第百四十二姉「よし、お前ら、全員一列に並べ。老若男女関係なくぶっ飛ばしてやる。」
感想いただきました。ありがとうございます。
ヒロくんの独自魔法の≪千本桜≫と≪死鱗世界≫の概要と、没になったヒロくんが活躍するシリアスバトル話の内容を書かせていただきました。
ここについて感想きたらいいな~と思っていた箇所にピンポイントに感想がきて藤原ロングウェイ感動の極み。
読者さんから感想をいただけるとテンションあがってやる気メーターもぐんぐんアップしますね。ありがとー!
あ、新章です。
「ちーっす。お疲れ様でーす。」
そう言いながらギルドに入る。
最初は緊張したが、今はなんかもう何年も勤めたアルバイト先感覚です。
『あれ、先輩今日シフトはいってないっすよね?』『遊びにきましたw』『アホすぎワラタw』みたいな。
ただ、今日はギルド内が異様な雰囲気に包まれていた。
なんだ?
「おししょーさまー!!」
そんな声と共に突撃してきた金髪美少女(?)から体当たりを食らう。
この声、この容姿・・・まさか!
「お、おお!クリスじゃん!久しぶりだな。」
「はい!お久しぶりですお師匠様!」
そこにいたのは俺の(一身上の都合により弟子入りして数時間で魔法学校に帰った)愛弟子であり、文通友達のクリスだった。(第十章参照)
ぴょんっと一歩下がり、ビシッ!っと敬礼するクリス。
見た目がイケメン美少女な分、めっちゃかわいく感じる。
今んとこ『初月緋色の異世界プリティーランキング』第三位の実力の持ち主だ。
もちろん一位はさきねぇだし、二位はノエルさん。
これは覆らない常識というか、大自然の摂理だからわざわざ説明する必要なかったね!てへへ!
・・・え?まりーしあ?なんのことです?サッカー用語ですか?
「なんだ、こっちに来てたんなら連絡くれればよかったのに。」
「本当は突然お師匠様の自宅にいって驚かせようとしたのですが・・・」
「え?でも俺今日ずっと家にいたけど。あと、俺んちじゃなくて一応ノエルさんちだからな?」
あくまで居候の身ゆえ。
表札には『ノエル・エルメリア、ヒイロ・ウイヅキ、ムラサキ・ウイヅキ』と書かれているけどね。
最初の頃は表札なんてなかったのに、気付いたら掛けてあった。
ノエルさんに表札について尋ねたら『ああああああった方がべ、便利だろ!?』とお顔を真っ赤にしてプルプルしながら答えてくれた。
結界あるからそもそも誰も尋ねてこないよねとも思ったが、家族(というよりエルフ族全般)と仲が悪いノエルさんは家族っぽいことが好きなのはなんとなく理解している。
爽やかに『そうですね。それに俺たちとノエルさんは家族みたいなものですし、問題ないですね!』と答えたら、ノエルさんは真っ赤になった顔を覆ってキャー!とか言いながら走り去った。
ちなみに、その様子を見ていたさきねぇからなぜかお姉ちゃんパンチをいただいた。解せぬ。
そんなことを思いつつ、ふと周囲を見渡すと、なぜかすごい目で見られていた。
なんかしたか俺。
ヒソヒソ話に耳を澄ます。
『マジヒイロさんには失望したわ・・・』『姉一筋!とかいってあんな超エリート美少女魔法使いと親しくなってるとか・・・』『所詮ヒイロくんも若い方がいいのね・・・』『弟のヒイロだからこそムラサキさんとの交際を許してやったのに・・・』
誤解で俺の株が急激に下がっている!?
