第百五十五姉「だったらそもそもコントロールしなければいいじゃない！」
「殺ろうぜヒイロ・・・アイツ、ぶっ殺そうぜ・・・！」
「わかってくれたか親友よ・・・！」
「お師匠様がそう言われるのであれば、ボクも喜んで修羅となりましょう！」
体中から殺気を迸らせる俺とヴォルフと、よくわからないながらも気合を充実させるクリス。
こうして、男たちの命と誇りと魂を賭けた聖戦が開戦されるのだった。
「みんな、聞いてくれー！あいつは～」
他の冒険者たちにも同じ内容を話す。
俺たちと同じように熱い魂を燃やす、かと思われたが。
「つまり、アレほっといたらムラサキさんとかカチュアさんの裸が見られる可能性が・・・？」「ノエル様のちっぱいが・・・？」「あれ、あいつ、もしかして精霊王様の使いなんじゃね？」
下心全開でやる気ゼロのクソ冒険者ども。
ほんとに使えねーなこいつら・・・！
「お師匠様！こんな腑抜けたやつらなどあてにする必要はありません！このボク、クリス・ウル・クリフレッドがあの巨大タッコンヌを倒してみせます！」
「あ、おい！クリス！」
俺の制止を振り切り、一人エロタッコンヌに突撃するクリス。
どうなるか簡単に予想できるんだけど・・・
「食らえタッコンヌ！必殺魔法、フレ」
ビタァーーーン！
＜ウワー
エロタッコンヌの触手パンチを喰らい、海へ吹っ飛ぶクリス。
やっぱりね・・・なんであんなにイケメンで天才魔法使いなのに、かませ犬っぷりがとてつもなく似合うんだろうか。
あとで助けるとして、今はこいつらの説得が先だ。
「みんな、力を貸してくれ！今こそアルゼン魂を見せる時だ！」
「「「「「・・・・・・」」」」」だる～ん
「ヒイロ、こんな雑魚どもほっといていくぞ。俺はヤツを殺したくて仕方ねぇ・・・！」
しかし、エロタッコンヌ以外にも普通のタッコンヌもまだ存在する。露払いは必要です。
しゃーなし、奥の手を使うか。
「あー残念だなーここで活躍してくれた人に、五名限定で飲み会という名の合コンに誘おうと思ってたんだけどなー。あーほんと残念だわー・・・チラッ。」
「ヒイロ、お前、俺たちがそんなもんで動くとでも思ってんのかよ！」「そうですよヒイロさん！バカにしないでください！」「そう、俺たちを動かせるのはただ一つ！」
「「「「「アルゼン魂だ！！」」」」」
武器を構え、闘志を燃やしながらタッコンヌたちに向かって突撃する冒険者たち。
ふっ、踊れ踊れ冒険者たちよ。俺の手のひらの上で踊り続けるがいい！
襲い来るタッコンヌたちをかいくぐり、スレイがエロタッコンヌに肉薄する。
「喰らえ、エロタコ！スレイ・スラーッシュ！」
「イカァァァ！」
スレイの上段斬りがエロタコの触手にめり込む。やるなスレイ！
つーかなんであいつ叫び声が『イカァァァ！』なんだよ。俺今すごいビックリしちゃったよ。
「イカァァァァァ！」
「！？ うわぁーーー！」
あ、スレイが触手に絡めとられた！
エロタコは女性しか狙わないはず！？どういうことだ！？
「ヒ、ヒイロさーん！どういうことですかー！？」
「わからーん！わからんが今助けるぞスレーイ！」
俺が駆け出そうとしたその時！
「ぎゃぁぁぁぁぁ！」
「ス、スレーイ！」
なんということだ！
スレイのハードレザー装備が剥ぎ取られ、素っ裸にされてしまった！
そして、そのハードレザー装備を・・・エロタコ選手、口に含んだぁぁぁぁぁ！
すごい恍惚とした顔！すごい気持ち悪い！
キモいじゃない、リアルに気持ち悪い！
素っ裸になったスレイが砂浜に捨てられる。
「・・・ヒイロ、聞いた話とずいぶん違うんだが。」
「すまんヴォルフ、俺は勘違いしていたようだ。やつはエロタッコンヌはエロタッコンヌでも、エロタッコンヌ（♀）！」
「・・・つまり？」
「狙いは男性ですね。」
「「「「「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ！！」」」」」
タッコンヌを掃討し、巨大エロタッコンヌに突撃をかけようとしていた冒険者たちが俺の言葉に180度ターンを決める。
しかし。
「ぎゃぁー！捕まったぁ！」「助けてー！」「離せこの変態魔物！」
「イカカカカ！」
あっさり触手に捕まり、装備を剥ぎ取られていく冒険者たち。
エロタッコンヌにも好みがあるようで、美味しそうにもぐもぐするものもあれば、口にいれた瞬間に吐き出すものもある。
