第百二十姉「わははははは!まぁ見てなさいよ、この『絶対姉姫』の勇姿を!」
総合評価が3000(-1)になりました。皆様、いつもお読みいただきありがとうございます。
120話も書いてるのに話が全然進んでないよねとか思っちゃいけません!
人の人生と同じです。ゆっくり時間を重ねていき、ふと後ろを振り向くと今まで歩いた距離の長さに驚くのです。
あねおれ、深いですね!
そして何が言いたいのかよくわかりませんね!適当なので!
「!? そ、そんなのでごまかされませんからね!」
「じゃあいいや。」
「もうちょっっっとひっぱって褒めてくれてもいいんじゃありませんかね!」
やっぱ面白いなこの人。
「さて、お弁当にしましょうかね。じゃーん。」
「おお!」「ん?なんですかこれ?」
俺が取り出したのは特製おにぎり。
この世界はパン食メインの人が多いし、お米もリゾットだとかオムライスで使うのが大半なので、おにぎりを知らない人もいるのだ。
「ライスを塩で握ったものです。三角がウメン、丸がシャモーン、俵が何もなしです。」
「ほひひひほひらはいほかはほひりは!」
「すいません、何いってるか全然わからないです。」
口一杯におにぎりをほお張りつつしゃべるさきねぇ。お行儀悪いな。
三人でもぐもぐ食べる。
「へー、おいしいですね。これ、ヒイロさんが?」
「ええ。といっても先ほど言ったとおりライスを握るだけですし、具材も市場で売ってるやつですけど。」
「料理もできるなんて、さすがヒイロさんですね!」
果たして、おにぎりを料理と呼んでいいものか。
「ヒロのおにぎりを食べられるとか、本来は国家主席レベルじゃないと無理なんだからありがたく食べなさい?」
「え、満貫全席扱いなの俺のおにぎり。」
そんな感じでまったりと昼食を終える。
そして、第二次ユニコーン捕獲作戦会議に入る。
「さて、水浴び中の清らかな乙女作戦も失敗したわけですけど、どうしましょうか?」
「とりあえず、ユニコーンの好物といわれるコリーンニンギンを用意したから、これを泉の近くに置いて罠を張ろうと思う。」
「さすがヒロ、準備がいいわね!」
「そんなのがあるんなら最初から出してくださいよ!私が下着姿で泉に30分浸かった意味はなんだったんですか!?」
「「いや、面白かったよ?」」
「もういやこの姉弟!」
マリーシアさんの絶叫をよそに、ニンギンをセットする俺。
そして、三人で近くの草むらに隠れる。
「・・・いつユニコーンがくるかわかんないし、三人で見張ってても体力の無駄だよね?長丁場も予想されるので、見張りは一人で一時間交代でどうだろうか。」
「・・・ヒロ。」
「なに?時間短い?二時間にしようか?」
「そうじゃなくて・・・アレ。」
「?」
さきねぇが指差した方を見る。
そこには。
立派な角を持つ見事な白馬がニンギンをむしゃむしゃと食べていた。
「「はやっ!」」
同時につっこむ俺とマリーシアさん。
もうくんのかよ!チョロすぎだろユニコーン!!
「目標がきたわね。まりすけ、ゴー!」
「い、いきなりわたしですか!?こ、心の準備がパート2!」
「でも、さきねぇがいってユニコーン捕獲しちゃったら、マリーシアさんここまで来た意味ないよ?」
「う!? それを言われると・・・そうですよね!私、いきます!溢れる魅力でユニコーンをノックアウトしてやりますよ!」
鼻息荒くユニコーンに向かっていくマリーシアさん。
「・・・どんな面白イベントが起こるんだろうね。」
「絶対ビデオカメラ必要だったわよね。」
マリーシアさんがユニコーンを捕獲できるとはかけらも思っていない俺達姉弟。
そうこうしている間に、マリーシアさんがユニコーンに近づく。
そして。
「そこのかっこいいおうまさ~ん。よってかな~い?」
ロングスカートの裾を膝までたくし上げ、ウインクする。
「「・・・・・・」」
俺は苦い顔で何も言えず、さきねぇは顔面の筋肉を総動員して笑いに耐えており、顔がひょっとこみたいになっとる。
ユニコーンは・・・無反応でニンギンを食べ続けている。
「あ、あれ?ユニコーンさーん?聞こえてますかー?」
もう一度話しかけると、ユニコーンがゆっくりとマリーシアさんに近づいてくる。
ま、まさかあれでいけるのか?
ユニコーンがマリーシアさんの前で止まる。
そして。
「ペッ。」 びちゃ!
