広がりを見せ始める二話
照りつける日差しがとてつもない不快感を醸し出し、肌がちりちりと焼けていく。
‐まだ七月だぞ。
‐このまま八月になったら干物になるかもな。
‐生きているのに干物……
‐いけるミイラか!
‐クァチル・ウタウスはお帰りください。
‐永遠と刹那は紙一重。
‐詩人だな。
/カニェッツ、時間軸が歪む上に、ミイラ取りがミイラになる。
※
五年制の高専でようやく折り返し地点ともいえる三年生になり、もう三カ月余りが経過した。
あと一カ月で前期は終了する、はずだ。
‐その前にテストがある。
‐現実逃避乙
‐なに、俺たちがいるんで、問題はないだろう。
‐フラグ建築乙
テスト何かよりも、学校がそれまでちゃんと有るかが俺には心配だ。
‐あっ……
‐あっ……
‐見事なまでのフラグがここに立ちました!
‐キマシタワー!
=結論、奴が何もしなければ世界は頗る平和なはずだ、たぶん。
魚面をした大男が政界や財界に君臨しようと、地下鉄で行方不明者が続出しようと、脳のない死体が連続で発見されようとも、な。
※
‐相変わらずの野郎クラスに入室。
‐奴はいないもよう。
‐暑さから、上半身裸を二名目視。
‐ウホッイイ男。
‐イイ男以外は帰ってくれ。
‐お前らが帰れ。
このクラスにホモが発生したら一大事だぞ、フラグを建てるな。
‐阿鼻叫喚の世紀末な情景が目に浮かぶ。
‐ヒャッハー!
/カニェッツ、世紀末はあと八十年は先だ。
‐肩パットも釘バットも必要ない。
‐必要なのは知識と、
‐経験と、
‐強い意志!
根性では奴らには勝てない。遥か昔から存在していたと云うことにされたあいつらに負けないために。
‐工業系を学んでいたのにな。
‐何時の間にか魔術を学ぶことになった。
この世界のズレに誰も気が付いていない。
‐あたかもそれが当たり前であるかのように。
‐CoCTRPGが常に隣で起こっているのに。
‐そういえば、近々自衛隊から魔防隊が分離するらしい。
=結論、世界のズレは今も広がっている。
※
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分割思考との無駄な会話を楽しんでいると、何時の間にか始業チャイム五分前になっていた。
‐そろそろ、奴が来るな。
分割思考の一つがそう呟くと噂をすれば影と言うが、教室の前にある扉が開き、やつが入ってきた。
このクラス唯一の女子。
全ての現況。
諸悪の根源。
忍び寄る影。
‐流れる銀髪。
‐澄みきった碧眼。
‐女子ならば、一度は羨むプロポーション。
‐非の打ち所のない紛う事なき美少女。
扶桑アンリが。
~クァチル・ウタウス
申し訳程度のクトゥルフ要素で、とてもマイナーな神性。
知っていればかなりの「通」だといえる、かもね。
~高専
『高等専門学校』の略称。現実では情報や工業、電子系の事を学ぶが、この世界では魔術を学ぶ偏屈で変人の巣窟に成っている。
なお、主人公の通っている高専の名前は未定。
~イイ男
公園のベンチに座っている青いツナギのイイ男。
見つけるか、見つかってしまうと新しい道を開いてしまう。
~ヒャッハー
汚物は消毒だァー!
~登場人物名について
現在は日本の旧国名を苗字に、世界遺産の名前を日本風にして、使用しています。
由来とかは、また後日。