敵が登場する四話
羽毛より軽いプライドを捨てて扶桑からレポートに役立つ情報を聞いている俺の机に誰かが近づいてきた。
‐誰だっけ?
‐知らない顔だ。
‐向こうはこっちを知っているみたいだな。
‐アンリの事を知ってるんじゃないか?
‐いらないところで有名人だもんな。
=結論、全く記憶に無いやつが笑顔を振りまきながらやってきた。
「よう、アンリ! 何の話をしてるんだ?」
図書室だというのによく響く声で話しかけてきた男子。
‐アイドルとかにいそうな顔だ。
‐つまりはイケメン。
‐逝けメンになればいいのに。
‐超同意。
同意、俺はどちらかと言えば、男前の方が好みだ。‐えっ、ホモ?
/カニェッツ、男として憧れるのは、という意味だ。
しかしよく考えてみよう、ここは図書室だ。静かにするのがマナーだと云うことを知らないのか、このイケメンは。
‐最近のガキのマナーとモラルの低下は目を見張るモノがある。
‐何でも許されると思っているんだろ。
‐ただしイケメンに限る。
‐クレームに対応するにもイケメンが一番良い。
=結論、イケメンは何かと得をする。
扶桑はとても嫌なモノを見る目をイケメンに向けていた。
そして、俺に助けて欲しそうだ。
‐困り顔のアンリたん可愛い。
‐関わりたくないが、嫌いじゃないんだから助け船出そうぜ。
‐その船は難破しそうだな。
‐ナンパしてんのは目の前にいるぞ。
/カニェッツ、そういう意味じゃない。
だが、このイケメンはどこか違和感がある。
‐じゃまにならない程度の赤毛。
‐おそらくカラーコンタクトで黒くしている瞳。
‐長身で、がっしりとした体格。
‐口元には常に微笑みが浮かんでる。
‐アンリとは違った感じのする気持ち悪い笑みだ。
‐だが、扶桑と並んでいたらとても映えそうだ。
‐端から見れば美男美女カップルか。
‐ナニとは言わんがもげろ。
/カニェッツ、今はそれを祈っている場合じゃない。どうやって介入するかを考えろ。
高速思考開始。
‐ザプスク
‐~ ‐~ ‐~
‐~ ‐~ ‐~
‐~ ‐~ ‐~
※
思考停止。
‐ストップ
‐疲れたな。
‐だが、なかなかだろ。
‐これでもなんとかなるはずだ。
‐頑張れよ、俺。
頑張るさ、やれる限りは。
~イケメンと男前
最近テレビにでてるのがイケメンばっかでちょっと食傷気味。
泥臭い感じの人が増えることを切に願う。
例えば、カメンバッター一番の人とか、戦闘集団の初代赤とか。
~異種色の髪とカラコン
分かる人には分かるワード。つまりそういうことだ。
本日のロシア語講座
~ザプスク
開始。
分割思考で高速演算等を開始するときに使用する単語。
~ストップ
停止。
英語ではない。断じて英語ではない。
分割思考による演算などの停止に使用する単語。
~ナスカとアンリ
ナスカはアンリの事を知り合い以上友達未満だと思っている。
アンリがどう考えてるかは秘密。
でも、嫌いではない。ただ、関わりたくないだけ。