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あねおれ!~姉と弟(おれ)の楽しい異世界生活~  作者: 藤原ロングウェイ
第十二章 アルゼン最大の危機!?立ち上がれ、戦士達!編
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第百七姉「黙れ小僧!!!」

今回はあねおれ史上、もっともかっこいいムラサキお姉ちゃんが見れます。

というより、この話を書きたくてこの章を書き始めました。

「集められるだけの冒険者を集めよう。・・・どれだけ参加するかはわからんがな。」

「「「「「・・・・・・」」」」」


 俺たちは、かなり危険な戦いになることを自覚せざるをえなかった。




「皆の者、よく聞いてくれ!」


 広場にて。

 多くの冒険者が集まり、ガルダのじーさまの話を聞いていた。


「・・・ということじゃ。アルゼン防衛隊からもギルドに依頼がきておる。かなり厳しい戦いになるじゃろうが、どうか力を貸して欲しい!」


 ・・・・・・・・・

 ガルダのじーさまが呼びかけるも、冒険者たちは不安そうに小声で話し合っている。

『怖い』『逃げよう』『死にたくない』

 そんな声が大半を占めるようだ。

 そりゃそうだ。誰だって死にたくなんてないし、俺だってさっさと逃げ出したい。

 どうするべきか・・・

 そんなことを考えて横を見ると、さきねぇがいなくなってる。

 え、どこいったの。


「静まれ!!」


 いきなり大声で怒鳴られる。

 声の発生源を見ると、ガルダのじーさまから音声拡張魔法具を奪ったさきねぇだった。


「びびってんじゃねーぞコノヤロー!チ○コついてんのか!スケルトンの大軍と戦うのが怖い?バカなの?スケルトンの大軍と戦って、勝てば金も名誉も手に入るのよ!?さらに身長は伸びるしテストは100点だし女の子に激モテよ!?だったらいつやるの?・・・今でしょ!」


 ザワザワとしだす冒険者たち。

 しかし、さきほどより悲壮感が薄れているように感じる。

 むしろ、『やってみるか?』『確かにアリだな・・・』『これだけの冒険者がいれば、勝てるんじゃねぇの?』といった、やる気に満ちた声が聞こえてくるようになってきた。

 まさしく扇動の達人だな。


「・・・でも、死にたくはねぇよ。」

「逃げたっていいじゃねぇか。」


 どこかからそんな声が聞こえた。


「黙れ小僧!!!」


 キィィィィンとハウリングが起こる。


「・・・いいわ、逃げたいやつは逃げなさい。ただ、絶対に逃げられないわよ。どれだけ年月が経とうとも、捨てて逃げた家族の顔が、友達の声が、仲間の思い出があんたらを苦しめて、苦しんだ末に死ぬでしょうね。自分で自分を殺すでしょうね。・・・どうせ死ぬなら、戦って死ね!!」


 全身が震えた。

 もちろん、恐怖からじゃない。


「選べ!負け犬みたく、なにもかも投げ捨てて逃げ出して、惨めに独りで泣きながらゴミのように野垂れ死ぬか!それとも!街を、家族を、友達を、仲間を、くっだらなくても大切な何かを守るために戦って!笑いながら誇り高き冒険者として死ぬか!」


 武者震い。

 体中が、頭の中までもが熱く沸騰していくのがわかる。


「私はいくわよ。先陣を切ってあの骨どもを砂になるまで砕いて殺しつくしてやるわ。・・・己が名、己が魂、己が剣に誇りを持つ者は、私に続けぇ!!!」

「・・・・・・・・・う」


 そして、さきねぇのその言葉が。


「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」」」」」」

「俺はやるぞぉ!」「私もよ!」「俺に先陣を切らせろ!」「いや、俺がいく!」「あんな骨どもに好きにやられてたまるか!」「家族は殺させないわ!!」「あいつらをぶっ殺せ!」「なんとしても守りきるぞ!」「俺らの生き様、見せてやろうぜ!」


 冒険者たちの心に火を点けた!


「ちなみに昨日、私は一人でスケルトン五十体ぬっ殺したわよ。5分でね!わかった?骨どもなんて恐るるに足りないのよ!雑魚だ雑魚!雑魚を蹴散らして英雄になれるんだったら、これほどおいしい話はないぜヤローども!」

「ひ、一人で五十体!?」「なんだよ、余裕じゃねーか!」「さすがムラサキさん!」「英雄か。悪くねーな!」「ムラサキお姉さまステキー!」

「ガルじぃ!」


 さきねぇが音声拡張魔法具をガルダのじーさまに渡す。


「みなの心意気、しかと受け止めた!ワシら全員で街を守った英雄になって、ウハウハ生活じゃ!・・・ムラサキ!お主に第一陣の総隊長を任す!存分にやってやれ!」

「おっしゃー!いくぞヤローども!あたしについてこーい!」

「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」」」」」」」」」」


 冒険者たちを引き連れて、さきねぇが外を目指して走り出す。

 そして、ポツンと取り残される俺とヴォルフとカチュアさん。


「あいつ、なんであんなに強気なんだ?・・・どうしたヒイロ?」

「というより、一人で五十体倒してないですよね?・・・どうしましたヒイロさん?」

「・・・あれが、あれがさきねぇですよ!やばい鼻血でそう!姉さんかっこよすぎ!きゃー!二人とも、さきねぇに続くぞ!」

「ちょ、待てよ!」


 興奮状態でハイになっている俺は全力でさきねぇの後を追ったのだった。




 郊外の荒野で戦闘準備にはいる冒険者たち。

 アルゼン防衛隊は街壁の上で弓を構え、俺たちの援護と街の守備だ。

 ガルダさんは集まっていない冒険者や退役冒険者を集め第二陣を編成している。

 ・・・加えて、もしもの場合に備え、街の住民たちの避難も平行して行っている。


「さきねぇ・・・勝てると思う?」


 さきねぇに問いかける。


「勝てるかどうかじゃなくて、勝つのよ。」


 言い切り、笑顔を見せるさきねぇ。

 すると、さきねぇの見つめていた方向に人影が見えた。

 一人二人じゃない。数十人か、数百人か、それとも数千か。

 ついに来たか。


「来たわね。・・・お前ら!準備はいいか!」

「「「「「「「「「「おおぉぉぉぉ!」」」」」」」」」」


 さきねぇがそう叫ぶと、冒険者たちの気合に満ちた声が聞こえた。

 士気は十分。

 あとは、決着をつけるのみ!


