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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第十五章 これぞファンタジーの王道?ブラザーズミ-ツガール!編
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第百二十八姉 番外編『魔法使い試験とノエルさん』

今回は久しぶりに大半が設定+思いついたけど書くタイミングが掴めなかったネタ放出回です。

なので読まなくても本編にはほとんど関係ない上に、普段より長めです。

よかったらどうぞ。

 いつもどおりのある日の午後、居間でお茶を嗜んでいると、さきねぇが突然立ち上がり言った。


「・・・なんか変わった魔法とかないのかしら。」

「なんか前にも酔っ払ってそんな会話しなかった?」

「そう?まぁいいじゃない。」


 ノエルさんも『またなんか変なこと言い出したな』って顔をしている。


「まぁいいけど。今度はどんなのが欲しいのよ。メテオ的な?」

「いや、10年後の自分になっちゃう的な。」

「魔法ってそっちの魔法!?攻撃とか回復とかのカテゴリーですらないの!?」

「魔法っていったら変身しちゃったり若返ったり成長したりでしょ?」

「剣と魔法のファンタジー異世界でそういうこといっちゃうんだ・・・」

「ほら、一応私も自称魔法少女じゃない?そういうのもあったほうがいいのかなって。」

「あ、その設定まだ続いてたんだ。」


 でもさきねぇの10年後か・・・やばいな。もう色んなものがMAXだろうな。

 例えるなら『七大スーパー宝貝全てをを所持してる妲己』。これだね。

 傾国の美女じゃなくて傾世の美女。やばい。姉がかわいすぎて異世界がやばい。


「どうなのエルエル?ある?」

「肉体年齢の操作か・・・あるかもしれんが、私は聞いたことがないな。」


 168年生きてるノエルさんが知らないなら存在しないんじゃないかっていう。


「エルエルでも知らんのか・・・そういや、エルエルって世界最強クラスっぽく振舞ってるけど、上級魔法使いなんだっけ?最上級じゃなくて。」

「ん?別にそんな振る舞いをしているつもりはないが、まぁ上級だな。」

「ノエルさんでも上級って、最上級はどれだけ化け物なんすか。」

「ん~、試験を受ければ最上級になれるとは思うが・・・気は乗らんな。」

「なんで?最上級ってことはトップでしょ?なったほうがいいじゃない。」


 確かに。大陸の賢者とまで言われているノエルさんが上級じゃなめられたりしないんだろうか。


「ふむ。いい機会だ、そこらへんについて説明しておこうか。まだ教えてなかったな?」

「はい、よろしくお願いします。」

「zzz~」


 さきねぇはソファにコテンと横になると、イビキを掻き出した。寝るのはやっ!

 ノエルさんも慣れたのか、完全にスルーモードだ。


「まず、初級。これはもういいな。」

「はい。」

「では、中級。試験は年に数回実施されるが、これは魔法の熟練度を見る試験だ。」

「と、いいますと?」

「魔法の精度を見るのさ。命中率とか一度にどれだけの魔法を創造できるかとか。最近の傾向からか、威力はそこまで重視されん。」

「へー、じゃあ俺は中級になれますかね?」

「多分慣れると思うぞ?≪水鋭刃アクアチャクラム≫は複数使えているし、ヒイロの、おーとほーみんぐ?だったか?あれは特に素晴らしい。現在の中級魔法使いでも最高峰の技能だ。」

「まぁねまぁね!うちのヒロですからね!・・・zzz」


 さきねぇはそれだけ言うと、また寝息を立て始めた。狸寝入りめ。一尾か。


「が、上位冒険者には通用しないだろうな。」

「なんでよ!」


 さきねぇがガバッと起きる。

 めんどくさいからもうそのまま起きててよ!


