第百三十二姉「ハンダゴテとかかっこいいわよね!」
読者さんから感想いただきました。ありがとうございます。
ノエルさん(色んな意味で)最強説浮上。
頑張れムラサキお姉ちゃん!負けるなムラサキお姉ちゃん!
原色の絵の具をぶちまけたのかと思うくらい顔が赤いノエルさん。
きっと『登録用紙に仲良しノエル一家って書こうとして、でも恥ずかしくて途中でやめて、でもやっぱり書きたくて・・・』を何度も繰り返した結果の赤さなんだろうな。
この心に芽生えた暖かい感覚・・・これが、『萌え』、か・・・
「さ、さすが『破軍炎剣』・・・すばらしい切れ味ですね。」
「なぜそこで私の二つ名が出るんだ!?」
やばい、鼻血でそう。
鼻をつまんで下を向く俺。
さきねぇを横目で見ると、上を向きながら鼻を抑えていた。
・・・『弟以外どうでもいい』という信条を貫くさきねぇですら萌えさせるとは。
ノエル・エルメリア、恐るべし!
「ど、どうした?なぜ二人して鼻を抑えて天地を仰いでいる?」
「「ナンデモアリマセン。」」
俺達姉弟が『状態異常・萌え』にかかってしまったため、少し休憩してからダンジョンに潜ることになった。
「貧血か?体調管理は冒険者の基本だぞ?」
「はい、すいません。(あんたのせいだよ)」「ごめんね?(あんたのせいよ)」
~10分後~
「よし、じゃあ気を取り直して、ダンジョンに潜りましょう!各々方、存分に武勲を立てられぃ!」
「おぉー!」「おー!」
三人で洞窟の中に入る。
「あれ?そんな暗くないわね?」
「1階層だからな。2階層はここより暗いし、最下層は明りがないとどうしようもないぞ。」
「なるほど。では『最初から真っ暗』という想定でいきましょう。」
ごそごそ。
「お、ヒロの5次元ポケットから何か秘密道具が出るのね!?」
「秘密道具より、5次元ポケットのほうがよっぽどすげーと思うのは俺だけ?」
そして俺が魔法袋から取り出したのは。
「じゃじゃーん!【中光石台車】と【小光石たすき】ー!」
説明しよう!!
【中光石台車】とは、アルゴスさん協力の下、俺が自作した特別製台車に中光石を搭載したものだ!中光石そのままだと全方位に光がいき眩しい為、ライトのように前方にのみ光がいくように工夫してあるぞ!
【小光石たすき】とは、丈夫な布で作ったたすきにいくつもの小光石を結んだものだ!そこまで眩しくないけど周囲10数メートルは照らせるぞ!
本当は【中光石ヘルメット】を作って洞窟探検隊みたいな感じにする予定だったのだが、中光石、意外に
でかくて重かったため、頭に載せたら倒れそうだったので断念した。
「これを使えば暗闇対策は完璧!はい、さきねぇ。ノエルさんもどうぞ。」
「・・・ヒロの作るやつってさ。性能はいいんだけど、その、なんかアレよね。うん、アレ。」
「ほっとけ。」
さきねぇはしぶしぶ、ノエルさんは興味深そうにたすきを身につける。
「ふむ、明るいが眩しくないレベルを保っている。ヒイロは器用だな。魔法使いだけでなく探索者としても活躍できそうだ。」
「プラモとかデイリーみたいな工作って好きなんですよね。」
「ハンダゴテとかかっこいいわよね!」
「プラモやデイリーにハンダゴテは使わねぇよ・・・かっこいいのは認めるが。」
そんな感じで(台車を押しながら)進んで行く。
ガラガラガラガラ
「誰もいないわね?」
「まぁ前のチームは30分前に入っているからな。」
「・・・む。前方に敵影あり!数、3!」
「「「ごぶごぶごぶごぶ!」」」
ごぶごぶ言ってるこいつらは、当然のようにゴブリンである。
小柄で非力ながらも武装したり連携を取る知能があり、複数でこられるとそれなりに手ごわいE級魔物だ。
「≪水弾≫×3!」
「「「ごぶぅ!」」」
そして瞬殺。キラキラと輝いて消える。
まぁ普通のE級冒険者には手ごわいのであって、10匹いようが20匹いようが俺やさきねぇの敵ではないっす。
「暇ねー。」「そうなー。」
そして何事もなかったかのように進行を再開するのであった。
「お、十字路ね。」
