第百三十七姉「こら、ヒーロ。ジロジロ見ないの!・・・えっち。」
投稿が遅くなるかも……か~ら~の~普通に投稿。書けてよかった。
ちょっと特殊な要素も入ってますが、概ね章題のとおりで全四話構成です。
これでブクマが激減したとしても後悔はありません。
かかってこい!
「あ、また勝った。」
「「・・・・・・」」
夕食も終わり、いつものように三人でポーカーをしていた。
「・・・どんな魔法を開発したんだヒイロ。」
「え!?いや、何もしてませんよ。数年に一度くらいの割合でこんなことがあるんです。不思議なことに。」
現在9連勝中である。
しかも、全てストレートorフラッシュorフルハウス。
ノエルさんが疑う気持ちもわかる。
しかし、ほんとにマグレなのでどうもできない。
「まさか今日来るとはね。しくったわ。」
さきねぇはそれを知っているため、苦々しい顔をしている。
それもそのはず、今日は勝者が敗者に何か一つ命令できるというルールでやっているのだ。
「はい、またフルハウス。」
「・・・フラッシュ。」「・・・ワンペア。ダメだ、勝てん!」
「よーし、久しぶりに俺の勝ちやー!」
さて、何をお願いしようかしら。
「ん~・・・あ、じゃあさきねぇ。明日一日『年上のお姉さんモード』で過ごしてみて。」
「ん?まぁいいけど。」
「トシウエノオネエサンモード?」
「ええ、さきねぇの変種です。ノエルさんも一回だけ見たことあると思いますけど、びっくりしますよ。」(第六十二姉参照)
さきねぇは『通常モード』『デストロイモード』『ヤンデレモード』といくつかのモードを持っているが、その中でも『年上のお姉さんモード』はなかなか見られないレアなモードなのだ。
本日はこれでお開きになり、片づけをしてからベッドに入る。
「さきねぇ、おやすみ。」
「ヒロもおやすみ。」
そして よが あけた !
ゆさゆさと揺すられる。
「ヒロ、朝よ~。今ご飯作ってるから、すぐに起きてね?」
朝っぱらからさきねぇの優しい声がする。
・・・夢だな。さきねぇが俺より先に起きてるはずがない。
先に起きてたとしても俺が起きるまで意地でも起きない、そんな女だ。
寝よう。
寝返りをうち、態度で『NO!』を突きつけるも、また声をかけられる。
「もう、仕方ないわねぇ・・・ちゅ。」
キスされた。
俺の中のハイパーダッシュモーターが高速回転し、急速に目が覚める。
「ふふ、おはよう。顔洗ったらリビングで待っててね。」
笑顔のさきねぇはそれだけ告げると部屋を出て行く。
・・・ああ、そっか。今日一日年上のお姉さんモードだった。
それなら納得。
納得できたところで顔を洗い、リビングに向かう。
そこにはそわそわとキョドりながらイスに座るノエルさんの姿があった。
「おはようございますノエルさん。」
「!? おお、やっと起きてきたかヒイロ!聞いてくれ、ムラサキがおかしいんだ!病気かもしれない!
友人に凄腕の治療術士がいる。そいつに見てもらおう!イナルファ王国で王族付きの宮廷魔法使いをやっているが何も問題はない。もし時間がとれないとかいったら拉致するか、最悪、イナルファ王国を陥とす。」
「いや、勝手に他国に侵攻しないでくださいよ。落ち着いてください。あれが年上のお姉さんモード時のさきねぇです。」
「そ、そうなのか・・・?」
話題の人物は家庭科の授業のようにエプロンと頭巾をし、鼻唄を歌いながら鍋の味見をしている。
「・・・かわいいな。さすがさきねぇかわいい。」
普段なら弟の姉褒めを地獄姉耳で聞き取り、すぐにでもこちらに突撃してくるところだが、こちらを振り向きニコッと笑い、また料理に戻る。
俺はグッ!と力強く拳を握る。
そして大人しくイスに座り待つこと数分。
テーブルの上に香ばしい匂いのする料理が並べられる。
「はい、どうぞ召し上がれ。」
「いただきます!」「い、いただきます。」
さっそく料理に手をつける。
海鮮風スパゲティだ。朝からスパもどうかと思うが、意外にあっさりとしていてスルスル入る。
「うまっ!このスパゲティうま!さすが紫お姉ちゃん!絶品です!」
「ふふ、よかった。おかわりもあるからね?」
ノエルさんも最初は不審な感じで見ていたが、気合を入れてスパゲティを口に入れる。
すると、目がクワッ!と開かれる。
ふふふ。あまりのおいしさに、さすがの『破軍炎剣』もびびったようだな。
「味のほうはどうですか、ノエルさん?」
「ブフォ!!」
さきねぇから『ノエルさん』呼ばわりされたノエルさんがスパゲティを盛大に吹き出す。
もったいない。
「あら、大丈夫ですか?ゆっくり召し上がってくださいね?」
「ゲホッ、ゲホッ・・・ありがとう。」
ノエルさんの目が恐怖に染まっている。
そんなに変かな?
