第百三十三姉「わっかんないわよー?ワンチャンあるかもよワンチャン!」
久しぶりに評価いただきました。ありがとうございます。
某ゲームで久々に良姉を見つけてホクホクです!
最近はなかなか良い姉キャラがいなくて困ったもんです。
「いやーけっこう痛いわね!そしてタライじゃないのが残念ね!」
「満足した?」
「満足!」
「そりゃよかった。」
「なんなんだお前たちは・・・」
すいません、日本人なもんで。
狡猾(?)なトラップを切り抜け先に進んでいと、今度は足元付近にロープが張ってあった。
「これ、暗かったら効果あるかもしれんけど、こんなに明るかったら意味なくね?」
「頭の悪いダンジョンねー。私がダンジョンマスターやったほうが全然いいと思うわ?」
「さきねぇ主催のダンジョンとか絶対入りたくないわ。ワンフロア全ての床に魔物召還スイッチとかありそう。」
「おにちく仕様(笑)」
「あ、ヒイロ。」
「? なんです?」
ロープをまたいで先に進もうとしたらノエルさんに呼び止められる。
「よく見てろ?」
「?」
さきねぇがロープをまたぐ。
すると。
「ぎゃぁぁぁ!」ドガッ!
ロープをまたいだ先の床が抜けた。
ロープトラップとみせかけて、落とし穴トラップも併設されていたようだ。
穴自体は体の半分ほどの深さのため落ちてもたいしたダメージはなさそうだが、ロープをまたいだ瞬間に落ちたため、前のめりになって顔面を強打したさきねぇの姿があった。
「ぷ、こ、このように、ぷぷ、二段構えになってる場合も、ぷ、あるから、ぷぷぷぷ、き、きをつけるように・・・ぷぷぷぷぷぷぷぷ。」
「くくくくく、は、はい、了解しました・・・くくく・・・ぶわっはっはっはっはっはっは!」
「ヒ、ヒイロ、笑うな・・・ぷぷぷ・・・わーっはっはっはっはっは!」
我慢できませんでした。
「ひーひー!あ、『頭悪いダンジョン』とかいっときながらソッコーひっかかってる!ははははは!」
「しかし見事に落ちたものだなムラサキ!あはははははは!」
当のさきねぇは無言で起き上がると。
「くらえぃ!」
落ちている小石を拾って投げつけてきた。
「いたっ!ごめんわるかったって!いたい!地味に痛い!」
「ふはははは!当たらん!そんなもの当たらんよ!」
マ○ンガーZとキュベ○イくらい回避率に差がありました。
さきねぇをなんとか宥めすかし、さらに先に進むこと数分。
俺たちの前にドアが現れた。
「・・・さて、誰が開ける?」
「ここはじゃんけんにしましょ。」
「・・・それでもいいけどさー。じゃんけん二十八連勝したことあるさきねぇとじゃんけん勝負って、つまり俺の負けがほぼ確定してるよね。」
「わっかんないわよー?ワンチャンあるかもよワンチャン!」
うちのお姉さんは運要素がからむものだと異常に強いからな。
ノエルさんをちらっと見る。
「ん?まぁこういう時は探索者に任せるのが一番だが・・・ムラサキでは不安すぎるからヒイロが適任じゃないか?」
「まぁそうですよね。しゃーない、いきますか。」
「敵陣に突貫するヒイロ少佐に、敬礼!」
「おい。勝手に二階級特進させるな。不吉すぎるからやめれ。」
とりあえず、扉に耳を当てる。
・・・室内から音は聞こえない。
扉のノブを音を立てないようにゆっくり回す。
鍵はかかっていないようだ。
ゴクリ、と喉が鳴る。
「オラァ!やんのかおら≪水盾≫ぉ!」
勢いよく扉を開けると同時に、防御魔法を発動させる。
来るならきやがれ!返り討ちにしてやんよ!矢でも鉄砲でももってこい!
そんな俺の決意とは裏腹に、扉の向こうは六畳程度の小部屋だった。
「・・・ふむ。こちらアルファよりベータ。敵影なし。オーバー。」
「ベータ、了解。」
「・・・そのやり取りに何の意味があるんだ?」
「「雰囲気 (です)(よ)。」」
「うん、まぁ楽しそうで何よりだ。」
俺たちはすでにダンジョンを潜りに来た感はゼロになっており、気分は体感型テーマパークだ。
「おー、そしてどっからどう見ても『宝箱!』って感じの宝箱があるわね。」
「ミミックかもしれないよ?パーティー全滅の危機があるから慎重にね。」
「・・・先手必勝ぉぉぉぉぉ!」
さきねぇは神速でミカエルくんを取り出し、宝箱に向かい思いっきりスイングをかました!