「直進か、左右どっちかに曲がるか・・・お姉さまにお任せです。」
「ふむ。くんくん、くんくん・・・こっちね!」
「待て。ムラサキ、今何で決めた。」
「え?匂い。」
「魔物のか?」
「え、お宝の。」
「お前はいったいどんな鼻をしてるんだ・・・。」
S級冒険者のノエルさんすら呆れるほどの嗅覚。さすがお姉さまやで。
右に曲がる為、ナイフで壁に進行方向を刻む。
「あ、ヒイロ!それはダメだ!」
「え、ダメなんですか?運営さんに『ダンジョンに傷をつけるな!』とか怒られちゃう感じですか!?」
どうしよう。罰金だろうか。出禁にならなければいいが・・・
「いや、ダンジョンは生きているから、傷をつけても短時間で再生してしまう。後でここに戻ってきても傷はなくなっているよ。」
「え!?じゃあオートマッピング機能もないのにどうやって進むんですか?」
「紙に自分で地図を書くか、魔法でなにかオブジェを作るかだな。こんな風に。」
そういうとノエルさんは赤ちゃんくらいの大きさのモアイ像っぽい土人形を作り出す。
「人によるが、私の場合はこの土人形が顔を向けている方向が出口だ。」
「なるほど。では俺も。」
何を作ろうかな・・・十二支でいいか。
俺は氷でネズミの彫刻を作り十字路に置く。
「おお、みごt、見事な・・・ぶた?だな。」
「ねずみです。」
「!?」「ぶっ!」
衝撃を受けているノエルさんと口を抑えて笑いをこらえているさきねぇ。
うっせ。美的センスないって前から言ってるだろうが。
「う、うむ。見事な・・・氷魔法だな!さすがヒイロだ!」
「ありがとうございます。さぁ、先に進みましょう!」
「そうね!・・・ぷ。」
「ギロリ。」
「ぴぴぴぴっぴっぴっぴぴーぴーぴぴぴぴぴぴぴぴーぴー♪」
俺がにらみを効かせると明後日の方向を向き口笛を吹き始めるさきねぇ。
まったくもう。
そのまま通路を進んでいくと、突然さきねぇがピタッと立ち止まる。
「ん?どしたの?」
「なんか嫌な予感がするわ。インディアンウソツカナイ。」
「別に疑ってないけど。」
とりあえず俺が前に出て警戒する。
キョロキョロあたりを見渡していると、違和感のあるものを見つけた。
「あ。床見て。あそこだけ色が違う。」
「お、ほんとだわ。あれは確実にアレね。」
「確実にアレだな。」
あそこを踏むとトラップ発動なんだろう。
ノエルさんも『よくぞ気づいた!』って顔でうんうん頷いている。
「じゃああそこを迂回して先に進もうか。」
「だがあえて踏む!」
「「なんで!?」」
さきねぇが相撲取りの四股みたいなポーズを取って色違いの床を踏み抜く。
すると。
ヒュー・・・ガンッ!
「いてぇ!」
なぜか俺の頭にナベが落ちてきた。地味に痛い。
「・・・なぜ俺。」
「だ、大丈夫かヒイロ!」「ドリフ!?ドリフなのね!?ヒロにおいしいところを持っていかれたわ!」
「まず俺の心配をしようかお姉さま。」
さきねぇがノエルさんに説教されている間に、自分の頭に≪聖杯水≫をぶっかける。
ふぅ、痛みが消えていくぜ。足の小指をタンスの角にぶつけてもすぐに治せるし、回復魔法最高!
「自分で罠を踏むんじゃないムラサキ!さっき自分で『罠があったらスマート棍棒で叩けばいい』って言ってただろうが!」
「それもそうね。」コンコン
「「なんで!?」」
さきねぇがマサムネさんで罠があった床を叩く。
ヒュー・・・
「ヒロ、危ない!」ドンッ!
ガンッ!
「いったぁ!」
俺を突き飛ばし、身代わりになるさきねぇ。
こう書くとイイハナシダナーだが、実際は自分でナベアタックを食らいたかっただけです。
「いやーけっこう痛いわね!そしてタライじゃないのが残念ね!」
「満足した?」
「満足!」
「そりゃよかった。」
「なんなんだお前たちは・・・」
すいません、日本人なもんで。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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