「全員、抜刀!」


 その掛け声とともに、全員が武器を構える。

 そして。


「・・・・・・突撃ぃ!!」

「「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」



 その時。



「はははははははははははははは!!!」


 ズシンズシンズシンズシンズシン!

 グシャグシャグシャグシャグシャグシャ!


「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」

「道を空けろムシケラどもー!あはははははははは!!」


 ズシンズシンズシンズシンズシン!

 グシャグシャグシャグシャグシャグシャ!


「ゴミはゴミらしく、そこらに転がってろー!あーっはっはっはっはっは!」

「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」



 ・・・何が起きたか説明しよう。


 走り出した冒険者たち。

 →突然左前方の荒野から炎をまとった巨大なドラゴン(?)が笑いながら突進。

 →スケルトン軍団につっこみ、そのまま蹴散らし踏み潰す。

 →ドラゴン(?)、回れ右してもう一度スケルトン軍団に突撃。

 →スケルトン軍団ほぼ壊滅。

 →俺たち、棒立ち←今ここ


 うん、もうよくわからんね。


「えっと・・・」


 誰もが戸惑っていると、ドラゴン(?)が今度はこちらに向けて突撃してくる!


「そ、総員退避ぃー!」

「「「「「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」」」」」」


 俺のその言葉を合図に、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す冒険者たち。


「さきねぇ、早く逃げよう!」

「私は残るわ。」

「な!?バカなこといってないで、早くいかないと!」


 まさか、さきねぇは自分をおとりにして俺たちを逃がそうとしてるんじゃ・・・!?


「逃げるわけにはいかないわ。ドラゴンもまたいで通るくらいじゃないと、真の天才美少女魔法戦士とはいえないわ!」

「ほんとにバカなこといってんじゃねぇよ!?現実を見て!?命をかけてボケるな!」


 ついに俺たちの目の前までドラゴン(?)が迫る!

 ちくしょう、なるようになれ!


「待て!」


 その声とともに、ドラゴン(?)が急ブレーキをかけて止まる。


「お座り!」


 ドラゴン(?)が犬のお座り状態で座ち、ドラゴン(?)の頭上から肩、腕、手をトンットンットンットンッと跳ねるように銀髪の美少女が降りてくる。

 そして。


「おお、ヒイロにムラサキ。こんなところまで迎えにきてくれたのか!ありがとうな。せっかくだから、久々に外食でもして帰ろうか!」


 とても見覚えのある人が現れた。




「「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」」


 街は危機が去ったということでお祭り騒ぎだ。

 どこもかしこも酒を飲み、歌い、踊り、無事を祝っている。


「さすがノエル様だよな!」「あんな大魔法を間近で見られるなんて、一生の思い出だわ!」「S級冒険者の称号は伊達じゃねぇな!」「『破軍炎剣』にかんぱーい!」


 結局、ノエルさんの巨大なドラゴン型ゴーレムが骨どもをほぼ全滅させたため、死者どころか怪我人すらなしというこれ以上ないレベルの完勝だった。


「まさか、ノエルさんが来てくれるとは思ってもいませんでしたよ。」

「遅くなってすまなかったな。怖かったろう?もう大丈夫だぞ?」


 なんでも、ノエルさんは新しく発生したダンジョンを調査しにいっていたらしい。

 その過程で異常事態に気付いて駆けつけてくれたようだ。

 ノエルさんマジ主人公。


「・・・でもよぉ、タイミングよすぎねーか?」

「確かにそうですね。もしかして、そのダンジョンと今回のスケルトン大量発生は何か関係があるんでしょうか?」

「・・・ン?ナンノコトカワカラナイナ?」

「・・・・・・まぁいいですけど。」


 ヴォルフとカチュアさんの言葉に激しく動揺しているノエルさん。

 限りなく怪しいけど、動揺っぷりがかわいいから許そう。

 可愛いは正義!

 酒を飲みながらそんな他愛のない会話をしているその横で。


「あの賞賛の声は私が受けるはずだったのにぃぃぃぃ!エルエルに出番取られたー!うぉぉぉぉん!うぉぉぉぉん!」


 あんなにかっこよかったのに、ノエルさんの活躍によっていまや完全に空気と化し、自棄酒をあおりながら男泣きしているさきねぇの姿があったとさ。




ここまでお読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想ありましたらよろしくお願いいたします。


とまぁこんな感じで終わりました。あねおれですからね。

モブでも死なない明るい家族計画作品ですので。

初期プロットは「大軍と戦う冒険者、しかし突然現れたノエルさんが瞬殺」だけで書き始めました。

書いてる本人も「この内容、ちょっとあねおれの色と違うよな・・・」と思いつつ、書かずにはいられませんでした!ごめんなさい!

次回は番外編をはさんで新章に移りますが、最近バトルしてばっかだったので久しぶりにアホな感じです!

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