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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第十七章 異世界でもいちゃいちゃしながらデートするよ!編
140/191

第百四十姉「もちろん。何回でも何十回でも何百回でも、またデートしよう。」

 さきねぇの手を握り一気に走り出す!


「ヒイロ待て!クソッ、街の警備兵は何やってんだ!?絶対に俺が助けてやるからな、親友!」


 魂を熱く震わせているヴォルフたちを残し、さっさと退散するのであった。




 せっかくのデートなので、いつもどおりの定食屋では味気ない。

 最終的にスイーツ(笑)が好みそうなおしゃれな感じのカフェに落ち着いた。


「いらっしゃいませ~!何名様ですか?」

「男一人と天使一人です。」

「・・・は?」

「もう、ヒロってば~。すいません、姉一人と弟一人です。」

「・・・え?」


 ウェイトレスさんはパニクっていた。

 テーブル席へ案内される俺達。


「すいませーん、カップル的な何かありませんかー?」

「カップル的ですか?ありますよありますよ~。このジャイアントグレートパワフルソーダなんていかがですか?」

「「カップル要素が微塵も感じられない!」」

「な、名前はアレですけど、大きめのコップにストローが2本ついてる感じです。」

「あー・・・じゃあそれ。さきねぇはメイン何頼む?」


 木彫りのメニューとにらめっこしているさきねぇに声をかける。


「うーんとねー・・・ブリリアントハンバーグとハイパーピザーニャで迷うなー。」

「じゃあ両方頼もうよ。半分こしよう半分こ。」

「えへへ、それがいいわね!」

「ブリリアントハンバーグとハイパーピザーニャお願いします。」

「かしこまりましたー。」


 ウェイトレスさんが厨房に戻り数分の後。

 現在、ジャイアントグレートパワフルソーダが目の前に鎮座している。

『バケツにソーダ満タンいれました!』って感じ。

 これはどの角度から見ても確実にカップル的なものではないと断言できる。

 店長呼べコラ。


「と、とりあえず飲みましょうか!」

「そ、そうだね!カップルカップル!」

「なんでワッフルワッフル風に言ったの?」


 二人でストローに口をつけ飲み始める。

 そして、周りの客たちからかなりの視線を感じる。

 反応は『おーっ!やるじゃん!』と『いいな~』が半分、残り半分は『チッ、男だけグミーまみれになればいいのに・・・』と様々だ。

 とはいえ、あんま恥ずかしくないんだよな。

 なぜなら、昔っからこうなので周囲の反応も慣れてしまった。

 むしろ『ふふん、いいだろう?私と卿らの違いを教えてやろう・・・格だ。』といった感じで得意気です。

 と思っていると、さきねぇと目が合う。


「・・・(ニコッ)」

「・・・(ニコッ)」


 微笑みあう俺たち。

 そして強くなる『あいつら爆発すればいいのに』オ-ラ。


 そうこうしてるうちにハンバーグとピザが届く。

 ウェイトレスさんは『半分こで一緒に食べるって言ってたけど、ハンバーグはどこに置けばいいんだろう?』といった様子で、恐る恐る俺とさきねぇの中間に置く。

 名前とは裏腹に普通のチーズハンバーグとマルガリータピザだった。


「よし、じゃあ食べようか。」

「そうね。いただきます。」


 俺が切り分けるまで腕を組んでじっと待ってる普段と違い、自分からハンバーグを一口大に切り分けるさきねぇ。

 ちょこんと待つ俺。


「よし、切り分けた。ヒロー、あーん。」

「あーん。」

「あ、ちょっと待って。熱いからフーフーしないと。」


 口元にハンバーグを持っていき、息をフーフー吹きかけるさきねぇ。

 それをニコニコ見てる俺。


「は、もうだいじょうぶ。あーん。」

「あーん。」


 モグモグ


「んふふ。おいし?」

「ん。さきねぇが切り分けてくれたしね。すごいおいしい。」

「えへへ。よかった。」

「次はさきねぇね・・・フーフー。はいあーん。」

「あーん。」


 モグモグ


「ね。おいしいでしょ。」

「うん。ここ選んでよかったわね。じゃあ次は私ね。あーん。」

「あーん。」


 終始笑顔であーんで食べさせ合う俺たち姉弟。

 そして口から砂糖を吐きそうになっている客たち。

 そんな感じで食べさせっこして食事を終える。

 残るは・・・


「この半分近く残ってる炭酸の抜けたバケツソーダか・・・」

「ヒロ、無理しないで残していいわよ?」

「HAHAHAHA!さきねぇとカップル用に頼んだ飲み物を俺が残すはずナッシング!いただきます!」


 両手でバケツを持ち一気飲み体勢に入る。

 ゴクゴクゴクゴク・・・


「糖尿病なんてくそ喰らえ!って感じの漢らしいヒロ、かっこいい!あ、女の子がくそ喰らえなんて言っちゃいけないわね。・・・うんこ食え?」

「ブファ!」


 思わず口に含んでいたソーダを吐き出す。


「ヒロ、大丈夫!?無理するから!」

「ちが、無理したんじゃなくて・・・!」


 一瞬だけ『年上のお姉さんモード』解きやがった・・・完全に不意打ちだった。

 店員さんに床を汚したことをめっちゃ謝って店を出た。

 この日「黒髪の冒険者カップルが甘すぎて砂糖吐きまくったあいつら爆発すればいいのに」という願いから、俺たちの異名に『黒砂糖爆弾ブラックシュガーボムズ』が追加されたのを後で知ることになる。