「あれは精確すぎるんだよ。一定以上の腕前を持つ者なら、狙ってくる場所がわかれば防ぐことなんて容易い。」

「やっぱりですか。」


 そう、俺の魔法のオートホーミング機能には致命的な弱点がある。

 高速・精確ではあるが真っ直ぐに追いかけるため、盾や柱などの障害物を挟めば簡単に防げるのだ。

 わかりやすく言うとマリオカートの赤甲羅のようなもんだ。バナナガードで簡単に防げてしまう。

 今はまだ通用しているが、さらに冒険者のクラスが上がれば通じない冒険者や魔物も出てくるだろう。


「でも、実は今、その弱点の改良中なんですよ。ある程度完成したら見てもらっていいですか?」

「・・・アレだけでも十分素晴らしい技能なんだがな。ヒイロは実戦派よりも新規魔法の開発者や研究者として名を残しそうだな!」


 嬉しそうなノエルさん。

 でも、『破軍炎剣』の弟子としては強さで名を残したいな~なんて思ってるのはナイショだ。


「さて、話がそれたな。中級はそんな感じだ。次に上級なんだが、試験は年に一回のみ。さらにこれは基本的に上位魔法を使えることが前提になる。」

「上位っていうと、光とか氷とかですよね?・・・あれ?土の上位の闇って大陸でもほとんど使い手がいないんじゃないでしたっけ?」

「それで『基本的には』だ。上位の試験はエレメンタルが相手になる。エレメンタルっていうのは、魔法具を使って短時間だけ精霊を具現化したものだ。魔法は精霊の力を借りて行使するという話は前にしたな?『火の精霊に力を借りて火の魔法を使う魔法使い』と『火の精霊そのもの』。ぶつかりあったら?」

「そりゃ当然精霊が勝ちますよね。精霊に勝つために上位魔法が必要になる、と。」


 道理ですな。


「そういうことだ。土魔法の場合は土のエレメンタルを少し弱体化させたものと戦う。それでも魔法力・魔法量ともにB以上は必要だろうがな。」

「弱体化しててもそんなですか。」

「ああ。しかも上級魔法使い試験は手加減など知らない精霊が相手だから、戦って死ぬ可能性もある。無理に受験する必要はないからな。」

「・・・と、とりあえずもっと強くなってから考えます。」

「それがいい。」


 ずずっとお茶を飲むノエルさんと俺。


「で、なんでエルエルは最上級魔法使い試験受けないわけ?」

「・・・起きてたのか。」


 いつのまにか起きていたさきねぇはせんべいをボリボリ食べていた。


「最上級魔法使いは今と違って、生魔大戦時の目安が使われていてな。ただ単に威力しか求められていないんだよ。一撃で数百から千以上の魔物を滅ぼせるくらいのな。」

「ぅわ~お。つまり、必要なのは大規模な超破壊魔法が使えるかどうかだけ、と。」

「そういうことだ。」

「・・・ん?エルエル、前にスケルトンの大群ぶっ殺してなかった?」(第百七姉参照)

「ああ、今は最上級魔法使いなんてほとんどいないから、あの程度の魔法でも合格するだろうな。」

「・・・でも、受けない?」

「ああ・・・アイツの魔法に追いつけない限り、最上級魔法使いなんて恥ずかしくて名乗れんよ。」


 ノエルさんはそう言うと、遠い目で空を見つめていた。


「お、もしやエルエルの初恋話!?」

「ぶっ飛ばすぞ。アイツは昔の友人だ。故人だがな。元宮廷魔法使いの冒険者という変わり者で、魔法量や魔法精度なら私のほうが上だったが、威力だけならアイツが一番だったな。」

「ノエルさんもすごいですけど、それ以上ですか?」

「ああ。私の最大威力ではやれるのは精々数百程度だが、三日に一回しか使えないとはいえ、アイツの極限魔法は一撃で千近く屠ったからな。与えられた二つ名は『絶望ホープ・ゼロ』だ。」

「すごい二つ名ね!やるじゃん!」


 まぁ一撃で千体もの魔物を殺せる人物が敵に回ったら、相手にとっては絶望以外何者でもないもんな。


「それだけ異常な創造力を持っていたってことですか。どんな感じで創造してたんでしょうね?」

「ああ、一度聞いたことがあったんだが、その、すごかったぞ。」


 苦々しい顔をするノエルさん。

 あのノエルさんにそこまでの顔をさせるとは・・・よほどの創造だったんだな。


「聞くか?」

「後学のために、ぜひ!」

「えっと・・・『守るべき民と親友以上恋人未満でいい感じの姫のために仲間とともに国を脅かすドラゴンを倒す旅に出かけ~以下略~崖の上からドラゴンの頭上に飛び降りてゼロ距離で爆炎の魔法を使いなんとか大打撃を与えるも致命傷には至らず開いたドラゴンの顎門から氷のブレスが~以下略~長い旅の末なんとかドラゴンを倒して国に戻ったら姫がイケメン近衛騎士副団長と結婚してた時の絶望感』で創造していたらしいぞ。」