たしかにクリスはパッと見だと美少女だし、服装も軽装にマントという男女共用のオーソドックスな魔法使いスタイルだから勘違いしてもおかしくはない。
俺の場合は出会いが出会いだったのでアレだが。
よくわかっていない顔のクリスを置いて、冒険者たちに近寄る。
「ぼそっ(おい、あんたら。こいつ、男だぞ?)」
俺の言葉に一瞬時間が止まるも、またヒソヒソ話が開始される。
『今の言い訳、聞いた?』『もうちょっとマシな嘘ついてほしいよな・・・』『なんか百年の恋も一瞬で冷めたわー・・・』『ムラサキさんかわいそう・・・』
「よし、お前ら、全員一列に並べ。老若男女関係なくぶっ飛ばしてやる。」
「援護します、お師匠様!」
「「「「「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」」」」」
魔法使い二人による『アルゼン冒険者37564大会』が開催されるかと思いきや、ちょうど露天のおっちゃんと値切り合戦をしていて遅れていたさきねぇがギルドに入ってきた。
「ヒロー見て見てー!このアクセサリー5000パルだったのに説得したら、なんと!50パルで買えたのー!おっかいどくー!」
右手を全開に開いての『50』アピール。
大丈夫なのか露天のおっちゃん。表示価格の1%だぞ。首吊らなきゃいいけど。
まぁ露天なんてぼったくりが基本だから、むしろ適正価格なのかもしれんな。
「お?どしたん?・・・あークリボーじゃない。相変わらず男か女かわかんない顔してるわね!」
「ほっとけ!・・・全く、お師匠様の姉君でなければ許していないところだ。」
「ふむ・・・私はヒロの姉。そしてあんたはヒロの弟子。なら私のことはグランドマスターと呼びなさい。」
「断る!」
「なにおー!?」
さきねぇとクリスがじゃれあってるのを見て、他の冒険者たちもやっと俺の言葉を信じたのだった。
まぁ俺に擦り寄る女がいたら、さきねぇが許すはずないもんな。みんなわかってらっしゃる。
「・・・で、クリボーはなんでギルドにいんの?冒険者になったの?」
「そういや、なんで直接ノエルさんちにこなかったの?」
「はい、アレはお師匠様の元を旅立った日のことでした・・・」
~10分後~
「・・・そして、ボクはついに愛馬のバーニーと出会ったのです!」
「・・・そっか。愛馬のバーニー君の話はわかったんだけども、俺は『なんで直接ノエルさんちにこなかったの?』って聞いたのであって、俺と別れてからのことを聞いたんじゃないよ?」
相変わらず近況報告が好きなクリス。
さきねぇはクリスの話にとっくに興味をなくし、冒険者たちと紙相撲大会を繰り広げている。
「わかりました。では先月開催された魔法学校での魔法文化祭のはな「クリース!巻いて!もっと巻きで!今日の朝の出来事からでおけ!」
「朝からでよろしいのですか?では・・・」
~長いので省略~
「つまり、ノエルの森(仮)にいったら迷子になってノエルさんちにたどり着けなかった。だから仕方なくアルゼンに来た。ギルドで待つのが一番だと思ってギルドにいったらなぜか男性冒険者たちから異常に声をかけられてウザかった。そこに俺がやってきた。これでいい?」
「はい、要約するとそうなります!」
俺はその要約された話を聞きたかったんだよ・・・
すると、マリーシアさんがちょこちょこと近寄ってきた。
「やっぱりヒイロさんの文通友達のクリスさんだったんですね。」
「マリーシアさん。わかってるなら事前に皆に説明しといてよ・・・」
「いやー私も手紙でしか知らなかったので実物見たら自信がなくって。」
・・・確かに『クリフレッド家のクリスと文通してる』としか言ってないもんな。
あ、そうだ。
「マリーシアさん、彼氏募集中でしたよね。クリスなんかどうです?超優良物件ですよ?」
「う~ん、そうで「嫌ですよこんなの。」
「「「・・・・・・」」」
「オラァ!」「ニャー!?」
マリーシアさんからヤクザキックを食らい、壁に叩きつけられるクリス。
こえぇ。
「てめぇ幾つだぁあ!?26歳なめんじゃねぇぞガキ敬語使えやゴラァ!!」
「ひぃ!も、申し訳ありません!」
荒ぶるガケップチドクシンノカミ。
払いたまえ、清めたまえ~。
「ふー、ふー・・・私もこんな顔良し家柄良し金持ちイケメン魔法使いなんて・・・・・・・・・・・・・・・お断りです!ヒイロさん一筋なんで!」
「長考しましたねー。」
後半のセリフはスルー。
「それに、彼氏が自分よりかわいいとか嫌なんですけど。」
「そんなもんですか?」
周りの女性冒険者もウンウンと頷いている。
そんなもんか。じゃあしゃーなしだな。
「さて、どうすっかな。・・・よし、じゃあ今日はクリスにアルゼンを案内しよう。」
「ほんとうですか!ありがとうございますお師匠様!」
「さきねぇもそれでいい?」
「えー、ヒロとのセレナーデの森ラブラブツアーがポシャるのー?」
「ごめんごめん。今度絶対埋め合わせするから。」
「・・・なんでも?」
「なんでも。」
「ならいいわ!よーしクリボー!私について来い!」
ダダダダ!と駆け出すさきねぇと、当然のようについていかないクリス。
「・・・いこうか。(さきねぇの機嫌悪くなっちゃうし。)」
「はい!お師匠様!」
クリスを連れて外に出る。
「あ、そういえばヒイロさんを尋ねておかしな格好をした三人組が・・・ってもういない。まぁいいか。」
マリーシアさんのそのつぶやきは俺には届かなかった。
その後、ギルドで多くの男性冒険者が床に手をつき、真っ白に燃え尽きた状態で発見された。
その冒険者たちは一様に『男をナンパしてしまった・・・』と口にしていたそうだ。
その中には俺のかわいい後輩であるスレイの姿もあったとかなかったとか。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
クリスの再登場です。いつか出したいと思っていたので出せてよかった。




