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闇狩  作者: 月原みなみ
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闇狩の名を持つ者 三

 翌日、空は相変わらずの曇り空だった。

 昨夜、降り出した雨はその日の内に止んでいたが、雲が切れることはなく、そして岬の心も同様の曇り空。

「危険だから離れろ? 冗談じゃない」

 いつもの岬なら、これくらいのことは言えたかもしれない。

 生きるか死ぬか、どちらか一つ。

 前者の確立の方が後者に比べて圧倒的に低いなんてことがなければ、きっと言えた。

 けれどその危険の中を、影見河夕は。

(あいつはたった独りで…)

 影見河夕が自分の待っていた狩人であったこと、彼が普通の人間でなかったことに恐怖を覚えたわけではない。

(怖くなんかないんだ)

 岬の内に募る感情は恐怖ではなくて。

(拒絶、された…)

 それに対する悲しみだ。

 仲間はいらない。

 友人もいらない。

 一人が楽。

 そんな影見河夕の言葉の一つ一つに、岬は自分でも信じられないくらいの寂しさを感じていた。

(俺は邪魔なんだ…)

 河夕があからさまにそう言ったわけではなかったけれど、昨夜聞かされた話を要約したならそういうことになる。

 河夕は、自分に近づくなと、はっきり言い放ったのだから。

(…もう忘れたいのに…)

 聞きたくなかった、そんな言葉なら。

 そんな真実なら知らない方がましだった。

(友達になれるって思ったのに…っ…)

 岬は頭から布団をかぶる。どこからともなく、今日は聞くことなどないと思っていた学校のチャイムが聞こえた気がした。

(…もうすぐ学校が終わる時間だ)

 珍しく学校を欠席したせいか、なんとも言えない不安が胸中を占めていた。

 時計は三時半を示していた。

(終わる…)

 それと同時に、彼とも終わりになるかもしれない。

 それこそ永遠に、二度と逢う機会もないまま。

「…そんなの…」

 嫌だ。

 いくら突き放されたのだとはいっても「さよなら」の一言くらい告げて別れたい。

 本当に最後なら。

 最後にしたいなら、ちゃんと会って別れの言葉を告げなければ。

「岬?」

「っ」

 不意の声に布団を大きく舞わせて起き上がった岬は、部屋にやってきたのが昨日まで衰弱して寝込んでいた父親だと知って目を丸くする。

「父さん…、身体は……?」

「大丈夫だよ。岬こそ気分はどうだ?」

「…最悪、かも」

「だろうな、顔に出ている」

 笑いながら襖を閉め、岬の布団の側で正座する。

 四三歳には見えないほど若々しく元気だった父親が、今では十歳以上も年齢を重ねたように見えた。逞しかった腕も、三年前に亡くなった祖父を思い出させる。

「父さん、本当に大丈夫なの?」

「ああ。体力もだいぶ戻ってきているからね。闇の力が弱まっているのかもしれないな」

「!」

 嬉しそうな言葉に、しかし岬の心臓は大きく跳ねる。

 父親の力はこの街一帯に、微力ながらも闇の魔物から人を守る為の壁を創り出していた。その効果があってか怪事件の被害が人の命を奪うことは一度もなかった。だがその壁を創造するために消費していた力が戻りつつあるということは、それだけ壁の必要性がなくなっているということ。

