第百三十一姉「い、言うな!言葉に出すな!なんで私が耳打ちしたと思っている!バカなのか貴様は!燃やすぞ!」
なんだかんだでけっこう筆が進んでいるので更新。ベネ!
感想たくさんいただきました。ありがとうございます。
ふぉー!みなぎるパワー!
「それはよ「おかえりんこ!」
「うるせぇよ!しつけぇよ!いわねぇよ!」
なぜそれを言わせたがる・・・小学生か。
「仕方ないわねぇ。それで、なんか有用な情報はゲットできたの?」
「新情報だと『暗いからたいまつを持っていったほうがいい』とか。」
「私たちって大量の光石もってるわよね?」
「「・・・」」
「あ、あと『トラップ発見のために長い棒を持っていったほうがいい』とか!」
「スマート棍棒じゃダメなの?」
「「・・・・・・」」
「あ!鍵!鍵のかかった宝箱を開けるために多少値は張っても鍵を買ったほうがいいって!」
「鍵穴にヒロの魔法水をゲル状に流し込んだあと、氷で固めれば鍵開くんじゃない?最後の鍵みたいに。」
「「・・・・・・・・・」」
すげーニヤニヤしてる。
勝ち誇ったかのようにニヤニヤしてやがる!
「もういい!帰る!俺帰る!」
「あーうそうそ!さすがヒロ、いい情報を持ち帰ったわねーえらいぞー?ほら、いーこいーこ。」
「・・・ノーエールーさーん!」
「すまんヒイロ、今回に限ってはムラサキの意見にケチをつける場所がない。」
・・・別に気にしてないしー?情報大事だしー?お金もったいなくなんてなかったしー?
「あははは、とりあえずダンジョンに潜ってみて何が足りないかを自分で見極めたほうがいい。」
「『考えるより先に体を動かせ』ってことね!」
「うむ、そういうことだ!」
「そして『考えるな、感じろ!』ってやつね!」
「いや、違うだろ。考えろよ。」
そんな会話をしながら道を歩く。
大きな広場に出るとここはダンジョン市場の中央らしく、地図が載っている。
どれどれ。
「ん~・・・あれ?ノエルさん、なんか洞窟マークが三つもありますけど。なんですこれ。」
「ここが栄えている理由がそれだよ。ここには、なんと!ダンジョンが三つもあるんだ!」
「「な、なんだってー!」」
ノエルさんは(ほとんど存在しない)胸を張りドヤ顔を決める。
「・・・勢いで驚いたのはいいんですけど、ダンジョンが三つって珍しいんですか?」
「ああ、こんな近くに三つもダンジョンがある場所なんて大陸に二つしかない。一つはここと、一つは魔境だ。」
「ふーん。で、私たちはどれに入るの?」
「初級ダンジョンと中級ダンジョンと上級ダンジョンあるが、どれに入りたい?」
「初級で!」「上級で!」
・・・何いってんのこの姉。
「さきねぇ?俺ら、冒険者暦一年未満なの、忘れてない?」
「何日か前に見た夢の中では冒険者2年目にしてC級になってたから大丈夫!でかい化け物一撃で倒してたし!」
「いやいやいやいやいや。自分で何いってるか、お願いだから、ちょっとよく考えてみて?」
俺とさきねぇがにらみ合っていると、ノエルさんから声がかかる。
「とりあえず中級でいいと思うぞ?初級は駆け出しE級冒険者がメインだから、お前たちが言ったらむしろ他の新米冒険者たちの迷惑になる。逆に上級はダンジョン未経験者が潜って簡単に戻ってこれるほど甘い作りにはなっていないからな。」
「わかった。中級でいこう。これ以上は譲れないよ俺も。」
「まぁ今回は中級で我慢してあげましょう!」
まぁ中級ならノエルさんもいるし大丈夫だろう。
「ところでエルエル、その難易度の違いは何で判断されるもんなの?」
「基本的には敵の強さだな。次に階層の深さや広さ。あとは罠の多さだったり魔物の出現率だったりで決められる。今から向かうアルゼン中級ダンジョンはE級とF級魔物がいて3階層だな。」
「「浅っ!」」
3階層って・・・つまり3階分しかないってことだろ?
