第六話 西の洞窟
朝起きた。昨日の経験値稼ぎ、とてもうまくいったと経験者が言っていた。
「もしかしたら、また載るかな……」そう思って携帯を手に取ってログインした。
いつも通りアンケートが始まる。音や音色、絵の印象を聞いてくる。
どんな意味があるかわからないが、しっかり答えてみる。
ログインボーナスをもらうと、新聞屋を見て回る。
号外がいくつか出ていた。西の洞窟、南の聖堂、北の古城の攻略の情報が出ていた。
それと、経験値稼ぎの情報が更新されていた。
TKG、自分たちのグループの攻略情報が載っていた。
装備品、魔法、とどめの刺し方など事細やかに記載されていた。
また、10000 GC増えていた。ベッドの中で軽くガッツポーズした。
レベルも、35まで上がっていた。初日の塔クリアレベルをはるかに超える。
しばらく、経験値稼ぎは不要だろう。
――
学校に着いた。浩司と裕也と目が合うと、グータッチした。
「また、新聞載ったな」
「ああ、まかせろ」
経験値稼ぎのタイミングは昨日が一番いいタイミングと思っていたのだろう、裕也が答えた。
初日は皆、経験値稼ぎに向かう。そのタイミングで自分たちはぎりぎりだったが塔を攻略した。
昨日は、きっと秘密の攻略に向かうと、裕也は考えたのだ。
そして、その隙間を狙って自分たちは、経験値稼ぎをした。
同じことをするのであれば、レベルが上がっている俺たちの方が、さらに高経験値を稼げるのは道理だ。
思った以上に、裕也はこのゲームに精通していて、策士だ。
ガチ勢がいる中、効率よくゲームを進めている気がする。
――
「今日は、新聞を読まずに、初心で攻略しよう」放課後、いつも通り集まると、裕也が言った。
浩司は少し笑って「いいね、そうするか」と返した。
「新聞読まずにって言っても、お前らもう攻略方法知っているんだろ」
「ああ、俺らは知ってる。だから隆志メインで進めてもらう」裕也が余裕の表情で言った。
もうレベル的には充分だから余裕なのだろう。
道に迷ったりせず、当然のように進行していて、少し味気ないと思っていたところだ。
どんなゲームでも最初は何も情報がない所からスタートするもんだ。
「わかった、新聞読まずに攻略だな」自信満々に答えた。
裕也は少し笑みを浮かべている。何か、企んでいる?
「いつも通り、加速ドリンクとMP回復薬、HP回復薬は各自で用意しておいてくれ」
自分がメインと知って、軽く持ち物についてはお願いした。二人とも、もちろんだと頷いた。
――
西の洞窟の場所は、最初からMAPに表示されていて、最初から行くことはできた。
後は、攻略するだけのはずだ。
昨日のアイテムの残りを全て売り払い、21時まで待つ。
15分前に浩司が、5分前に裕也が現れた。
21時になる。
「さあ、行こう」
まずは、道具屋だ。お決まりの加速ドリンクと、回復薬、MP回復薬を買いこんだ。
使いきれなくても、売れば儲かるのだ。アイテム欄ギリギリまで買うのが正解だ。
洞窟ってことは、もしかして松明も必要?1時間分の松明も念のため買っておいた。
西の洞窟に向かった。浩司と裕也もほぼ同時に現れた。
洞窟の先へ進む。明かりは無く、暗がりだ。松明を買っておいてよかった。
レベルは余裕だと思っている。敵のシンボルは全て避けて進んでいく。
洞窟は行き止まりのようだ。洞窟の中央に小さな台が用意されている。
その台の上に、一つの容器と二つのバケツが置いてある。
この洞窟の最初のギミックだった。台に近づくと、画面に問題が表示された。
「ここに二つのバケツがある。片方は5リットル、もう片方は3リットル入る。
バケツを使って、1リットルきっかり、容器にいれよ」
よく見ると、洞窟の右側には水が流れていた。
この水を使って1リットルの水を用意すればいいってことだ。
少し考えて閃いた。
3リットルのバケツを水で満たす。それを5リットルの方に移し替える。
5リットルのバケツは3リットルの水が入り、あと2リットル入る。
3リットルのバケツをもう一度水で満たし、5リットルに入れる。
2リットルしか入らないから、3リットルのバケツには1リットルの水が残る。
その水を容器に入れた。
正解だったみたいだ。洞窟の奥に、静かに扉が現れそのまま開いた。
似たようなギミックがいくつか続いた。
少し小難しいものもあったが、少し考えればわかった。
そろそろボス戦が近い空気が漂っている。
本当にレベルが十分か、念のため確認しておきたい。
「一回、ここで戦おうぜ」浩司と裕也は「OK」と頷いた。
昨日まで急いで戦っていたから意識していなかったが、このサーバーのモンスターはドラクエ風だ。
オリジナルとされるこのサーバーは一番、ユーザーに親しまれたものを用意しているに違いない。
敵のシンボルとぶつかって、エンカウントすると、敵はメイジキメラだった。
手加減して戦っても、今の自分たちには余裕だ。やっぱりレベルは充分のようだ。
よし、ボス戦が始まる。
ヘビーゴーレムというらしい。とても堅そうだ。
でも、レベルの上がった俺たちには楽勝だった。
時間は大体45分。攻略完了した。
「まあ、こんなもんか。レベル上がっているしな」
「そうだな。隆志にしてはよくできたんじゃないか」裕也が俺の言葉に返した。
その言葉に、浩司がふふっと笑って、反応した。
「こいつさ。ふふっ。この洞窟何回か失敗しているんだ」
裕也は「それは言うなよ」と浩司の口を塞ごうとしてた。
リモートだから物理的に口を塞ぐことはできるわけがない。
「それで、俺を試そうとしたんだな。納得」
攻略も無事に終わり、満足して解散した。




