第百四十五姉「ヒロー、お姉ちゃんぶたれたー。痛いの痛いの飛んでけーってやって?」
気付いたら執筆開始から一年経ってました。びっくり。
「なんちゃってファンタジーのいちゃラブゲーとかやりてぇな。ファンタジー要素どこにも必要ないようなやつ。なんでどこも出さないんだろうな・・・一回自分で書いてみるか」ではじめたあねおれですが、気付けば約45万字、ラノベにして四冊分書いてました。
生まれて初めて書いた小説で45万字とかすごいのかアホなのかよくわかりませんね(笑
これからもあねおれをよろしくお願いします。ここまできたら200話まで書くか!
また、短編を評価してくださった方や感想をくださった方が何人も。ありがとうございます。父も喜んでいると思います。本人に確認はしてませんし、しませんが(笑
そして本来であれば敵の戦力分析をするべきなのだが、すでに一勝している上に、次に控えるはさきねぇとノエルさん。負けるほうが難しい。
なので当然そんなことはせずに俺とさきねぇも串焼きツアーに精を出していた。
うまうま。
休憩時間も終わり、二人の男女が荒野で向かい合う。
「さて、では次は風対決ー!アルゼンからはこの私!疾風のパープルムーンよ!」
「せーの!」
「「「「「パープルムーンー!!」」」」」
「夜空に輝く二つの月と、裁判長に代わって!裁くわよ☆判決は常に死刑だけどね!」
子供たちの声援を受けてシャキーン!とポーズをとるさきねぇ。
人気があるのはけっこうなことだが、子供たちが真似して『はんけつはつねにしけー!』とか言ってるのを見ると、教育に悪い正義の味方だなーとつくづく思う。
「そして対するはー、シナチク四天王の風の人ー!」
「フッ。シナサス四天王の風のバルバーだがな。」
本人の意思に反し、すでに観客からは『風の人ー!』と声がかけられている。
どんまい!
「僕から提案があるのだが、いいかい?」
「? 提案?まぁ聞くだけ聞きましょう。」
「今回の対決にあたって、『どちらが素晴らしい風魔法を使ったか』で勝負しないか?」
「ふむ、つまり魔法の威力とかじゃなくて、観客が『ぶらーば!』って思うような魔法で勝負ってこと?」
「ああ、そういうことだ。どうだろう?それともこの条件だと自信がないかい?」
「ハハッ、やっすい挑発ね。だが、安い挑発は全部買うことにしてんのよ!いいでしょう、そのルールでいきましょう!」
どう考えてもさきねぇの勝ちは揺るがないのに、なんだこの嫌な感じは。
例えるなら、さきねぇのパンチラを見ようと階段の下で這いつくばって隙を狙ってるバカを発見した時のような・・・
俺の不安をよそに対決が始まる。
「フッ。先行はあなたに譲ろう。」
「吐いたつば飲まんとけよ!」
極道映画に出てくるヤクザか。
そんなことを思ってたら、さきねぇが腕をぐるぐる回転させだした。
その腕にどんどん魔力が集まっていく。
何をする気だ。
「はぁぁぁぁぁぁ!ムラサキ流忍法!≪神風一式≫!」
ブォォォォォォォォォ!
正拳突きの要領で拳を放つさきねぇ。
その腕から竜巻が巻き起こる!
す、すげぇ!さすがお姉さまや!
そのまままっすぐ岩場の方へ突き進むと思われた竜巻が、直角90度に曲がる。
その先には観客が。
え?
「さきねぇ!?コントロールは!?」
「えー、今回の事態は大変遺憾ながら、全くの想定外であり~」
「コントロールする努力!!」
政治家みたいな事を言いながらいいわけをするさきねぇ。
出したらすぐ元の場所へ片付けるの!掃除の基本でしょ!
はわわわ・・・と思っていたら、ノエ、じゃなかったクリムゾンムーンが光る剣で竜巻を真っ二つに切り裂く。
こちらに向かってくるクリムゾンムーン。
「ありがとうございました!本当になんてお礼をいえばいいか・・・」
「・・・・・・」
クリムゾンムーンは手のひらを向け顔を横に振り『お前のせいじゃない。気にするな。』と態度で語ってくれた。
そして。
ゴンッ!
「いったぁ!」
さきねぇの頭にゲンコツを落とし、首根っこを掴み馬車へズルズル引きずっていく。
そして二人が入った馬車の中からは怒鳴り声が聞こえる。
まぁ一歩間違えたら大惨事だからな。そりゃおばあちゃんも怒るわ。
数分してクリムゾンムーンと頭を抑えたさきねぇが戻ってきた。
「ヒロー、お姉ちゃんぶたれたー。痛いの痛いの飛んでけーってやって?」
「俺の姉は初月紫であってパープルムーンさんじゃないのでやりません。」
「けちんぼ!」
けちんぼて。あんたいつ生まれや。昭和初期か。
「・・・フッ。さて、もういいだろうか。」
「あ、すいません。どうぞうどうぞ。」
腕を組みながら律儀に待っていた風の人。
基本的に良い人ばっかだよなこの世界。素晴らしいですね。
「フッ。それでは、いくぞ!」
「ばっちこい!右手にフ○ーハ、左手にフバー○の合体魔法で倍にして返してやるわ!」
賢者か。しかもそれ、ブレス系にしか効かんぜよ。
「ハァァァァァ!」
風の人に魔力が集まっていく。
とはいえ、さきねぇほどの力はない。にも関わらず嫌な予感は消えない。
なんだってんだ・・・
「フッ!食らえ!≪創世神の息吹≫!」
魔法名ちょうかっこいい!