 つまりそれは、闇の力が弱まっている証拠。

「じゃあ…影見が闇を狩っているから…?」

 それしかない。

 本人も言っていたではないか、闇の魔物を狩れるのは闇狩だけ。

 自分が必ずこの街を元の四城市に戻してやると、影見河夕はそう言った。

「影見が…っ…どうしよう父さん、影見が行ってしまう…!」

「影見…? まさか昨日の少年が闇狩様なのかい?」

 目を見開いて問うてくる父親に岬は何度も頷く。

「どうしよう…このままじゃ本当に影見が…っ」

 今にも崩れ落ちそうな息子の声音に、住職は昨夜の狩人の少年こそが、岬の体調不良の原因なのだと悟った。

「…岬。おまえは行かなくてもいいのかい?」

「行くって、どこに…」

「彼の。その闇狩の少年の元に」

「え…」

 岬が何を思い悩んでいたのか、この父には判ったのだろうか。

 昔から、いつも今一番欲しい言葉をくれた人。

 誰よりも近くで見守ってきてくれた。

「友達になったのではないのかい?」

「…俺はそう思ってた…、ううん、思いたかったんだ。人の話を聞いているのかどうかも解らないし、呼んでも返事しないし、授業はサボるし人の名前だって覚えない変な奴で…」

 改めて彼の人柄を言葉にすると、影見河夕という少年がどんなにめちゃくちゃな奴なのか解る。

 聞いている父親だって同じように思ったかもしれない。

 出会ってわずか三日の転入生。

 それで互いを理解出来るなんて、そんなことは決して思わないが、それでも岬は。

「俺は友達になれるって思ったんだ…。だけどそんなのは俺の思い込みだった。あいつにとって俺は邪魔でしかなかったんだ…」

「彼が本当にそう言ったのかい? おまえの考え過ぎではなくて」

「…」

「昨夜、彼が校内で倒れたというおまえを家まで抱えてきてくれた時、私も母さんも驚いた。何故だか判るかい?」

 左右に振られる岬の顔に、住職はそっと微笑む。

 昨夜のその光景を思い出すように目を細めて。

「意識のないおまえを見守る彼の瞳は、ひどく優しかったんだよ」

「…っ…」

 岬の頬が熱を持つ。

 学校で意識を失うなどあっていいことではない。

「あんな目でおまえを見ていた彼が、おまえを邪魔者扱いするとはとても思えないがね」

「…でも…」

 父親の言ってくれる言葉が真実ならどんなにいいか。

 こうして悩んでいることがバカバカしく思えるくらい嬉しくなれる。

 けれど現状のままではそれが影見河夕の本心だと信じられるものがない。

 近づくなと言われたのが事実である以上、今のままでは動き出せない。

「…まだ、迷うことがあるのかい?」

 再び俯いてしまう岬に父は告げる。

「いつものおまえらしくないな」

「!」

 その言葉にはっとする。

 いつもの自分、それはどんな人間だった?

「悩む前にまず動き出す、真っ向からぶつかって言うべきことを言ってきなさい。相手の本心をちゃんと聞いてくるんだ」

「父さん…っ」

「おまえはそういう子だよ。望みがあるなら、それを自分から手放すようなことだけはするんじゃない」

 大好きな父親の言葉に、岬の心は力を生む。

 そうだ、一人で悩むくらいなら、今こうして抱えているものを全部本人にぶちまけて、真っ向から挑めばいい。

 友達になりたいんだ。

 もっと知りたいんだ、狩人ではなく、影見河夕という同級生のことを。

「ありがとう父さん!」

 飛び起きて早速動き出そうとする岬に、父の表情も静かに和む。

「頑張りなさい、岬」

 父の励ましを背で受けて、岬は走った。

 自分の通う、河夕の通う、県立西海高校へ。


 ◇◆◇


 授業終了のチャイム。SHRが始まるまでの休み時間中、雪子は河夕の席に近づいていった。

「影見君、一緒に岬ちゃんのお見舞いなんて行きたくない?」

 昨日のこともあってか雪子の話し方は他人行儀な所がある。

「…なんで俺と?」

「だって友達でしょう?」

 サラリと、当然のように返してくる雪子に、河夕は微かに目元を和ませ、…けれどそれ以上は何も言わずに顔を背けた。

「影見君?」

 呼びかけても河夕は眉一つ動かさない。聞こえていないわけではないだろうに。

「影見君っ」

 語尾を強めるが返答は皆無。再度呼びかけようと口を開いた時、前方から優の声が届いた。

「雪子―、楠君が話あるって」

「楠君? 岬ちゃんに伝言かな」

 河夕に言い足りないことが多すぎる彼女であったが、わざわざ隣のクラスから来てくれたのを邪険にするわけにもいかず、雪子は致し方ないというふうに楠の元へ向かおうとした。が、彼女はそれ以上動くことが出来なくなる。

 河夕に背を向けた刹那、身体が麻痺したかのようにすべての感覚が遠くなった。

 声も出ない。

(なにこれ…っ…!)

