第百三十八姉「・・・・・・え?いや、俺はどうもしないけど、君はどうかしてるよね?」
何件も感想いただきました。ありがとうございます。
読者さんから『いちゃラブっていいな!』という正の感情と『くそ、こいつらいちゃいちゃしやがって!』という負の感情(笑)の両方を引き出せる書き方になっていれば良いのですが。
今章はちょっと特殊なので、いつも以上に感想お待ちしております。
結局は私の書きたいように書くんですけどね!ぐへへ。
この章だけ早めの更新。
「さて、と。ちょっと休んだら街まで一緒にきてくれる?久しぶりに服でも買いたいなーって。」
「喜んで!」
「・・・選んでくれる?」
「当然。」
「こ、このオーラはなんだ?結界か?結界なのか!?」
俺とさきねぇのあまりのラブラブオーラに、彼氏いない暦168年のノエルさんは聖水をかけられた吸血鬼のように苦しんでいた。
「「いってきま~す!」」
「ああ、気をつけてなー。暗くなる前に帰るんだぞー。」
その後、二人でアルゼンに向かう。
ノエルさんは『甘ったるすぎて窒息しそう』という理由で一緒にいかない。そんなにか。
というわけで手を繋いでゆっくり歩く。静かですな~。
特に言葉はないが、そんなものは必要ない。
俺の隣にさきねぇがいて、さきねぇの隣に俺がいる。それだけで十分なのだ。
森を抜け、アルゼン平野に出る。
空は青く、雲は白く、風はそよそよとほほを撫でていく。
今日は絶好のデート日和ですね。
「あ、ヒロ見て。グミーがいっぱい。」
「あ、ほんとだ。同じ色を四つ並べたら消えたりしてね。」
「ふふ、そしたらアルゼンからグミーがいなくなっちゃうわよ?」
「みんな困っちゃうね。」
「「あははは!」」
そんな取りとめもない会話をしながら道を歩く。
「あ、ブルーいもむし!」
「む、魔物か!さきねぇ、下がって!」
もちろんブルーいもむしなんか雑魚オブ雑魚だが、あえて緊迫した雰囲気を出す。
「こい、魔物ども!さきねぇは俺が守る!・・・≪水鋭刃≫!」
薄く透明な円形の刃がブルーいもむしに高速で接近し、体を真っ二つにする。
俺の熟練度が上がったためか、最近≪水鋭刃≫の薄さや透明度に磨きがかかっている。
離れて見たら『俺が腕を振ったら、魔物が突然切断された』ようにしか見えないだろう。
そのうち『水の魔術師』とか呼ばれちゃったりして。てへへ。
「ヒロ素敵!ありがとう!大好き!」
「俺が守ってあげるからね!」
さきねぇに抱きつかれ、ぎゅっと抱き返す。
そんな感じでいちゃいちゃしながらアルゼンを目指した。
特に危険もなくアルゼンの門に到着する。
「おお、二人ともおはようさん。」
「おはようございます。」
「おはようございます。いつもお勤めご苦労様です。頑張ってくださいね。」ニコッ
「・・・・・・」
さきねぇの豹変振りに門番さんが絶句する。
やっぱ面白いな。
「どうかされました?」ニコッ
「・・・・・・え?いや、俺はどうもしないけど、君はどうかしてるよね?」
「何がでしょうか?お疲れなんですね。勤務が終わったらゆっくり休んでくださいね。」
「さきねぇ、そろそろいこう。」
「そうね。それでは失礼します。」ペコリ
アルゼンの門を通り過ぎると、後ろから『おい、今日は何かあるぞ!凶事の前触れだ!いつも以上に警戒を怠るな!最悪、魔物の大群が襲ってくるかもしれん!』という叫び声が聞こえた。
ハハ、ワロス。
最初の予定通り、服を見て回ることにする。
いつものようにユリシ、いや、しかしせっかくのデートにユリシロ?それってどうなの?
