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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第十六章 空は晴天、行楽日和!そうだ、ダンジョンにいこう!編
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第百三十五姉「この演出はあれね。『そろそろボスですよー回復してくださいねー』っていう親切設計ね!」

感想いただきました。ありがとうございます。

小学生の時に某館ゲーで魔道クレーンを見て爆笑した記憶があったので、つい使ってしまいました。

「ちっちっちっ。甘いわね、ヒロ。私は戦うのが好きなんじゃないわ・・・勝つのが好きなのよ!」

「実にムラサキらしいな。」


 そうして、階段を下りていくのだった。




 ~最下層(3階層)~


「おお、すげー暗い!」

「いよいよダンジョン!って感じしてきたわね!最下層だけど!」

「じゃあこれも渡しておこう・・・じゃーん!『小光石ライト』ー!」


 さきねぇとノエルさんにお手製のライトを渡す。


「ここのスイッチを押すと先端のふたが開いて前方に光がいくから。使い捨て前提で作ってるから、持ってるのが邪魔になったら捨てちゃっていいから。」

「ほんとに器用だなヒイロは。これを量産したら普通に売れると思うぞ。帰ったら私の分も作ってもらっていいか?素材は渡すから。」

「喜んで。」

「で、これはおっきくなるほう?ちっちゃくなるほう?」

「残念、普通の懐中電灯です。」


 これで前方は光台車、周囲は光たすき、後方はライトで照らせば問題ないな。

 俺たちは探索を開始した。




「・・・変ね?」

「・・・やっぱ思った?」


 進むこと十数分。

 曲がり角はあっても、分岐点がなく一本道が続いてる。

 そして不思議なことに、今のところ魔物と遭遇していない。


「ボス部屋が近いとこうなのかしら。」

「それでも魔物くらいいてもおかしくないと思うんだけど。」

「そうよねぇ。おばけがでてこないお化け屋敷みたいなものだもんね?」


 ダンジョン。ダンジョンだからここ。

 ふむ、なにかあるのか・・・?と台車から手を離すと、カラカラと前へ進んでいく。

 あれ。


「もしかして、地面傾いてる?」

「ヒイロも気付いたか。少しずつ下っているぞ。」

「もしかして、幻の4階層があるんじゃないの!?」


 ないない、と言いたい所だが、さきねぇがいるからな・・・

 何が起こっても不思議じゃない。

 次の曲がり角を曲がる。

 すると。


 ボッボッボッボッ!


 急に通路横に設置されていたたいまつの明かりが灯り、道を照らし出した。


「この演出はあれね。『そろそろボスですよー回復してくださいねー』っていう親切設計ね!」

「一本じっくり!気を引き締めていこう!」

「さすが千葉県の仙道と呼ばれる男。動じないわね。」

「まぁ俺バスケくっそヘタクソだけどね。」


 明るくなった道を進んでいく。


「しっかし長いな。どこまで続くんだこの道・・・ってさきねぇ?」

「長い下りの一本道・・・ダンジョン・・・このシチュエーションはまさか・・・」


 その時、どこかでゴォォォン!と大きな音が。

 そして。


 ゴロゴロゴロゴロ


 後ろを振り向くと、予想通りの展開が。


「岩きたぁぁぁぁぁ!」

「ひゃっはー!やっぱこれよね!たんたたんたーん、たんたたーん!」

「歌ってる場合か!走れ!」


 全力で走り出す俺達。


「ど、どうする!?」

「だーいじょうぶよ。こういう時は絶対横穴みたいのがあって、そこに飛び込めば生還できるから!きっと走ってる最中に『→+B!』みたいなコマンドが「でねぇよ!」


 やばい、そんなことを言ってる間にも岩が!

 と思い振り返ったら、まだ遠くにある岩。


「・・・なんか、岩、遅くね?」

「まぁ初心者向けだし、こんなもんじゃない?」


 一気に緊張感が失われてしまった。

 そうだよね、そんな必殺トラップあったらE級冒険者じゃ死んじゃうもんね。

 適当な速度で少し走ると、行き止まりの横に扉が。


「あそこにはいる感じね。」

「だね。」


 扉を押す。

 が、開かない。


「え?」

「ん?どうしたの?」

「え、あれ、おかしいな。」


 扉は押しても引いても全く動かない。


「ヒロ、ひっぱりすぎ。巻いて巻いて。」

「ちが、開かないんだよ!」


 グググッと思いっきり押すが、びくともしない。

 その間にも、岩はゆっくりとこちらに転がってきている!


「・・・仕方ない。たかが石ころ一つ、この私が押し出してやる!」

「・・・! ばかなことはやめろ!」

「やってみなければわからん!」

「正気か!?」

「ヒロほど急ぎすぎもしなければ、異世界チートに絶望もしちゃいない!」

「岩の落下は始まっているんだぞ!」

「≪絶対姉姫シスタープリンセス≫は伊達じゃない!」

「・・・≪岩石牢ロックプリズン≫」


 ガシャァァァン!


 ノエルさんの魔法で、岩は完全に動きを止めた。


「・・・え、なんで二人して不満そうな顔なんだ?」

「「いえ、なんでも。」」


 もうちょっと、せめて『ノエル一家がだめになるかならないかなんだ!やってみる価値はありますぜ!?』まではやりたかったかなって。


「・・・あ、ヒロ。この扉横スライドよ。」

「なんでここだけスライド式を採用してんだよ!おかしいだろ!?」


 押しても引いてもびくともしなかった扉は、普通に横にスライドしました。

 クソダンジョンめ・・・



 扉をくぐり先に進むと、いかにも『この先、ボス!』といいたげな大きな門が。


「ついにきたわね。」

「そーっと開けよう。そーっと。」

「おけ。」


 さきねぇは少しだけ門を開けると、すぐに門を閉じた。

 かと思ったら、両手で顔を覆いその場にしゃがみこむ。


「ど、どうしたの!?」

「・・・・・・」


 さきねぇは無言で門の向こうを指差す。

 さきねぇをここまで脅かすなんて、門の向こうにいったい何が・・・

 ごくりとつばを飲み込み、決死の覚悟で門をちょこっと開けると、最初に感じたのは異臭だった。

 顔をしかめながら門の中を覗く。

 そこには、大量のヘドロンがひしめいていた。

 一際大きいヘドロンもいる。あれがボスか。

 あ、だめだ、くさっ!