 泣きたくなる。

 恐がりの彼女にとって、これは充分すぎるいじめだ。

(これも怪事件の一つなの?!)

 声が出たなら迷わずそう叫んでいただろう。――それが判っていたからこそ、河夕は彼女の声まで奪った。

「松橋。足が動くようになったらそのまますぐに校内から出ろ」

(影見君?!)

「そしてあいつに伝えるんだ。楠には近づくな、寺から絶対に出るなとな」

(影見君…)

 身体がふらつく。

 声が出る。

「影見く」

「行け!」

 二つの声が重なった。

 雪子は河夕の言葉に弾かれるように走り出した。

 言われるがままに生徒玄関から外へ飛び出し、河夕は雪子を呼び出そうとした楠啓太に歩み寄る。

 笑う少年。

「こんにちは、影見君」

「松橋に何をする気だった?」

 河夕の態度はひどく冷徹だった。

 だが彼の対応は正しかった、たとえそれが相手を刺激するものだったとしても。

「それとも本当の目的は跡取りの方か? 腹が減ったのはよく解る。あれだけ無意味な怪事件を起こし続けてきたんだからな」

 クラス中がざわめく。

 しばし無言だった楠が突然笑い出したのは、クラス中の視線を二人が集めた数秒後。

 教室が。

 校舎が激しく揺れ始める。

「わぁあああっ!」

「なんだよいきなり!」

 学校全体から響き渡る生徒達の悲鳴、絶叫。

 だが河夕と楠の二人はそんなものに気を取られてはいられない。

 もし今この瞬間に気を散らせば目前の相手に殺される、確実に。

「クスクスクス…よく解ったね“闇狩”。まぁ最初から気付かれているとは思っていたんだけどさ」

「だったらなぜこの街を去らなかった」

「だって美味そうだったんだ、高城岬が」

 楠が笑う。不敵な笑みで。

「松橋さんも気に入っていたよ。けれど俺はどうしても高城岬が喰いたかったんだ。なのに彼には妙な結界が施されていて手が出せない。彼の父親の結果さ。だから街中で騒ぎを起こせば高城を覆う結界も揺らぐんじゃないかと思ったのに、…そろそろかと思っていたら今度は君が現れた。さっき君が言っていた通り、…俺としては決して無意味じゃなかったけどさ。あれだけの騒ぎを起こしてきたせいでかなり腹が減っているんだ。仕方ないから松橋さんで飢えを満たそうと思ったんだけどねぇ…、クスクス。解りやすい説明だろう?」

「吐き気がするほどな」

 河夕の手に光りが宿る。

 それは一本の日本刀を象った。

 刀身が帯びる光は白銀色。

 果てのない清浄な輝きは一族の始祖、里界神りかいしんから授けられた魔を滅ぼす為の力。

「闇狩の名を持つ者として、おまえは俺が狩る」

 河夕と同じように手の中に刀を作り出した楠は、河夕の足が地を蹴ると同時に後方へと飛び退いた。

「やれるものならやってみるがいい!!」

 闇と闇狩、二つの力がぶつかりあう。



「岬ちゃん?!」

「雪子! どうしたんだよ、そんなに慌てて!」

 雪子の慌てぶりを不審に思う岬。

 瞬時に一つの絶対的な予感が脳裏に浮かび、岬は雪子の肩を掴んで怒鳴るように尋ねていた。

「何があった?!」

 雪子は息を切らしながら、けれど河夕に言われたことをそのまま岬に伝える。彼女も校舎から発された光りと叫びを見たのだ。大変なことになっているのは安易に想像がつく。恐がりの彼女ではあったけれど、岬の隣家に住んでいることでこの手の現象に親しくないわけじゃない。

