氾濫する河
月明かり以外に光源のない暗い海岸で、吸い慣れないタバコに火を灯して口にくわえる。
一口吸えば、まだ味を感じられない煙が肺を満たしていく。
海に呼ばれて、数十分が経った。
彼女はまだ、現れない。
※
詳細を省けば、よくある悲哀系の恋愛小説のような内容だった。
‐クトゥルフ神話体系としては異端。
‐文章力も御大や大先とは比べてはいけないかもしれないが、はっきり言って低い。
‐言ってしまえば三流だ。
/カニェッツ、趣味としては、充分だろ。
「あらすじは理解した。これを読まされた意味も理解した。これが実話だとして、最近の星辰の異常を鑑みて、好奇心を刺激されたのか」
「その通り。理解が早くて本当に助かるよ」
「何時お出迎え?」
「今日の夜八時」
「もっと早く言えや」
「ギリギリに言わないと、逃げるでしょ?」
「昨日と云う選択肢は無かったのか」
「無いね」
笑顔で返しやがった。
‐殴りたい、この笑顔!
‐今なら、殴っても罪にならない気がする。
‐クラスの奴らも、厄介事だとわかると蜘蛛の子を散らすように居なくなったから、目撃者はほぼゼロだ。
‐今殴ろう。
‐すぐ殴ろう。
‐骨まで砕けろ。
/カニェッツ、色々と危ない。
「異論が無いのなら、予定通りに向かいに行くけど、良いの?」
「異論を挟む余地がないな」
「じゃあ、決定だね。まった後でね」
‐諸悪の根元が不安を残して去っていく……
‐サヨナラ、平穏な俺の日常よ。
‐こんにちは、不穏な奴の日常よ。
‐家に帰ったら、最低限死ににいく準備でもしとかないと。
/カニェッツ、死なないようにもがくのが人間だ。
~タバコ
タバコは二十歳になってから。
~御大
御大将の略。
言わずと知れた、かの人のこと。
~大先
大先生の略。
御大の事を後世に伝えるために奮闘した内の一人。
何かと批判されてるけど、それもまたクトゥルフ神話の一つの考え方と思えば良いの。
~好奇心
死亡フラグの筆頭。
~訛り
私自身が何処の方言を喋っているのかわからないので、いろいろ混ざってしまいます。
~死ににいく準備
TRPGではよくある事。




