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LAST GAME  作者: よむよみ
第四章外伝 魔王降臨

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第五十七話 LASTGAME

 そっか……。これだ……。私に必要なものはこれなんだ……。

 私は早速、メールの文章を書き始めた。


「総裁様 各位

 私は、LASTGAMEの運営企画担当、冬飛ふゆとびハルと申します」



 掲示板の記事を読み終えた。LASTGAMEの運営に不足していたパーツに気が付いた。

 新人歓迎会の時の事を思い出す。


 ◇


 一通り挨拶も終わって、十分に酒も入って、皆いい感じだった。


「部長!無料でゲームができるなんてダメです。有料にしましょう!」

「いいや、ダメだ。」私の言葉に、部長は首を横に振った。


「いいか、この国は今、不景気なんだ。子供を産むことですら厳しいくらい不景気なんだ。

 この国は資源国ではない。外貨を稼ぐ必要がある。

 昔は、製造業が盛んで輸出して外貨を稼いで国は栄えていた。

 でも今は、貿易摩擦や人件費の高騰の影響で、海外に工場を移し直接外貨を稼ぐ手段が失われたんだ。

 もちろん、この国は経常収支は黒字だ。投資やサービスで稼ぐ国になっているって事だ。

 その黒字分で国内経済を回せばよかったんだ。

 本来なら、国や大企業がその責任を負うはずなんだ。

 でも、今は国も企業もそれをやらない。


 金持ちや国、大企業は海外にばかり投資する。

 国民がお金を持たないから、投資の対象にならないんだ。

 国民がお金を持たないから、いいものを作っても売れず、人員削減ばかりなんだ。

 国民がお金を持たないから、安い物しか作れず、技術革新が起きないんだ。

 もし、国民がお金を持っていれば、もっと技術や文化が発展したはずなんだ。

 この国には今、お金が不足しているんだ。

 そんな時は働いたって駄目だ。働いてもお金は作れない。

 お金を作るのは国の仕事だからな」


「まーた始まるぞ」と私は笑いながら新人君を見た。

 新人君も笑いながら興味津々に部長を見ていた。


「だから、我々がやるんだ。我々がお金を配るんだ。

 海外ユーザーは有料にして外貨を稼いで、我々が国内のクリエイターに配るんだ。

 幸い、この国の人たちは、教育水準も高く、教養もある。

 正直もったいないんだ。

 だから我々がこの国の文化を形にして海外に売って外貨を得るんだ」


 部長は、立ち上がり右手を高く突き上げた。

「集えクリエイターよ。そして、世界へ羽ばたくのだ!」


 部長が立ち上がって右手を突き上げるポーズは、この会社の名物だ。

 正直、飲み会の後半になると酔っていて何を言っているかいまいちわからない。

 新人君だってわかっていないだろう。

 でも、新人君は、手を叩いて褒めていた。


 この会社の未来は明るい気がした。


 ◇


 部長の立ち上がって右手を突き上げるポーズが、掲示板にかかれていた魔王にそっくりな気がしてふと笑ってしまった。


「そういえば“魔王降臨”ってわが社が試験的に作ったサーバーだったっけ」

 以前、PKプレイヤーキルの実装にあたって、プレイヤー同士が争うシナリオを考えた。

 そのサーバーが“魔王降臨”だったってことだ。

「どうりで魔王の姿と部長が似ていたわけだ」

 あの頃、部長の姿を魔王にしたって噂が出回っていたのを思い出した。

 そして、そっくりな部長を思い出して笑い転げた。


「それにしてもあの時の部長、あつかったな」

 正直、あの時は既に相当量のお酒を飲んでいたから、何を言ったかなんてほとんど覚えていない。

 ただ、小さな会社のただの部長が大それたことを言っていた、という事だけは覚えている。

 酔っていて、覚えていないから、それが正しいかどうかなんて判断しようがない。


 ……、ただ、今なら少しわかる気がする。


 リプレイを売るんだ。

 ゲームの紹介にもなるはずだ。

 そして、海外にも売って、得た外貨で国内の経済を回すんだ。


 ゲームを作るクリエイターによって、ゲームのシステムが作られ、そのシステムの上で国民が遊ぶ。

 そのリプレイだ。感情の無いシステムに、実際の感情を持ったキャラクターが動いている。

 日々増え続けるサーバーの上で、実際のプレイヤーが作り出す物語。

 そんな物語が、それこそ無限に作られるんだ。

 それを売って外貨を得るんだ。


「作られた物語を、リプレイとして本にしませんか」

 メールの続きを書き足した。



 ふと、あるシミュレーションゲームを思い出した。


 文明を操って、勝利条件を目指すゲームだ。

 一番早く勝利条件を達成した文明の勝利となるが、そのゲームには、勝利条件は複数ある。


 戦争によって統一する制覇勝利。

 多くの国から信用を勝ち取る外交勝利。

 科学の発展を追求する科学勝利。

 そして、文明を広めて文化侵食する文化勝利だ。


 もし自国がこのシミュレーションゲームに参加していたら……、と考えたことがある。


 我が国は、小さい島国だ。当然、他国を制圧する制覇勝利なんてできない。

 周りの国とは友好関係とはいいがたい。外交勝利も難しい。

 そもそも、外交勝利は、多数決の原理で周りを屈服する、西側諸国が目指している勝ち方だろう。


 我が国は、知的水準が高く一見、科学勝利もよさそうに見えるかもしれない。

 ただ、宇宙やAIの科学の追求には、どうしても多大な資源が必要とされる。

 資源国ではない我々には難しいだろう。

 戦争が起きるたびに破綻していては、大量の資源が必要とされる研究は難しい。

 地味ではあるが、乏しい資源や外貨を最大限活用する研究ならば、目指すべきかもしれない。


 制覇勝利もダメ、外交勝利もダメ、科学勝利も難しい……。

 とすると、必然的に我々の国が目指す勝利は文化勝利なんだろうな……。

 昔、そんなことを考えていた。


「そうだ……、我々は文化勝利を目指すんだ」

 我々の文化を形にするんだ。

 我々の文化を本として売って、この国の存在意義を示すんだ……。

 そして、この文化が世界に広まった時、我々の勝利となって世界が一つにまとまるんだ。

 我々は争いを好まない、この文化が広まった時、戦争は終わるんだ。


「LASTGAME」

 いつまでも続く最後のゲーム。

 いや、これは終わらせるゲームだ。

 このゲームを広めることで、争いがなくなり、戦争が終わるのだ。


 この国の文化勝利の切り札「LASTGAME」。

 待っていろ、世界よ。もうすぐだ。



 カラン。氷の音がした。

 氷だけのグラスの横に、空になったウィスキーのボトルが置いてある。

「いかん。少し飲みすぎたようだ」

 上がっていた左手を下ろし、彼は椅子に座りなおした。


「魔王降臨」サーバーの魔王は手を突き上げるポーズが印象的だ。

 その魔王は、最後の攻撃をする際に、突き上げる手を左手から右手に切り替える。

 その魔王のモチーフとなっている、立ち上がって腕を振り上げる熱い名物社員。

 彼はまだ、魔王のモチーフは左右の腕で二人いるということは、知らないようだ。


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