 二人で手を繋ぎながら目的もなく歩いていると、公園が目に入る。

 ・・・ふむ。


「ここでちょっと休憩していきましょうか。天気もいいし。」

「そうだね。さすがにお腹いっぱいだわ。」


 大量の炭酸の抜けたソーダ一気飲みはさすがにダメージがでかかった。

 人が少ない木陰を発見したので、そこに座る。


「風も気持ちいいし天気もいいし、絶好のデート日和だねー。」

「ほんとね。・・・ヒロ、お腹大変じゃない?ちょっと横になれば?」


 さきねぇが座ったまま、自分の膝をぽんぽんと叩く。


「いいの?」

「どーぞ?」


 お言葉に甘えてさきねぇの膝を枕にする。

 普段は立ち位置が逆だからこのかけがえのない一瞬が宝物です。

 まぁお願いすればやってくれるんだけどね。

 姉から甘えられるのが好きな俺としては、どうも膝枕される方よりする方を選んでしまう。


「どっこいせっと。」

「ふふ。もう、おじさんじゃないんだから。」

「えー、いいじゃん別にー。疲れたのー。」

「はいはい。ゆっくりお休みなさい。」


 俺はさきねぇの声を聞きながら、髪を撫でられる感触に目を閉じる。

 その心地よさに心を奪われ、まどろみの中に落ちていくのだった。




「うーん・・・」

「起きた?」

「・・・あれ、俺、寝てた?」

「ええ、それはもうぐっすりと。」


 鈴の鳴るような声でクスクスと笑うさきねぇ。

 俺は体を起こす。


「あー・・・ごめんなさい。せっかくのデートなのに。疲れたでしょ?」

「デートだから、こんな時間もいいんじゃないかしら。それに、ヒロの寝顔見てたから楽しかったわよ?」


 俺のしかめっ面に、またもクスクス笑うさきねぇ。


「歩ける?足しびれてるんじゃない?≪聖杯水アクアホーリー≫で治そうか。」

「なんでもかんでも治しちゃったらつまらないでしょ?いいの、これで。これがいいの。ヒロの重みのしびれだから。」


 嬉しそうに話すさきねぇに、さすがの俺も赤面してしまった。ちくしょう。


 そのまま二人で寄り添うこと十数分。

 日も少しずつ傾き始めてきた。


「・・・さて、と。名残惜しいけど帰りましょうか。」

「・・・そうだね。」


 立ち上がり、何を言うまでもなく手を繋ぎ指を絡める。


「またデートしましょうね。」

「もちろん。何回でも何十回でも何百回でも、またデートしよう。」


 そして、家路に着いたのだった。




「おお、二人とも。お帰り。」

「ただいま帰りました。」「ただいまです。」


 ノエルさんが夕飯を用意している最中だったので、せっかくだし三人一緒に料理をする。

 何気に三人で料理なんて初めてだな。

 そんなこともあってかそれぞれに気合が入ってしまい、かなり豪勢な夕食になってしまった。

 まぁたまにはこんな日があってもいいもんだ。


「ノエルさんのお料理はいつも美味しいですね・・・いつもご迷惑ばかりかけて申し訳ありません。」

「・・・え!?」

「この世界にきてからずっとお世話になりっぱなしで、何一つご恩を返せていないことが心苦しいです。」

「え、あ、いや、その、え?うん・・・え?」


 さきねぇの突然の感謝の言葉に動揺するノエルさん。


「普段は恥ずかしくて言えないですけど・・・私たちを拾って育ててくださって、ありがとうございます。これからも末永く私たち姉弟をよろしくお願いします。」

「ム、ムラサキ・・・!」


 感極まり、両手で顔を押さえ号泣するノエルさん。

 なんだこの『不良娘が改心して、親に「生んでくれてありがとう」と伝えて両親号泣』みたいなハートフルドキュメントなノリは。24時間テレビか。

 結局、ノエルさんにしては珍しくワインを大量に空け、三人で遅くまで飲み明かしたのだった。




 そして よが あけた !


「・・・イテェ!」


 ガツン!という衝撃に目を覚ますと、大の字になったさきねぇのグーパンチが俺の頬にクリーンヒットしていた。


「まったく・・・まぁでもこれがさきねぇだよね。朝だよー起きろー。」

「う~ん・・・あと86400秒・・・」

「えっと・・・60で割って、60で割って・・・24。おい、丸一日じゃねーか。早く起きなさい!」

「ふぇ~い・・・」


 いつものように着替えさせ、いつものように二人でリビングへ。

 いつものようにノエルさんが朝食を作ってくれていた。


「ノエルさんおはようございます。」「エルエルおは~ぁぁぁ・・・」

「・・・うん、いつものムラサキだな。」


 残念なような、ほっとしたような微妙な顔をするノエルさん。


「あー疲れたーもう家事とか一年はやらんわ~。」

「たまにはやってもいいんじゃないか?ヒイロはちゃんと手伝ってくれているぞ?お前も姉を名乗るなら~」

「あはは、いいんですよ。さきねぇはこれで。どんなさきねぇでも、俺の大好きなさきねぇですから。」

「いやん、ヒロ私のことわかってる~!」




 そして、さきねぇの一日だけ年上のお姉さんモードは、アルゼンに『ムラサキさんそっくりの淑女が現れた』『ムラサキさんに双子の姉妹が存在した』『ムラサキさんが分裂した』『ムラサキさんのドッペルゲンガーが街に入り込んでいた』と大いに混乱をもたらしたが、誰もさきねぇ本人だとは言わなかったそうな。

 めでたしめでたし?


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


これにてデートしようよ!イェイ♪編の終了です。

本来は番外編として書いていたんですが、気付いたら朝食を食べ終えたシーンで3000字を超えていたため、悩んだ結果独立した章にしました。

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