そのままゆっくりと戻っていき、ニンギンモグモグを再開する。
「・・・・・・・・・・・・」
残ったのは、ユニコーンの唾で靴がべとべとになった、プルプル震えるマリーシアさん。
あ、戻ってきた。
「・・・えっと、その、が、頑張りましたよマリーシアさん!お疲れ様でした!お、惜しかったですね!」
「・・・・・・ヒイロさん。角、手に入れたら。アレ、殺処分してもかまいませんよね?」
「わかった。落ち着こう。落ち着くんだ。そういう時は素数を数えるといいらしいですよ。」
「ヒイロさぁぁぁん!いくらなんでもあれはあんまりですよぉぉぉぉぉ!」
「ぉおぅ・・・よしよし。」
大号泣で俺に泣きつくマリーシアさん。
鋼鉄の心臓を持つマリーシアさんでも、さすがにあれは効いたらしい。
さすがにかわいそうだったので頭を撫でてあげる。
「えぐっ、えぐっ・・・そういえば、ムラサキさんは?」
「さきねぇは、そこに・・・」
指差した場所には、さきねぇが左手で口、右手で腹筋を抑えて地面に転がっていた。
んふんふんふんふと鼻息MAX。
「うぅぅぅぅぅぅ!笑いすぎですよ!じゃあ次ムラサキさんいったらいいじゃないですか!」
「ふー、ふー、ふー・・・いやー久々にいいもん見せてもらったわーまりすけ持ってるわー。」
「ふんっだ!ムラサキさんの靴もつばでベトベトになっちゃえ!」
「わははははは!まぁ見てなさいよ、この『絶対姉姫』の勇姿を!」
自信満々でユニコーンに近づくさきねぇ。
「おっすお馬さん!オラ紫!よろしくな!」
フレンドリーに近づき、ユニコーンにぽんぽんと触る。
おお、タッチOKか!すげぇ!
と思ったのもつかの間。
「・・・気安く触んなドブス。ブスが感染る。」
「「「・・・・・・・・・」」」
沈黙が訪れる。
えっと、ユニコーン、今、すごいこといったよな。俺の聞き間違いじゃないよな?
「ん~・・・今、なんて言ったのかしら?よく聞こえなかったんだけど?」
「はぁ・・・顔だけじゃなくて頭の中までブスとか終わってんな。さすがに同情を禁じえないわ。」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
さきねぇに面と向かってブスとかいった生物、生まれて初めて出会ったわ。ある意味すげぇな。
これがもし男だったらHyper Inpact Rocket Omotenashi、通称『HIROシステム』を起動させてデストロイモードだし、女だったら『負け雌犬の遠吠えほど、哀れなもんはねーな・・・』って感じでハードボイルドに哀愁を漂わせるんだが、相手が馬じゃな。
「・・・OK、わかったわ。お望みどおり、馬刺しにして食ってやんよ!でもね、飲み込まないわ!お前のお肉をモグモグした後に『まずい!』って言って地面にぺっ!って吐き出してやる!ははははははは!」
・・・あれはもう、さきねぇじゃない。完全に暗黒の力に取り込まれている。
いうなればブラックむらさきねーちんだ!
「あ、あれ闇の精霊にとり憑かれてますねー。」
「あれ闇の精霊なの!?」
闇の精霊、馬にやられるくらい弱いけど、恐いな。怖いじゃなくて恐い。
つーか、あれを守護霊って、マリーシアさんあんた何者なんだ。シャーマンとか呪術師とかか。
呪術師って字で書くと簡単だけど、口で発音すると高確率で『じゅじゅちゅし』になっちゃうよね。俺だけ?
「おい、駄馬。例えばお前が雨の日に捨て犬を拾ったことがあるとしよう。例えば孤児院の恵まれない子供たちに匿名で寄付をしているとしよう。例えばライバルのピンチに助太刀に入ったことがあるとしよう。だが許さん。判決・・・死刑!」
その言葉と共に、さきねぇは右手にミカエルくん、左手には逆手持ちでマサムネさんを構える。
本来は両手持ちの武器で二刀流、だと・・・?
よくあるチートの武器制限無効みたいな構成だ。かっこいい!
つーか、まずい!アホなこと考えてたら、さきねぇがいまにもガチでユニコーンを殺りそうだ!
「さきねぇ、ストップ!話し合い!話し合いで穏やかな解決を図ろう!知性ある人間としての尊厳を保とう!」
「・・・ヒロ、所詮人と人はわかりあえないのよ。最後には飛び散る鮮血と『中に誰もいませんよ。』で終わるのよ。」
すげー闇堕ちっぷりだなおい!誰か助けて!
その時。
突然ユニコーンが駆け出した!
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。
作中では
ムラサキ「ねぇマリすけ。」
マリーシア「なんですかムラサキさん。」
って感じですが、実はマリさんのほうが五歳近く年上っていうね・・・
それと、書いている途中でふとねーちんを思い出してネタにしてみました。懐かしい。




