第九話 ゲームクリア
金曜日までにこのサーバーの主イベントを終えた俺たちは、土曜日は別のサーバーで遊んだ。
ちなみに、新聞には載らなかった。
攻略早かったし、もしかしたら載るかもと思っていたけれど、そんなことは無かった。
――
「あと10分で、魔王が現れます」唐突に画面に表示された。
日曜日の20時50分になった。もうそろそろ、コアタイムが始まる。
もちろん、浩司も裕也もすでにログインしている。
最初の町には、大勢のプレイヤーが集まっていた。
全体チャットは、お祭りのようにざわついている。
「こんなにプレイヤーいたっけ?」
普段の状況を詳しく見ていたわけではないが、とても多いと感じて、聞いてみた。
「いや、中には、見るだけの人もいるみたいだから」
「それに、この時間はお祭りだからね。みんな騒ぎに来るんだよ」
なるほど。いつもの数倍の早さで、全体チャットのコメントが流れる。
みんなそろそろかなと、盛り上がっている。
全体チャットでカウントダウンが始まった。
「5 5 5 5 5 5 4 4 4 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1」
21時になると「きちゃー」と大騒ぎだ。
「おっし、始まった」浩司も裕也も張り切っている。
BGMが消え、不気味な重低音と共に、映像が流れる。
地響きと共に地面が割れ、地面から大きな手が現れる。
大きな手、体には硬そうな鱗、体を支える太い脚、近くの樹をなぎ倒すしっぽ。
巨大な魔王が姿を現した。
こちらには、1000を超えるプレイヤーがいる。全員と一斉に戦うようだ。
夏休みに見た恐竜の模型よりも大きいように見えた。
画面には、デフォルメされてプレイヤーが全員小さく表示されている。
どれか一つでも秘密を解き明かしたプレイヤーは中央の、魔王の目の前に表示されている。
ようく見るとそのうちの一つは自分のようだ。肌が黒く少し目立っている。
そして、見る専のプレイヤーは、その戦闘を傍観するようにまわりに配置されていた。
見る専のプレイヤーに、祈りを捧げるような絵文字の吹き出しが徐々に広まっていく。
恐らく、今は見る専のプレイヤーのターン。祈りを捧げよとでも、言われているに違いない。
魔王のターンだ。魔王が手を振りかざす。
プレイヤーの半分が吹き飛ばされた。
俺たち3人は残ったみたいだ。
「いきなり半分ぐらい死んだんだけど大丈夫?」
「多分、秘密を全部攻略できない人たちはここで振り落とされるんだ」裕也が答えてくれた。
よし、プレイヤーのターンみたいだ。攻撃ボタンがでかでかと表示される。
攻撃以外の選択肢は無かった。迷わず攻撃ボタンを押した。
「いっけー」浩司と裕也の声に、俺も思わず叫んでた。
続いて、魔王のターン。魔王の攻撃で、プレイヤーはまた半分ほど吹き飛んだ。
そんな感じで、プレイヤーの攻撃と魔王の攻撃が繰り返された。
プレイヤーは60人ほどだ。
「なんかだいぶ減ったけど大丈夫なのか?」
「このサーバーは難易度低いから大丈夫だよ。
レベルが十分で秘密を全てクリアしている人たちがいればクリアできるはずだから。
少なくとも俺らがその条件に該当しているだろ」
「それに、お祈りの数、傍観者の数もクリア条件だった気がする。
見た感じ、傍観者の数も足りてるね」浩司と裕也が適切に答えてくれた。
安心して見ていていいらしい。
「それよりも……」裕也がつぶやいた。つぶやきが気になったが、最後の攻撃の演出が始まった。
「東の塔」のカットが右から表示される。
続いて、「西の洞窟」のカットが左から表示され、「南の聖堂」のカットが下から、「北の古城」のカットが上から表示された。
4つのカットが、真ん中で組み合わさり、画面を覆う。
「うぉおぉぉぉぉぉぉりゃぁああああああ!」声優の声が響き渡る。
同時に、勇者の鎧、勇者の盾、勇者の聖なる鎧を装備した勇者のカットインが上から登場。
まるで赤鬼のような顔だ。
「おっ、すげー。TAKASHIじゃん」「運いいな。TAKASHI。やるじゃん」浩司と裕也の声がした。
画面には、「決め台詞を」と表示されている。何でもいいから入力しろという二人の指示が聞こえた。
俺は、急いでセリフを考え入力した。
「くらえ! TKGと言えば、醤油! 必殺 醤油さし」
画面に広がる大きな吹き出しに、入力したセリフが表示された。
そして、斜めに北の古城で入力した技名が表示された。
「必殺 醤油さし」
・・・かぶった・・・。
――
エンディングが流れた。
思ったより、興奮していた。
皆で倒した感じがあった。
全体チャットもお祝いの言葉であふれてた。
「思ったより、面白いなこのゲーム」
「ああ、そう言うと思ったよ」俺のつぶやきに裕也が答えた。
「でも、技名と最後のセリフあれはなくね」裕也の突っ込みに俺自身頷いてしまった。
「ここで表示されるとは思ってなかった」
「まあ、いいんじゃない。お祭りだし。
誰も気にしていないし。それに昔は決め台詞『UNKO』だったらしいよ」
浩司は、そう言ってこのゲームが作られたころのテストプレイの話を教えてくれた。
開発時、未設定の言葉って意味で、Unknownを登録していた。
それが、デモプレイを見せる段階まで残っていたらしい。
それでプレイヤーが面白がって決め台詞を『UNKO』っていうようになったみたい。
開発側も、自由な発言を許す場だからと、止めようとはしなかったんだって。
少しだけだけど、いい話だった。
「でも、これでおわりか、なんか残念だな」
「何言っているんだ。これが始まりだろ。サーバーは無限にある」
「えっ?無限って?」
「あ、知らなかったのか、このゲームはプレイヤーがゲーム自体を作れるんだ」
「そう、このオリジナルサーバーは、デフォルトみたいな役割だね。
みんなこれを参考にして新しいゲームを作るんだ」
「じゃあ、ゲームは今も増え続けているって事?」
「そう、だから、ずっと続く、終わらないゲーム」
「だから、最後のゲーム。LASTGAME」
その日、TKGチームの記録として下記が登録された。
新聞掲載数:3
最優秀賞数:1




