
すごい勢いでミカエルくんがエロタッコンヌに突き刺さった。
「からの~、連撃!」
ミカエルくんが突き刺さったエロタッコンヌの丸焼きに向かい、ノブナガさまを両手で持ちながら走り出すさきねぇ。
その勢いのままトンットンットンッと空中を駆け上がり、ノブナガさまを上段に構える!
エアーウォーク!?どんな冗談!?
ちなみに今のは『上段』と『ジョーダン』と『冗談』をかけています。フフ!俺天才かも!
「必殺!ムラサキ流奥義、≪風車≫!」
ノブナガさまを上段に構えたまま空高く舞い上がったさきねぇが、クルクル回りながら一気に振り下ろす!
ドガァァァァァァァァァン!!
「我が一撃に、断てぬものなし!」
口でテレレレーテッテーテッテテー!といいながらノブナガさまをくるっと回すと肩にかつぐさきねぇ。
目の前には真っ二つになったタッコンヌの丸焼き。
家くらいの大きさあんだぞこのタコ・・・どんだけ攻撃力高いのこの人。
「さきねぇがすごいのは昔からわかってる。でも大回転ロケットハンマーはやめてくれ。怖いから。」
「物理技の遠距離攻撃があってもいいんじゃないかって、お姉ちゃん思ったの。」
「絶対命中率低いでしょアレ・・・ミスったらどこに飛んでくかわからないからやめれ。」
そんなアホな会話をしているとエロタッコンヌがキラキラと輝いて消えていく。
魔石に当たったみたいやな。
「あ、あとヒロ。さっきなんかテレパシーが伝わったんだけど『俺、天才かも!?』みたいに考えなかった?」
「・・・私が町長です。」
「名言で逃げたわね!」
「・・・・・・お前たちは何をしてるんだ。」
全裸の冒険者数名にバスタオルを渡していたノエルさんが戻ってきていた。
「さっきの巨大タッコンヌがタッコンヌたちの大量発生に関わっていたようだ。一気に姿を消した。」
「お、じゃあこれで魔物退治はおしまい?」
「ああ。ほうっておけばまた集まってくるだろうが、それまでにはここを管理している貴族が結界を張るだろう。」
「よっしゃぁーーー!さっそく海へ入るわよ、ヒロ!」
「待って待って。俺お腹ぺこりんちょです。ハラヘリーノ男爵です。」
「む。確かに古来から『古池や、腹が減っては戦はできぬ、法隆寺』というものね。ご飯食べてからにしましょか!」
「せやな。」
さきねぇが『つっこみ待ちです!』といったドヤ顔で俺を見ているが、あえてキラースルー。
「じゃあキャンプ地に戻ってご飯の準備にしま「まりすけのおバカ!」いきなりバカ扱い!?」
マリーシアさんの言葉に衝撃を受けているさきねぇと、さきねぇの言葉に衝撃を受けているマリーシアさん。
衝撃のキャッチアンドリリースとか、なんだかんだいって仲良しですね。
「ソラ、シロイ!ウミ、アオイ!ハレ、テンキ!ココ、アツイ!デモ、ココデタベル!ウマイ!」
「なんでカタコトなんですか・・・」
顔からして『あちぃしめんどくせぇ・・・』と語っている冒険者たち。
しかし、さきねぇの言いたいこともやりたいこともわかってる俺としてはさきねぇの応援せざるを得ない。
「ヒロ、準備をお願いティーチャー!」
「禁則事項です!」
さきねぇの言葉に敬礼した俺は、すぐに木陰にいって魔法袋からブロックレンガを何個も取り出す。
これを積んで・・・と。
さらに大きな鉄板を取り出す。
これを積んだレンガの上に置けば・・・!
「さぁさぁ海の家『ウイヅキ』の開店よー!ヒロ、具材かもーん!エルエルは火力担当ね!」
「おーぃえー!」「わ、わたしもやるのか?仕方ないな全く・・・」
仕方ないといいつつニヤニヤが抑えられてないノエルさんだった。
ノエルさんの火魔法ですぐに鉄板が熱くなる。
「クリース!スレーイ!とりあえず両手広げたくらい大きい葉っぱ取ってきてー!あと小枝ー!綺麗に洗ってお皿と箸にします!」
「了解ですお師匠様!」「うっす!」
二人が林のほうに駆けていく。
たしか林道のほうにあったはずだから、これでお皿は確保、と。
俺は捕獲したタッコンヌの足をスライスしてー・・・
「よーし、まず油を引いてー、それから麺を投入ー!」
ジュゥゥゥ!
うむ、良い音が響きますね。さすがアルゴスさん製の大型鉄板。いい仕事してますね!
さきねぇが鉄ヘラを両手にシャキーン!と構える。
「これをかき混ぜてかき混ぜてー、豚さん投入ー!」
「あいよー!」
さきねぇの掛け声でオークのバラ肉を投入する。
「ふーんふーんふふっふーふーふんふんふんふふふんふーん♪」
さきねぇはテーマソングを口ずさむほど機嫌が良い。
慣れた手際で麺とオーク肉をからめ焼いていく。
「次はタコさーん!」
「タッコンヌ入りマース!」
タッコンヌの足をスライスしたものを鉄板に投入。
さらに炒める。
「ソース!」
「そーす!」
ジュワァァァァァァァァ!
市場で買い漁ったよくわからない調味料の中から、それっぽいものを混ぜてできた特製ソースを焼いている麺にぶっかけると、あたりに美味しそうな香りが立ち込める。
さっきまで暑さでげっそりしていた冒険者たちも、今や涎を口から垂れ流しそうな勢いで目を輝かせている。
「っしゃー!ウイヅキ名物お姉ちゃん特製ブタコ焼きそばやー!」
「「「「「おおー!」」」」」
冒険者たちから驚きの声があがる。
「「取ってきましたー!」」
「さんきゅー二人とも!」
二人が取ってきたでかい葉っぱを俺の≪水球≫で洗う。
「よーし、頑張ったご褒美に二人から先に食べれる権利をあげよーう!」
「「え。」」
嫌そうな顔をするクリスとスレイ。
なんじゃこらボケ。
「何その顔。嫌なの?」
「嫌、ではないんですが・・・」
「それ、ムラサキさんが作ったやつっすよね・・・?」
あ、こいつらさきねぇが料理上手なこと知らないんだっけか。
まぁ家族以外の人間に手料理を振舞うこと自体稀だし、いつもの行動を見てればそれもしゃーなしか。
「いいから食ってみろって。騙されたと思って!」
「「・・・はい。」」
洗った葉っぱの上に焼きそばを盛り、小枝で作った箸を渡す。
ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。そんなにか。
「・・・いただきます!」「精霊王様、ご加護を・・・!」
恐る恐るやきそばを口に入れる二人。
冒険者たちも毒見係の決死の覚悟を見守る。
すると。
「「・・・うっ!?」」
「「「「「!?」」」」」
目を見開き、時間が止まったかのように固まる二人。
ふふふふ。
「ふふ、やっぱりムラサキさんも料理下手なん「「美味い!!」」・・・だと?」
お仲間発見たま○っち!みたいな顔をしていたマリーシアさんが信じられないものを見る目でさきねぇを見る。
どんな顔をしていたのかはご想像にお任せします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
えー、なぜかまだ19章が終わりません。
というより、焼きそば作って終わりました。なんだこの回。
自分でもどうしてこうなってるのかさっぱりです。HAHAHAHA!




