第24話 旅支度
裸では話ができないので、個別に服を調達することになった。
頭の上でピコピコ動くネコ耳と尾てい骨付近から生えてるネコ尻尾をいじりながら移動し、到着したのは集落の長の家。
まずは長の娘が死んでいる部屋に入って、鏡で自分の顔と体を確認。
「おおっ、これが私……!」
ネコみのある顔で、黄金の瞳、肌はきめ細かくて白い。
紫色の髪はストレートで腰まで伸びていて、白色のメッシュが入っている。
身長は女性にしては高め。
胸とお尻が大きくて腰が細く、まさに二次元の美少女みたいな理想的な体型をしている。
「……ふむ」
男として興味がないわけがなく、おもむろに自分の胸を鷲掴みにして揉んでみる。張りがあるのに柔らかくて触り心地がいい。あと、少し性的な快感がある。
「ボタンの胸はどうなんだろう?」
俺の胸が普通の巨乳だとしたら、ボタンのは爆乳と呼ばれるサイズだ。触って確かめてみたいが、嫌われたら厄介なので実行には移さない。
「っと、服を探さないと」
当初の目的を思い出し、俺は部屋を漁った。
おっ、いいね。揃ってる。
流石は長の娘だ。儀礼用っぽい、明らかに新品の下着と綺麗な民族衣装風のドレスがあった。外套としてフード付きのマントもある。
尻尾穴はないのでハサミを使って開け、服を着て鏡の前に立つ。
「うん、悪くない」
目立ちそうな気がするけれど、みすぼらしいよりはいい。
「それに、思わぬ収穫もあった」
テーブルに目を向ければ綺麗な革袋がある。部屋を漁った成果として、それなりに銀貨が入ったへそくりを洋服入れの奥深くに発見したのだ。
人の姿になった今、将来的に人間とも交流する可能性がある以上は持っていて損はない。だが、これ以上はいらない。貨幣はかさばって重く、持ち歩くにも限度があるから。
ドレスに付いてるベルトに革袋の閉じ紐を括りつけ、家を出て元の場所に戻ると、俺が一番遅かったようで二人が既にいた。
「お待たせ」
「いえいえぇ、私も今戻ったところですからぁ」
「俺は少し待たされたが……まぁ、気にしてはいない。それよりも似合ってるじゃないか」
「ん、ありがとう。二人も似合ってる」
「どうもですぅ」
「ああ」
二人ともこの集落のカラフルな民族衣装を着ている。
ただし、ボタンはビキニとホッとパンツという肌が多く露出した格好で、コンゴウに至っては上半身裸だ。
「それでコンゴウ、これからどうする? 私とボタンは二人が乗れるサイズの空を飛ぶ魔物を探すけど」
「付き合おう。集落が一つ滅んだと知られれば、流石に軍隊か強い人間がここに来るだろうからな」
だよねー。
「じゃあすぐに移動しようか」
「その前に、空飛ぶ魔物に一つ心当たりがある。あの山だ」
コンゴウが指さした先、そこはワイバーンが飛んで来た山だった。
「……そこにいる魔物、もう倒したけど」
「知ってる。落ちたのを見たからな。けどもう一体いる」
夫婦だったのかな?
「なら行こう」
こうして俺たちは山に向かって移動を開始した。
タコ、カニ、ヘビという三体の魔物を引き連れて森の中を移動した為か、他の魔物に襲われるといったこともなく山の麓に到着。
過去に集落の人間が登っていたのか、うっすらとだが山道がある。その道に従って進み、二合目か三合目に到達して見晴らしがよくなったところで、目当てのワイバーンの方から降りて来てくれた。
――が、着地することなく空中から火球を撃ち下ろしてきた。俺たちは回避したが、カニが直撃して火だるまになりながら吹っ飛んで動かなくなった。
「カニさーん!」
あぁ、短い間とはいえボタンも悲しいか。
「焼いたら美味しいと思ってたのでぇ、あとで食べてあげますねぇ!」
前言撤回。食い気があり過ぎる。
ワイバーンは降りてくることなく、まるで空爆のように何度も火球を撃ち下ろしてくる。倒すだけなら簡単だが、乗り物としての価値を損なわずに倒すとなると、俺には手段がない。
「ボタン、あいつに寄生する種は届かないの?」
「ダメですぅ。速くて距離もあるのでぇ、当たりそうもないですぅ」
「じゃあコンゴウ、何か手はない?」
「あるにはある。だがそれは危険が伴う」
話している間にもタコが火球に当たり、丸焼けになりながら吹っ飛んで動かなくなった。
「タコさーん! よく焼けて美味しそうですぅ!」
「……で、コンゴウ、その手段は?」
「俺がお前たちを投げる」
「なるほど。妙案だね」
となると、俺よりボタンの方が効果的だな。
「コンゴウ、ボタンを投げてあげて」
「了解した」
「ふえぇ、なんでぇ!?」
ヘビが火球でやられる中、コンゴウがボタンに近づいて抱き上げると、ワイバーンに狙いを付けてぶん投げた。
「ふええええええええええ!」
ボタンは叫びつつもしっかりと空中で体勢を整え、丸呑みしようと口を開けたワイバーンに向かって頭の花から種を飛ばした。以前よりも弾速がかなり速くなっていて、ワイバーンは口の中に種が入るとごくりと呑み込み、ボタンを食べずに通過した。
旋回したワイバーンの頭にピンクの花が咲き、綺麗に着地していたボタンの前に降りてきた。
「ふえぇ、恐かったですぅ。でも使役できましたぁ」
「よくやったよボタン。これでまた旅ができる」
そして砂漠に着いた時が、お別れの時だ。
「はいぃ。けど、出発は明日にしませんかぁ? お肉を沢山食べたいですしぃ、保存の効きそうな食料とか道具とか、どうせなら持って行きたいじゃないですかぁ」
「それもそうだね。コンゴウもそれでいい?」
「ああ。一日くらいなら大丈夫だろう」
そういうわけで、俺たちは集落で旅支度を整えながら一日を過ごした。