「あ、ヒロ、口にソースがついてる。ちょっと待ってて。」ペロッ
「ぉおぅ!」
「えへへ。」
なんという隙のなさ!怖いお人やでぇ。
しかも、天然ではなく完全に計算されつくしているところが更に恐ろしい。
朝食が終わるとさきねぇが誰に何も言われずに洗い物を始める。
「さきねぇ、洗い物くらい俺やるよ~?」
「ふふふ、座ってゆっくりしてていいわよ。」
「そう?じゃあお願いしようかな。ありがとう。」
「どういたしまして。あ、洗い物終わったら街まで買い物に付き合ってもらおうかしら?」
「おっけー。」
鼻歌交じりでお皿を洗うさきねぇを後ろからじっと眺める。
普段の家事は俺とノエルさんの分担作業なので、食後に何もしないでだらだらしてるのは久しぶりだ。
「ム、ムラサキ?私も手伝おうか?」
「ふふ、ノエルさんも今日はゆっくりしててください。今日くらいは私が家事やりますから。」
「・・・ぉ、おう。」
そう返事をしつつも、服の中に手をつっこみ体を掻きはじめるノエルさん。
あーわかるわかる。慣れない人は体がムズムズしちゃうんだよね。
「さて、洗い物も終わったし、掃除もしちゃいましょうか。」
「俺も手伝うよ。」「わ、私もだ!」
「じゃあお願いしちゃおうかしら。迅速かつ丁寧に仕上げましょう。」
「うっす!」「・・・・・・あ、はい。」
さきねぇの口から『丁寧』なんて言葉が出たことが衝撃だったらしく、ノエルさんの返事がやや遅れる。
「高いところの拭き掃除はヒロに、空いている部屋の掃除はノエルさんにお願いするわね。他は私が担当します。終わった人はヘルプに入る感じで。それでは始めましょうか。」
その言葉に各自動き始める。
掃除機なんてものはないので箒で掃くかモップみたいなやつで拭くかの二択だが、ここは地球のお掃除知識を使う絶好のチャンスだ!
というわけでお酢を使ってガラスを拭いたり、お米の研ぎ汁で床を磨いてピカピカにしたらノエルさんはビックリしていた。ニヤリ!
二時間ほど経過し、家の中は光り輝くような美しさを取り戻していた。
「す、すごいな!見違えるようだ!これもカガクというやつか?」
「化学というより生活の知恵ですかね?」
「これが日本の実力です!」
えっへんと胸を張るさきねぇ。ついじーっと見てしまう。
「こら、ヒーロ。ジロジロ見ないの!・・・えっち。」
「えへへ、ごめんね。」
怒られちゃった♪
『えっち。』て!『えっち。』て!しかもちょっと恥ずかしそうに!
かわいすぎるやろー!
「さて、と。ちょっと休んだら街まで一緒にきてくれる?久しぶりに服でも買いたいなーって。」
「喜んで!」
「・・・選んでくれる?」
「当然。」
「こ、このオーラはなんだ?結界か?結界なのか!?」
俺とさきねぇのあまりのラブラブオーラに、彼氏いない暦168年のノエルさんは聖水をかけられた吸血鬼のように苦しんでいた。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
というわけで、ヒロくんと(いろんな意味で)きれいなムラサキさんのデート開始です。
ちなみに、ポーカーの話は作者の実話です。『ストレートorフラッシュorフルハウスのみで10連勝』を人生で三回やったことがあります。
それがどうしたって話ですが。
 