ガシャーン!
パリン!
壁に叩きつけられた宝箱は壊れもせずに地面に転がった。
そして、さっきの『パリン!』は・・・
さきねぇを見ると目を見開き、汗をタラーッと流していた。
「・・・今の音、聞こえた?」
「な、なんのことかしら?私にはさっぱりわからないわ?」
俺は宝箱に近寄り、中を開ける。
そこには。
「あーあーあーあー、ポーションの瓶が割れて中身が全部こぼれてるよー。」
「き、きっと最初からこぼれてたんじゃないかしら?不良品じゃない?無印不良品よきっと!ううん、絶対そう!」
「・・・でもさっき、パリン!て「そんなのわかんないじゃない!あ!シュレディンガーの猫よ!あいつの仕業だわ!くっそー、生意気な猫めー!」
そんな不毛な会話を続けていると、ノエルさんから助け舟が。
「ははは。まぁムラサキがとった方法も、ないわけではないからな。」
「えぇ!?あるんですか!?」「ほらごらんなさい!」
「魔境なんかではミミックも多いから、宝箱を見つけたらとりあえず攻撃、というのも手ではあるんだ。武具だったら壊れないしね。ポーションなんかはご覧のとおりだが。」
「あーやっぱねー!ほら、私って上級者志向だじゃない?無意識にプロ冒険者の真似しちゃったのよ!しゃーなしね!ドヤァ!」
あたふたと困った顔をしていたさきねぇが、急にドヤ顔になる。
まるで成長していない・・・
「ノエルさん、あんまりそういうこと言うと調子にのるんで抑えてもらえると。」
「ははははは!まぁ最良の手はヒイロが≪水盾≫を張ったまま宝箱を開ければよかったな。」
「お!じゃあ次からは宝箱開け係はヒロにけってーい!おめでとーぅ!」
「やっほー・・・ちょううれしーい・・・」
ミミック係にきまったよー。わーい。
「ここはこんなもんかしらね。戻りましょうか。」
「せやな。」
来た道を戻る。
もちろん罠は作動させずに、だ。
安心安全がモットーです!
「さて、ヒロの作ったぶ、氷ねずみの前まで戻ってきたわね。」
「今ぶたって言おうとしなかった?ねずみって言ってるよね?」
「わかってる、わかってるわ。これはねずみ。誰がなんと言おうとねずみ。OK?」
「ん。さて、じゃあどっちにいきますかね。」
十字路の右はいったから、左にいくかまっすぐ行くか。
「左はなんか魔物がいるだけで宝箱とかはない匂いがするのよねー。」
「そんな複雑な匂いがしてるのか・・・」
ノエルさんも若干ひいてる。
歴戦の猛者であるノエルさんすらひかせる、俺自慢の姉さんです。
「じゃあまっすぐいこうか。」
「そうね、まっすぐ進みましょう!光陰矢の如しっていうしね!」
「うーん、微妙な使い方だなー。」
とりあえず先に進むこと十数分。
地下へ続く階段が現れた。
ちなみにその間に魔物と何度も戦闘しているのだが、全て瞬殺だったので割愛する。
「これで1階層クリアね!」
「意外というか順当というか、余裕だったね。」
「二人とも、1階層を突破したくらいで浮かれてはいけないぞ?今までは前哨戦、ここからが本番だ!」
「うっす!」「あいよ~。」
光台車がそれなりに重いので、いったん魔法袋にいれる。
「そういや、魔物は階段使わないの?」
「ああ、理屈はわからないが、ダンジョンで発生する魔物は階段を使わないんだ。」
「なんでですかね?ナワバリ的な感じなんでしょうか?」
「色々仮説はあるみたいだが、どれが正しいかは不明だな。というより冒険者にとっては『なぜ魔物は階段を使わないのか』という疑問より『魔物は階段を使わない』という事実のほうが重要だしな。」
「まぁわかったところで『それがどうした』って気もするしねー?」
俺たちはそんな会話をしながら地下への階段を下りていった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
今回のムラサキさんの「シュレディンガーの猫よ!あいつの仕業だわ!くっそー、生意気な猫めー!」という台詞がお気に入りです。
書いたの自分ですけど。