 だから。

「だからね、岬ちゃん、影見君に、言われたとおり、岬ちゃんの家に、帰ろ?」

 雪子は河夕の言葉にそう付け加えて岬に告げた。

 だが岬は頷かなかった。

 やっと決めたのだ、河夕に会いに行くこと、言わなければならないこと。

「雪子、悪いけど一人で戻って。俺はあいつのところに行かなきゃならないんだ。戻ったら父さんと母さんに寺から出るなって伝えて」

「岬ちゃん!」

「大丈夫。楠に気を付けろって影見が言ったんだろ? 俺はあいつを信じているから楠には気をつける。危ないこともしない。用が終わればちゃんと寺に帰るから」

 岬のこの言葉を信じないわけじゃない。けれど不安は消えたりしない。

 河夕の言葉。

 ここにくるまで見たもの、聞いたもの。

 岬が無事に帰る保証などどこにもない。

「岬ちゃん、お願い。一緒に帰ろう? 岬ちゃんは絶対に無理するもの。怪我しちゃうもん」

「雪子…」

 岬は両の手に力を込め、雪子の肩を強く掴む。

「一人で帰って。俺は学校に行って、影見と話さなきゃならないんだ」

「だって岬ちゃん…っ、言ったでしょう?! 学校はどうにかなっちゃったの! 影見君だって…!」

「学校は大丈夫だよ。だって影見がいるんだから」

「影見君が…?」

「だから、ね」

「でも…」

「雪子」

 揺ぎ無い眼差しに強い口調。

 決めたことを終わらせるまでは決して逃げない。

 岬がそういう少年であることを、誰よりも雪子は知っている。

「……もう! 本当に岬ちゃんて昔から変わってないんだから! 言い出したら人の言うことなんか絶対に聞かないの! 岬ちゃんの場合は昔と変わったところ探す方が至難の業よ!」

「なにを突然…」

 雪子は両手で岬の肩を叩く。

「行ってらっしゃい、岬ちゃん」

 泣き出す一歩手前、そんな笑顔。

「ごめん」…、そんな一言が岬の胸中で呟かれた。

「ただしっ、絶対に早く帰ってくるのよ!」

「うん!」

 岬は答えるなり雪子から離れ、学校へと走り出す。

 雪子はその姿が見えなくなるまで見つめて、深呼吸を繰り返すと全速力で岬の家へと走り出した。



 岬は坂を駆け上がりながら、辺りを見回して顔を顰める。

 この街はこんなに暗かっただろうか。

 こんなに荒れていただろうか。

 いや、そんなはずがない、この街は暗くなどなかった。

 むしろ明るかったではないか。

 子供が多くて、公園にはいつだって元気な声が飛び交っていた。

 人々は笑い合っていたし、晴れ渡った空は高く広く澄んでいた。

 こんなに荒んだ光景はどこにもなかったはずだった。

 すべては”闇”が作り上げた。

 闇の魔物が自分達に合った街を作り上げたのだ。

 人の悪の心に住みつき、その身体を我が物とし、欲望のままに動き出す。

 時には獣と化して自我を失い、本能の赴くままに人を食らう、それが「闇」の魔物なのだと彼は岬に教えた。

 そして先刻の、雪子が河夕から預かった言葉。

 そこから推測するに、この街に覆った闇の力は楠啓太のものだったということなのだろう。

 その結果が今こうして眼前に広がる暗い街。

 そしてこれからもこういったことは繰り返される、なぜなら闇の魔物は人に悪の心が存在する限り消えることがないから。

 人の悪の心は決してなくなるはずがないから。

(それが当たり前なんだ…)