今、俺の男の甲斐性が試されている。
「さきねぇ、今日は違う服屋にいってみない?」
「そう?じゃあどこがいいかしら。」
「任せて、俺のおすすめの店があるから!」
「あら!じゃあそこに案内してもらおっかな?」
さきねぇの手を握りなおして歩き出す。
いやーまさかムラサキファンクラブの情報網がこんなところで役に立つとは。
世の中無駄なことってないんですね。
お目当てのお店に向かって(ファンクラブの情報を頼りに)歩いていると、向こうに見知った顔の二人が。
「スレイ遅い!早く来なさいよね!」
「遅いって・・・時間通りじゃん。」
「もっと早く来て待ってるのが男でしょ!」
「はぁ、めんどくさ。」
「なんか言った!?」
「い~え別に~。」
先輩冒険者ではあるが、実力的・年齢的後輩であるスレイと、確か幼馴染の・・・リムルちゃんだ。
相変わらず人気投票最下位ヒロインみたいな事言ってんなー。
「おっすスレイにリムルちゃん。そっちもデートかな?」
「あ、ヒイロさんにムラサキさん!変なこというのやめてくださいよ。買い物に付き合わされるだけですよ。」
「変なことってどういうことよ!?」
「そのままの意味だよ!」
「なんですって!?」
あーあーまたケンカしだしたよ。
周りの人たちは『ああ、またあいつらか』みたいな生暖かい目で見守っている。
だめよーこういう『こいつらそのうちくっつきそうだよな』ってやつに限って飲み会にいきなり違う女連れてきて彼女ですーとか紹介して飲み会のメンツの雰囲気をピリッとした緊張感あるものに変えちゃうタイプだから。
「あら、仲良しね二人とも。でもダメよ、リムルちゃん。こういうのはお互いに思いやりが大切なんだから。買い物に付き合ってくれてありがとうって言わなきゃ。」
「「・・・・・・・・・」」
さきねぇらしからぬ助言に凍りつく二人。
「・・・・・・・・・あ。あーヒイロさんにもう一人お姉さんがいたんですかー。初めて知りました。初めまして、スレイ・エンハンスっす!いつもヒイロさんとムラサキさんにお世話になってるものっす!」
「は、初めまして!リムル・リクルです!えっと、ムラサキさんの・・・お姉さん?妹さん?」
「嫌だわ、二人とも。冗談ばっかり。うふふ。」
「「???」」
すれい と りむる は こんらん している !
「説明するのもめんどいから、詳しくはまた後でな。今オデエト中なので。」
「二人ともまたね~。仲良くするのよ~?」
挨拶もそこそこに、二人と別れたのだった。
「・・・結局、ムラサキさんのお姉さんだったの?妹さんだったの?」
「・・・さぁ?」
歩くこと十数分、あまり大きくはないが小奇麗なお店にたどり着く。
「ここ?」
「うん。けっこう評判いいらしいんだ。」
中に入る。
やばい、店内全体からオシャレオーラが漂っており、冒険者スタイルの俺らには場違い感が半端ない。
いきなりチャラ男が出てきて『そのファッションセンスじゃちょっとなーお帰りいただいていいっすかー?』とか言われないだろうか。
お、お金はあるねんで?
「いらっ・・・しゃいませ。どのようなものをお求めですか?」
店員さん(女性)が挨拶の途中で一旦言葉を切り、目を細め俺達姉弟を一瞥するも、すぐにニコニコ笑顔で近寄ってきた。
「えっと、こっちの女性に似合う服を探してまして。買うかどうかわからないんですけど、見るだけでも大丈夫ですか?」
「ええ、それはもう。有名な鈍器姉弟に来店していただくなんて光栄ですわ。」
「・・・なぜ、鈍器姉弟だと?」
もしやこいつ、エスパーか!?(こんな感じで頭に伝わっちゃうのか!?)
「男女ペアで、黒髪の冒険者。女性の方はとても美しく、男性の方はとても礼儀正しいとお聞きしておりますから。」
店員さんはニコッと笑う。
黒髪の冒険者・・・そういや黒茶っぽいのはいても、俺らみたいな真っ黒な髪はほとんど見かけないな。
こういうところでも目立つのか。いまさらだけど。
「何点かお姉さまにお似合いのものを見繕いましょうか?」
「せっかくですけど、けっこうです。弟に選んでもらいますから。」
「そうですか。出すぎた申し出でした。」
「いいえ、ありがとうございます。」
普段なら『ヒロとデート中なんだから邪魔すんじゃねー張っ倒すぞ』くらいは言うが、さすが安定の年上のお姉さんモードだな。
「さて、というわけで、ヒロ。選んで?」
「ん~、俺のセンスに期待しないでほしいんだがな~。」
と言いつつも、俺の中の全弟力を解放して服を探す。
色使いもきれいでかわいい服が多いけど、いまいちピンとこないな。
「奥にもありますよ?ただ、奥の部屋の物は高名な職人が作った一点ものや、職人が亡くなってもう手に入らない物ばかりですので、少々お値段は張りますけど。」
「ん~・・・一応見せてもらえます?」
店員のお姉さんに奥の部屋へ案内される。
なるほど、変わった物が多い。高価らしいので、手を触れないように流し見していく。
すると。
「・・・!? ギャァァァァァァァァ!!」
「「!?」」
俺の絶叫に、店員さんとさきねぇが急行する。
「ど、どうしました!?」「ヒロ、大丈夫!?」
「・・・・・・・・・これ、ください。」
「・・・は?」
「これください。いくらですか?」
俺が一着の服を指差す。
そこには。
「着物!?」
さきねぇが驚く。
そりゃそうだ。異世界にも関わらず、薄い桜色と朱色の美しい着物が置いてあったんだから。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
着物に関してはサクラ大戦のサクラさんの格好そのままな感じです。
私はファッションに関してセンスもなければ語彙もないので、わからない人はグーグル先生に聞いてみよう!




