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闇狩  作者: 月原みなみ
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ひかりの天使 四

 すっかり陽の落ちた夕闇の中。

 沈黙の下りたその部屋で、いつしか岬は膝を抱えて蹲っていた。

 周りには複数の人影。

 どの視線も、温かな慈しみに満ちている。


「おつかれさま」

 掛けられた声に、だが岬は応えられない。

 言葉の代わりに涙が毀れる。

「…よく頑張ったね、岬君」

「っ…ぅ…っっ…」

「本当に、………よく頑張った」

「ふっ…ううっ…」

 次から次へと、瞳から溢れ落ちる大粒の涙。

 暗闇を灯す月の光りに抱き締められて、岬は抑えようとしていた声すら抑えられずにいることを知る。

「ぁ…あっ…」

「うん…」

「河夕…っ…」

「うん…影主もきっと喜んでくれる」

「河夕……!」

「本当に…本当に、よく頑張ったね…」

 泣き続ける岬の手の中には、穏やかな光りを放つ白い玉が握られていた。

 それは月の光りに似て、水面の煌きに似て、地上を照らす輝きとなる。



 悲しみに歪む顔を涙で濡らす岬に、だが雷牙は安堵の息を吐いた。

 岬が見てきた世界、彼の抱えた痛みを思うと切ないけれど、それでも心の奥底から安堵した。

 それはきっとこの場の誰もが同じ。

 自ら飛んだ岬自身も、そう思っているかもしれない。

 白夜が彼を抱き締め。

 黒天獅は静かに見つめ。

 水神は微笑んで息を吐くと、彼らに背を向けてその場を去っていった。


 少年の手の中の、白銀の珠のもたらす未来を思いながら。




 岬は手に入れたのだ。

 彼らの協力のもと、岬が信じた、この世でたった一つの狩人達への贈り物を――。




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