日本でいえばちょっとおっきい個人宅レベルじゃん・・・
「ちなみに初級は2階層で上級は5階層だ。」
「なんかすげーみみっちいダンジョンどもねー。」
「初級なんていったら、慣れたら10分くらいでクリアできると思うぞ。」
「・・・中級終わったらタイムアタックに挑戦しようかしら?」
まぁそんなレベルだったら駆け抜けるだけで終わりそうだな。
もはやダンジョン攻略じゃなくなってるが。
とりあえず三人でアルゼン中級ダンジョンを目指す。
「ここがアルゼン中級ダンジョンの入り口だ。」
「「・・・・・・どこ?」」
その俺たちの目の前には数十人の冒険者が一列にずらーっと並んでいる。
なんぞ。
「えっと、なんなんですかこれ。」
「ああ、ダンジョンに入る冒険者の順番待ちだよ。」
「「順番待ち!?」」
おいおい、じゃああの数十メートル先にある門が入り口?
そしてさっきから列が全く移動してないけど、どんだけ待つのこれ。
「ノエルさん、どういうことっすかこれ。」
「説明を求める!」
列に並ぶのが大嫌いなさきねぇが憤慨している。
そりゃそうだ、すぐにダンジョンに潜れると思ってきたんだもんな・・・
「アルゼン中級ダンジョンは大人気なんだよ。それほど危険ではないがE級にとっては上質な武具なんかが見つかる。そして一番の目玉は稀に見つかるミスリル鉱石だな。年に数回くらいしか発見されないが、もし見つけたら武器に加工しても良し、売ってもよしといいこと尽くめだ。」
「アメリカンドリームなわけね・・・」
「その結果が、この列なわけですか。」
「ああ、昔は入場制限なんかなかったんだが、ミスリルを発見したチームがそれを巡って争い、大変な事件に発展してな。それ以降は30分に一組しか入れないようになったんだ。」
「「30分に一組!?」」
黄金週間のディズニーランドも真っ青ですね。
あ、寝袋持参してる人もけっこういる。そこまでして入りたいんか・・・
「よし、ダンジョンの雰囲気も味わったし、お土産買って帰りましょうか!」
さきねぇ、満面の笑顔。
まぁ気持ちは痛いほどわかるっつーか、正直そこまでしてダンジョン入りたくないしな。
「ふっふっふっふ、これを見ても同じことが言えるかな?」
ノエルさんが不敵な笑みを浮かべて取り出したソレには・・・『アルゼンダンジョンフリーパスチケット』と書かれていた。
「「フリーパスきたぁぁぁぁぁ!!」」
「あーはっはっはっはっは!」
「エルエルさいこー!」「ノエルさんばんざーい!」
「そうだろうそうだろう!もっとだ!もっと褒め称えろ!」
「よっ!大陸一の美少幼女!」「眩しく輝く白薔薇の君!」
「「「わっはっはっはっはっはっは!」」」
こんなサプライズアイテムがあるなんて、さすがノエルおばあちゃんや!
「でも、こんなのいつのまに?」
「ああ、前にガイゼルにめいれ、いや、お願いしておいたんだ。それが昨日届いた手紙の中身さ。」
ガイゼルって確か冒険者ギルドのお偉いさんだよね。俺達を喜ばせる為なら武力も知力も財力も権力もコネも全開ですね!
「これがあればアルゼンダンジョンならどこでも並ばずに入れる。さぁついて来い!」
「「ははぁ!」」
列を横目にズンズン先に進んで行く。
律儀に並んでいる冒険者たちの視線が痛いが、気にしない!
そして最前列の受付の人にフリーパスを見せる。
「これで。」
「!? は、はい!フリーパス入りましたぁ!」
受付さんのその言葉に、並んでいた冒険者たちは『フ、フリーパス!?』『あの幻のアイテムか!』『まさか存在していたとは・・・』とざわめいている。
「あ、あの、それでは登録した名前とチーム名をお知らせください。」
「え。」
ノエルさんが固まる。どうしたんだ?
「あ、いや、そのー・・・言わないとだめか?」
「一応本人確認の為の規則ですので。お願いします。」
「クッ・・・な、名前はノエル・エルメリアで、チーム名は・・・ごにょごにょ。」
顔を赤くしてプルプル震えながら囁くノエルさん。また発作か。
「・・・はい、登録名が『ノエル・エルメリア』様で、チーム名が『仲良しノエル一家』ですね!」
「い、言うな!言葉に出すな!なんで私が耳打ちしたと思っている!バカなのか貴様は!燃やすぞ!」
「ひ、ひぃ!申し訳ありません!」
原色の絵の具をぶちまけたのかと思うくらい顔が赤いノエルさん。
きっと『登録用紙に仲良しノエル一家って書こうとして、でも恥ずかしくて途中でやめて、でもやっぱり書きたくて・・・』を何度も繰り返した結果の赤さなんだろうな。
この心に芽生えた暖かい感覚・・・これが、『萌え』、か・・・
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。




