第十二姉 「ハハ、ワロス。自意識過剰でしょ。これだから破軍炎剣は困る。」
ちなみに、なんで姉フォルダのことを考えてたのがわかったの?というのは愚問だ。
なぜならお姉ちゃんだからだ。
・・・マジでチップ埋め込まれてないだろうな。
「ふぅ、さすがに疲れたな。」
「そりゃそうでしょ。池に落ちたんだし。プッ!私抱えて泉を移動したんだし。それからここまで歩いたんだし。それからずっとしゃべりっぱなしだし。エルエルの話長いし。コガネムシに死装甲突撃されて池に落ちたんだし。プッ!」
「違いますーコガネムシじゃないですーカナブンですー」
「それも違いますーコガネムシですー」
「ちょっと待て、今ヒイロの話をしていたはずなのに、さりげなく私がディスられてなかったか?」
「ハハ、ワロス。自意識過剰でしょ。これだから破軍炎剣は困る。」
「な!?わ、わたしの二つ名は今関係ないだろう!」
「お、怒っちゃうのか!?大変よヒロ!炎剣『プンプン丸』の封印が解かれるわ!」
「そ、そんな名前ではない!」
顔を赤くしたノエルさんが怒鳴る。
今にも炎剣『プンプン丸』を解放しそうだ。
台詞はやはり『怒れ!プンプン丸!』だろうか。
その後もさきねぇのからかいは続き、ノエルさんはまたもプルプルしたり、姉を追い掛け回したりしてた。
うちのお姉さまはついさっき炎球で殺されかけたのをもう忘れているのだろうか。
ひょっとして前世は鳥だったのかもしれない。
鳥は鳥でも、霊鳥クラスのレベルではありそうだが。
しかし、ノエルさんもぷんすかしてはいるが、嫌そうな感じはないんだよな。
むしろ楽しんでるというか、喜んでるというか、懐かしんでる?というか。
・・・きっとソフトMなんだな。
俺はそう結論づけた。
なんだかんだで日も暮れ始め、晩飯もごちそうになることになった。
手伝いを申し出るが、お客さまなのだから座って待っていてくれ、と断られた。
俺は申し訳ない気持ちになりながらも席につく。
もちろんさきねぇは手伝う気も申し訳ない気もさらさらなく、勝手に本棚の本を読もうとしている。けしからん。
さきねぇはなぜか昔から何をしても『紫さんだしね~』で許されてしまう。
しかし、それはさきねぇのためにはならない。
駄目なことは駄目だと言わなければいけない。
誰も怒らないので、双子の弟である俺がビシッと叱らなければいけないのだ!
「こら!紫!人のお家で勝手に本を「ちょっとうるさいから黙って。」ハイ。」
く、くそぅ・・・ならば、最終手段!
「人様のお家でそういう態度はよくないな~弟さんはそんなお姉ちゃん、嫌いだな~?」
弟に嫌われることを激しく嫌う姉は、その瞬間、キッチンに高速移動をしノエルさんに本読むから~と声をかけていた。
『読んでいい?』ではなく『読むから~』という、許可が出る前にすでに読むことが確定しているあたり、安定したさきねぇクオリティだといえよう。
しかし、キッチンにいったさきねぇはなかなか戻ってこない。
何してるんだ?何か面白いことでもあったのだろうか。
そう思っていると、さきねぇの大きい声が響いた。
「ヒロー!大変よ!ちょっときて!マジで!」
うちのお姉さんの『大変よ!』は、全然大変じゃないか、どうしようもないくらいの緊急事態かの二択だからあんまり行きたくねーな…
「冷蔵庫があるでー!」「なんやてー!?」
俺もキッチンに高速移動した。
「どれどれどれどれどれ!?」
「これこれこれこれこれ!」
さきねぇが指差すもの。
それは。
大きな木箱だった。
「これ!こっからカチンコチンに固まったお肉の塊が!」
「・・・クーラーボックスじゃね?中に氷いれてるだけだろー?騙されたわーマジ騙されたわー。」
まぁ冷蔵庫といえば冷蔵庫なのか?
確か最初期の冷蔵庫は箱に氷ぶっこんだだけのものだった気がするが・・・。
「自分で言っておいてなんだけど、『カチンコチン』って字にするとなんかいやらしい感じしない?」
「おい、ちょっとカメラ止めろ。」
その時、ノエルさんの口から衝撃の事実が明かされる!
「いや、これは『魔法箱』というものだ。この見た目以上の物を収納できる優れものだ。」
…え?
「「魔法箱!?」」
四次元アイテムが存在する世界か!よかった!
こういった元の世界にはない便利グッズはどんどん登場してほしいね!
テンション上がってきた!
「お、興味があるか?よし、説明してやるかな。そもそも始まりは…」
長かった。
すでに日は暮れている。
もちろんテンションは下がっている。
要約するとこうだ。
見かけ以上のものを中に収納できる。
生物は入らず、『物』のみ。
魔力の強さや魔力の量によって、中に入る物の数や重さが異なる。
優秀であればあるほど、大きく重いものがたくさんはいる。
出し入れは本人しかできない。
中の時間は止まっている、らしい。
魔法使いしか使用できない。
そのため、魔法使いは弱くてもチームの荷物持ちなどで大人気!
ちなみに、旅する場合は小さな魔法袋のほうが一般的。
この魔法箱はオシャレで置いている(ドヤ顔)
これだけの話に一時間以上かかった。
さすがノエルさんや。
だが、この世界に不慣れな俺たちのために話をしてくれたのだ。
文句など出るはずもない。
それに、美少幼女天使ではあるが、よく考えればノエルさんは168歳のおばあちゃんだ。
昔話や知恵袋的な話をするのが大好きなのだろう。
加えて、ずっと一人旅だったらしいので寂しかったんだろう。
そう考えれば長話も仕方ない。
俺たち姉弟を拾ってくれた恩人でもあるのだ。
喜んで話を聞きましょう!
ちなみに、さきねぇは途中で寝ていた。
俺に寄りかかり眠る姉の横顔は天使のようだった。
やはりうちの姉が世界で一番かわいいな。異論は認めない。
ノエルさんもかわいいが、それはあくまで『かわいい姪っ子』的な感じだ。
異世界の天使であり、みんなだいすきロリエルフのノエルさんでも叶わないうちの姉のかわいさ、恐るべし。
これでよだれをたらしながら『いやん、ヒロってば~も~しょーがないな~えっちなんだから~』とかいう寝言さえ言ってなければな・・・。
話も終わったので、さきねぇを起こす。
『はわわ、寝ちゃいました~』とかいっていた。
ぶっ飛ばすぞ。
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