味覚あんのかよ。
「みんな、すまん……この犠牲は無駄にはせんぞ！」
「ヒィィィロォォォ！お前も道連れだぁぁぁ！」
「ばっかこっちくんじゃねーよラウルてめーふざけんなよ！」
正直、『ふざけんなよ！』は冒険者たちのセリフなのだが、不可抗力なのだ。許してほしい。
ラウルがエロタッコンヌを引き連れて俺の方に向かってくる。
そして向こうでは裸にされ砂浜に打ち捨てられた冒険者たちが亡者のようにゆらりと立ち上がる。
「ヒイロさぁぁぁん・・・」「お前もこっちにこいよぉぉぉ・・・」「仲間になろうぜぇぇぇ・・・」「裸は気持ち良いぞぉぉぉ・・・」
「嫌だー！俺が悪かったから可及的速やかに成仏してくれー！」
俺も必死に猛ダッシュするが、下が砂浜なのでどうしても動きが遅くなる。
徐々にエロタッコンヌとの距離が縮まっていく！
「・・・助けてさきねぇぇぇぇぇ！！ノエルさぁぁぁぁぁん！！犯されるぅぅぅぅぅ！！」
・・・ドドドドドドドド！
前方の林の間から爆音と砂ぼこりが！
あれは！
「「ヒィーロォーーー！！」」
ノエルさんを肩車したさきねぇがこっちに向かって爆走してくる！
あれは・・・さきねぇに全戦域殲滅砲撃支援機ノエルを取り付けた究極形態、『さきねぇXX』！
まさか、すでにロールアウトして実戦投入されていたとは・・・
しかし、距離が遠い。全力の縮地を何度も使用しなければ間に合わない。
ここまでか・・・
「◯◯◯◯！！」
「××××！！」
さきねぇとノエルさんが何かを叫びあってる。
あ、久しぶりの＜火炎王蛇＞さんが出てきた。
火炎王蛇さんがこっちに向かって跳躍するが、もともと速度重視の魔法ではない。
のだが。
火炎王蛇さんの姿が一瞬にしてかき消えた。
そして。
「イガァァァァァ！？」
背後から野太い絶叫が響く！
後ろを振り向く。
そこには、紫色の雷を纏った火炎王蛇さんがエロタッコンヌにからみつき、その体に炎の牙を突き立てているところだった。
「ヒロ！怪我はない！？色々大丈夫！大事なもの失くしてない！？」
「怖かったよぉぉぉぉぉ！」
「おーよしよし、お姉ちゃんがきたからもう大丈夫だからねー。」
タコの焼ける香ばしい匂いが立ち込める中、泣きながらさきねぇに抱きつく俺と俺をあやすさきねぇ。
感動の再会ですね。
「大丈夫だったかヒイロ。」
「あ、ノエルさん。助けてもらってありがとうございました！」
「いや、当然のことだから気にするな。それより、なぜ向こうに裸の男が何人もいるんだ？」
「これには事情がありまして・・・」
経緯を説明。
「・・・そんなキチ○イみたいな魔物がいるのか。大陸は広いな。」
「まぁタコとエロスは日本にとって切っても切り離せない関係だからね。」
「お前たちの国は一体どうなってるんだ？」
うん、俺もどうかしてると思う。
「てゆーか、さっきの火炎王蛇さん、なに？成長期？」
「ん？ ああ、あれ？私のムラサキ流忍法≪疾風迅雷≫の効果よ。」
「・・・何をしたんだ？」
ノエルさんがうさんくさそうに尋ねる。
「前にカツラ支部長が『雷魔法はコントロールが悪い』とか、エルエルが『ムラサキは魔法放出後のコントロールがダメ！』って言ってたじゃない？」
「ああ、言ったな。」
「だったらそもそもコントロールしなければいいじゃない！」
「「・・・・・・」」
さきねぇの力説に対し、うさんくさそうな目で見る俺とノエルさん。
だって、なぁ・・・さきねぇ発案だし・・・
「というわけで、『短時間のみ触れたものに雷の追加効果を付与』と『ほんのわずかな時間だけカミナリの速度を得る』っていう忍法を開発しました。それをエルエルの蛇に付与した結果がさっきのアレ。その名も！合体魔法！！・・・・・・ヒロ、≪雷炎皇蛇≫と≪雷神降臨≫のどっちがいいかしら？」
「うーん、多分後者のやつはどっかから怒られるんじゃないかな－？」
そんな姉弟ネーミング会議の傍らで。
「た、他人の魔法に魔法を混ぜる？しかも、私の≪火炎王蛇≫クラスの魔法に？ありえるのかそんなの・・・」
ノエルさんは一人頭を抱えていた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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『タコの叫び声が「イカー！」』はおもいついたじぶんにはなまるをあげたいきぶんですまる