そして風の人が突き出した両手から風が放たれる!
ぶおぉ~~~~
なんとも頼りない音がする。
へー。これがそうせいしんのいぶきかー。
「!? これは!」
驚愕のさきねぇ。
もしや、風を直接受けた者にしかわからない追加効果が!?
「これは・・・扇風機の『強』!」
だよね。わかってましたそういうオチだっていうのは。
さきねぇは風を受けながら『ワレワレハチキュウジンダー!』とか言ってる。小学生か。
「フッ。甘いな。ここからが≪創世神の息吹≫の実力だ!ハァ!」
風の人はそう言い放つと前に出していた両手を上に上げる。
すると!
「・・・お?」
「「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」」」」」」
さきねぇのドレスの裾がふわりと持ち上がり、生足を膝くらいまで覗かせる。
周りの観客、大興奮。
『たかが膝くらいまでの生足で何を大げさな・・・』と思うかもしれないが、それは違う。
実は、さきねぇは目立ちやがり屋で派手好きにも関わらず、普段の服装はロングスカートでロングブーツ姿が多く、さらに飛竜のローブを羽織っているため露出はかなり低いのだ。
特にパンチラしそうなミニスカートなどはまず履かないといっていい。
理由は当然、俺がすごーく苦々しい顔をするから。
水着であれば『そういうものだから』と思えるが、普段からそこらの男どもにさきねぇがジロジロ見られるのは不愉快極まりないため仕方がないのだ。
それに加えて、この世界の文化にも問題がある。
ここは異世界。当然テレビやパソコンなどはない。
その結果、テレビでアイドルやモデルの姿を見ることはないし、エロ動画も存在しない。
エロ本やエロ小説すら騎士・貴族クラスしか買えない高級嗜好品なのだ。
ゆえに、この世界の男性の多くは日本の男子中学生レベル、つまり思春期真っ只中の脳内お花畑と言っても過言ではない。
そのマガジンの巻頭カラーピンナップで興奮できるレベルの思春期どもが、さきねぇという神クラスの美人の生足を見てしまったのだ。
テンションがMAXになるのも頷ける。
「っと。そんなアホなこと考えてルバアイジャナカッタネ。オシゴトオシゴト。」
俺は目を閉じ、一度深呼吸する。
そして。
「朝焼けよりも眩きもの、空の青より蒼きもの。聖言を告げる偉大なる汝の名において、弟、ここに姉に誓わん・・・」
「!? ヒイロさん何やってんすか!?」
俺を中心に、とてつもない魔力の渦が発生したのを見たスレイがあわてて駆けつける。
「え?魔法の詠唱だよ?」
「『魔法の詠唱だよ?』じゃなくて! こ、こんな・・・冗談でもこんなの当たったら死んじゃいますよ!?」
「あははは。おいおい、この俺がさきねぇの生足を見られたくらいで周りのやつらを皆殺しにでもすると思ったのか?」
「そ、そうですよね!いくらなんでもそこまではしないですよね!『アルゼン冒険者の中で一番いい人』とまで言われるヒイロさんですもんね!」
「当然だろ。ただちょっとここにいる男たちの眼球を抉るだ「男は今すぐ逃げろぉぉぉぉぉぉぉ!」
スレイの絶叫を聞いて、観客たち(男ども)が一斉に逃げ出す。
クククク、その程度でこのストライクフリーダムヒイロ・デンドロヘビーアームズカスタムHWSの手から逃れられるとでも思ったか?
せめて自分の体を霧に変えるくらいはしてもらわんとなぁ!それでも凍らせて砕くけどね!
ロックロックロックロックロックロックロックロックロックロックロックロックロックロックロック!
「・・・等しく絶望を与えんことを!それでも、守りたい世界があるんだぁー!≪聖氷槍雨≫フルバース「落ち着け。」イタッ。」
さきねぇからチョップが入ると、空に舞う百を超える氷のフォークは音も無く消え去った。
「ヒロ、落ち着きなさい。ここにいる非モテの性犯罪者予備軍どもに遍く光をもたらすことも、この大天使たる私の使命でもあるわ。」
まるで菩薩のような悟りきった笑顔で語るさきねぇ。
周囲から『なんて言い草だ』『自分のこと大天使とか・・・』『つーか性犯罪者予備軍って』とツッコミが入るも完全にスルー。
「・・・・・・了解。不幸な事故ってことで手を打ちましょう。しかし大天使って・・・」
「「「「「(さすがのヒイロ(くん)(さん)もそこにはツッコむのか)」」」」」
「いつも自信過剰なのにこういう時だけ奥ゆかしいな。実際は超女神なのに。」
「「「「「そこ!?」」」」」
「!?」
いきなり観客たちからツッコミが入りびびる俺。
え、なんでつっこまれたんだ今?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
まぁそんな感じでヒロくん、珍しくバーサーカーモードでした。
ムラサキさんの普段の服装はワイルドアームズ3のヴァージニアやマヤみたいな格好です。服装描写死ぬほど苦手なのでこんな説明で許してください。
ヒロくんはああ言ってましたが、一応アルゼンにもえっちなお店はあります。
ただ、ムラサキさんとノエルさんが『教育に悪い!』ということでヒロくんには知らせてません。どんまい。