「「なげぇよ!!」」


 意味わかんねぇよ!長すぎる上に悲惨すぎるだろ!どんだけ想像力豊かなんだよ!


「とりあえず、その想像ですごいパワーを引き出せるってことは、そいつ、高次元のネトラレ好きってことはわかったわね!」

「というか、そんなに長いんじゃ創造にめっちゃ時間かかるんじゃないですか・・・?」

「ああ、その日の気分や体調にもよるが5分~10分くらいかかるからその間守ってやらなきゃならん。しかも必ず最後の方で泣くから、護衛してる方がげっそりしてしまっていたな。」

「な、泣くって・・・すごい感受性豊かですねその人。」

「まぁ実体験だからな。」

「「まさかの実話だったぁぁぁ!!!」」


 泣くよ。そんなの思い出したらそりゃ泣くよ。


「極限魔法を使うとその頃の事を思い出してテンションがダダ下がりし、部屋に引きこもる。故に三日に一回しか使えないというわけだ。」

「つーかそれって悪堕ちっていうかオルさんみたいに魔王化してもおかしくないレベルじゃない!?」

「その人、よく復讐に走らなかったですね。ガンジーレベルの聖人ですよそこまでくると。」


 俺ならその極限魔法使って国滅ぼしてる自信がある。


「まぁそんな経緯で宮廷魔法使いをやめて冒険者になったやつがいたんだ。あの威力に追いつけない限り、最上級魔法使いになる気はないよ。それに加えて魔法の規模が規模だからな。四年に一回しか試験は開かれない上、試験会場が超僻地。行く気がせんよ。」

「なるほど。それならしゃーなしですね。」

「(それに、いまさら最上級魔法使い試験なんて受けて『最上級魔法使い合格すんのに168年もかかったのかよwダセぇww』なんて言われたら嫌だし。)」

「? 何か?」

「イイヤナニモ?」


 なにか不穏な気配を感じたのだが・・・気のせいか?

 まぁいいか。


「それで、そいつは結局どうなったの?二つ名通り、絶望に塗れて死んでいったの?」

「いや、冒険者やってる時に拾った孤児を育てて、その娘と結婚したぞ?20歳近く離れていたが幸せそうな感じだった。」

「同情して損したわ。はい、かいさ~ん!」

「まぁそういうなって。気持ちはわかるけど、良かったじゃん幸せになって。」


 幼女を育ててその娘と結婚とか、我らがJAPANに先駆者がいるしな。フィクションだけど。


「まぁ私が最上級魔法使い試験を受けない理由はそんなとこだ。」

「なるほどね~。」


 さきねぇはそう返事をしながら、奥にひっこんでいった。

 戻ってきた。その手にはグラスとワインが。

 席に戻ると、グラスにワインを注ぎテーブルの真ん中に置く。

 なんだ?


「二人とも、お茶はまだある?」

「うん。」「あるが・・・?」

「では。」


 さきねぇは自分のグラスにお茶を注ぎ、手で持つ。

 もしや。


「絶望を味わいながらも人々のために命をかけて戦った末に幼女を娶ったロリコン野郎にして、今は亡きエルエルの戦友に。」


 このひと、たまにやることが渋くてすげぇかっこいいんだよね。

 さきねぇのその言葉に、ノエルさんはビックリした顔をした後、俯いた。


「今は亡き、ノエルさんの戦友に。」

「・・・・・・今は亡き、私の戦友に。」


 俺とさきねぇとノエルさんのグラスが、テーブルに置かれたグラスに吸い寄せられるように近づく。

 そして。


「「「乾杯!」」」


 グラスの中の氷が、カランと音を立てた。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。

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