 俺は門を閉じるとさきねぇと同じポーズをとった。


「もうやだ。」

「あそこに突っ込んだら、におい取れると思う?」

「いやー厳しいな。においも汚れもついちゃうでしょ。」


 せっかくノエルさんにもらった【飛龍のローブ】が【飛龍のローブ(臭)】になってしまう。

 どうしたものか。


「ど、どうしたんだ二人とも。」

「・・・中に、大量のヘドロンが。」

「あー・・・そういう時もあるさ。・・・って本当に多いな!」


 中を覗いたノエルさんもびっくりしている。


「ここはエルエルに範囲魔法で焼き尽くしてもらうのが正解だと思うわ!」

「こらムラサキ。私は付き添いできただけだといっただろう。さっきの岩を止めたので手助け終わり!自分たちでなんとかしなさい!」


 ノエルさんは腰に手をやりプンプンアピールだ。


「・・・今回だけ、だめですか?」

「くっ・・・・・・・・・今回だけだからな!」

「ちょっと、なんでエルエルはヒロには甘いのよ!ずるくない!?おーい、二審と三審もこっちきてー!」


 さきねぇが後方に向かって手招きをする。

 誰だよ二審と三審。


「ムラサキはいつもワガママばかり言ってるから『また始まったよ』ですむんだが、ヒイロの場合は、なんかこう、ほら、普段ワガママ言わないだろう?・・・たまにはいいじゃないか!!」


 そしてノエルさん、なぜか逆ギレ。


「まぁまぁさきねぇ。せっかくノエルさんがヘドロン退治してくれるっていうんだから。ありがとうございますでしょ?」

「これだから女親は困るし。男の子ばっかかわいがるし。」

「う、うるさいな!さっさと済ませるぞ!」


 そういうとノエルさんは炎の塊を出現させる。


「≪火球ファイアーボール≫ですか?」

「いや、これは私の固有魔法の≪爆裂乱舞ブラストボム≫だ。」


 ノエルさんは素早く門を開けると、≪爆裂乱舞≫を中に放り込む。

 そして門を閉める。


「少し離れるぞ。」

「はい。」「うい。」


 門から少し離れ、待つこと数十秒。


 ドガァァァァァァァァァン!


「「!?」」


 ダンジョンがびりびり震えるほどの爆発が起きた。


「さぁいこうか。」


 ノエルさんの後ろについて、門を抜ける。

 中は異常な高温になっており、真っ黒に黒ずんでいた。

 もちろん生きている生物は存在しない。


「≪爆裂乱舞≫は時間差で破裂して周囲を炎上させる魔法でな。対待ち伏せ用として昔作ったんだ。」

「まさか時限爆弾とは・・・」「ボンバーマンみたいな女ね。」


【飛龍のローブ】があるからまだ熱を遮断できてるが、顔とかめっちゃ熱い。

 早くクリアしようよ。


「ふむ、本来はボスが何かアイテムを持ってるはずなんだが・・・焼けてしまったらしいな!はっはっは!」


 なんという男らしさ。かっこいい!


「じゃあこれでクリアね。なかなか楽しかったわね!」

「一時間ちょいのアトラクションと考えればいい出来だったね。富士急とかにあってもいいくらい。」

「・・・あーでもフリーパスないと並ぶのか。めんどくせ。まぁダンジョンの雰囲気も楽しめたし、戻りましょうか!」

「そうだね。・・・で、どうやって戻るの?」

「エルエル、地上に戻る脱出口はどこにあんの?」

「は?そんなものはないが。」

「「え。」」


 ノエルさんの『何言ってるの?』みたいな顔に衝撃を受ける俺たち姉弟。


「え、じゃあダンジョン脱出魔法は!?」

「・・・そんな便利なものあるわけないだろう。」

「じゃ、じゃあ地上に戻るワープゾーンとかは!?」

「わーぷぞーんってなんだ?歩いて戻るに決まってるだろう。」


 嘘だろ・・・ファンタジー世界なのに、なんでこういうところは超現実的なんだよ・・・


「じゃあ3階層っていっても、歩いて戻らなきゃいけないなら実質5階層ってことですか?」

「そういうことだ。上級は5階層だから全9階層ということだな。ちなみに魔境にあるダンジョンは平気で50階層とか100階層とかあるぞ。」

「地獄すぎる・・・」

「ボ、ボス倒したから魔物がいなくなったりとか「しない。ほら、キリキリ歩け!」


 ノエルさんに急かされながら、泣く泣く来た道を戻る俺達だった。




 こうして、俺たちのダンジョンとの初遭遇は終わった。

 しかし、この後、上級ダンジョンで世にも恐ろしい出来事に巻き込まれるなんて。

 この時の私たちは、想像もしていなかったのです。

 次回へ続かない!

ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


これにてダンジョン回は終わりです。

予定では上級ダンジョンまで書く予定だったのですが、諸事情によりカットしました。

(言えない……中級ダンジョンで書きたいものは全部書いて満足してしまったなんて。)

次回に番外編をアップ後、更新間隔がちょっと空くかもしれません。

難産なう。

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