 それが普通のことだから、決して失われない。

 善と悪があってこそ人という存在が成り立つの以上、彼らの役目は終わらない。

 どちらか片方の心しか持たないものを人間と呼ぶなら、心のない、プログラムどおりに動くだけの機械人形だって人間になってしまう。

 善と悪があってこそ、人は様々な感情を学べるのだ。

 人が存在し続ける限り闇の魔物は存続する。

 だからこそ行き続ける限り闇狩の名を持つ者は魔物を狩り続けなければならない、そう説いた一族の始祖は確かに正しかったかもしれない。

 けれど。

(けど俺は…!)


 ――闇狩の一生とは闇を狩る為だけにある……


 始祖の言葉だと、彼は自分に教えたけれど。

(俺は…!)


 ――闇を狩る為だけに生きている。だから仲間や友人はいらないんだ…

 ――狩り続けて、死ぬ時は一人で死んでいくのが狩人の定められた最期だ……


 そう彼は静かな瞳で語ったけれど、それに不満を持った者はいなかったのだろうか。

 闇狩一族の長い歴史の中に、たったの一人も…?

(俺はそんな考え方、絶対に肯定なんかしないからな)

 人の巨大過ぎる悪の心が生んだ化け物を狩り続ける闇狩一族。

(他人のために生きているんだろう?)

 普通の人間にはない力を持っているのだとしても。

 それが始祖から与えられた存在意義だったのだとしても。

(他人のために生きているんだ)

 その力で誰かに迷惑をかけたことがあるのか?

 ずっと一緒にいたわけじゃない、そればかりか出逢ったばかりで、彼のことだって何も知らないような自分だけれど。

 それでも信じられるものはある。

(影見…、おまえにだって幸せになる義務があるんだ)

 自分のために生きる義務が。

(俺はそう思うんだ)

 それを本人に伝えたい。

 だから走っている。

(闇狩の名を持つ者の運命? 側にいることがどれだけ危険なのか? そんなの知らない)

 坂の上。目的の西海高校が見えてくる。

(俺は俺の信じたものを最後まで信じたい。たった一人で戦い続けるなんて淋しいよ)

“闇“を狩るだけなら、一人でも続けていけるかもしれない。

 彼の言うとおり、一人の方が楽なのかもしれない。

 けれど岬の言う“戦い”は。

(人間、一人で生きて行けるはずがないんだよ)

 たった一人でこの世界を生きて行けるほど強い生き物ではないのだ、自分達人間は。

(おまえのあの無表情だって、だから身に付いちゃったんじゃないのか…?)

 寂しさや悲しみを隠す為に仮面の表情を作ったのではないのか。

 その奥に隠された感情を岬は見抜いた。

 それに河夕は驚いていたけれど。

(俺だって年から年中、平和ボケしているわけじゃない)

 人の役に立ちたいと思っている。

 そのためにはどうしたらいいのか、いつだって考えている。

 だから気付いてしまうのだ、相手を傷つけたくないと思うから相手の感情を読んでしまう。

(……おまえは泣いているよ)

 あの時の一瞬の閃きを信じようと岬は思う。

 河夕と最初に交わした言葉、初めて見た微かな笑み。

(運命ってのが本当にあるのなら…)

 闇狩一族の使命のように定められた未来ばかりではなく、幸せになるための優しい運命もこの世に存在するというのなら。

(俺達の出逢いも運命だって信じたい)

 口ではどう言ったとしても、心は嘘をつかない。

 惹かれている。

 友情の成り立つことを望んでいる、こんなに強く。

 邪魔だと言われようと、仲間はいらないと、拒まれようと。

(俺は側にいるからな!)

 岬は足を止めた。

 息を切らしながら、顔を上げる。

 やっとたどり着いた校舎、そこは黒い霧に包まれていた……。




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