第五十一話 魔王
三週目は、皆に書いてもらうことにした。
というのも、自分のいない、とらわれた期間の事は、俺には書けないからだ。
お願いして書いてもらった。
他の同盟に公開することになるから、個人情報や性別は隠すように注意した。
この同盟には多分、そこまで性別ばれを気にする人は居ないと思うけれど……。
さて、本題だ。
一週目、二週目、失敗して気づいたことがある。
三週目の焦点は、悪魔の巣窟にあるはずだ。
一週目、新聞で記事にもされた上に、エンディングのカットインにも登場した「悪魔闇落ち」。
悪魔が、自分の住みかに戻り、さらに奥に進んでいったという記事だった。
マリオが記事のメモを読み上げると、全員で「次はそれだ」といい合った。
とは言え、月曜日はいつもとやることは同じ。レベル上げだ。
「なんかさ。レベル上げしている人多くない?」
「それに暗殺者の数も増えている気がする……」
「なんか、不穏だね……」
レベル上げをしながらそんな会話をしていた。
火曜日、我々は、悪魔の護衛を開始した。
幸い、一番大きな同盟も、悪魔の護衛をするようだ。正直だめかもしれないと思っていた。
「もし、ダメだったら、どうしましょうか……?」
「その時は、四週目は“冴えわたる番外戦術。TKGの外交戦略編”がスタートするだけ」
KOJIの不安そうな発言を、AYATOが笑いに変えた。
そんな火曜日も順調に終わる。ただ……、やっぱりレベル上げ、暗殺者の数の多さが気になった。
他の同盟の人々もレベル上げに従事しているようだ。
水曜日、事前に話し合った通り、TAKASHIとマリオ、KOJIの3人で悪魔の巣窟に向かっていた。
すると、案の定、戦争が起きた。
「一旦、こっちはこっちで何とかする。だからお前らはそのまま調べていてくれ」
ケータが、ボイスチャットで指示をくれた。
俺は、後ろ髪をひかれながらも悪魔の巣窟の攻略を急いだ。
時々、「援軍が増えた」という声が聞こえる。あっちはあっちで面白そうだった。
悪魔の巣窟の最下層、広い部屋につく。
見覚えがあった。一週目の時のエンディングのカット「悪魔闇落ち」の文字の背景として描かれていた場所だ。
悪魔はここから、どこか先へ、進んでいたはずだ。
ボイスチャットから戦争の緊張感が伝わってくる。
急がなくてはいけない……。
遠くから小さな声が聞こえた気がした。「……ケ…。………テ」
しかし、他は何も見つからなかった。
〇ボタンを押しても×ボタンを押してもどこもかしこも反応しない。
全ての個所を調べてみたはずだ。でも何も見つからなかった。
「何もないね……」マリオの声が部屋に響き渡った。
「一回戻ろう」三人は一度、南の平原の悪魔の一軒家に、戻ることにした。
ちょうど戦争が一時中断されていた時だった。
「マリオとKOJIは防衛に参加してくれ」俺はそう言って、悪魔の一軒家の扉を開き中に入っていった。
悪魔は、敵シンボルでありながら、会話ができるようになっていた。
「お兄さん、ポーションでもいかが?」
「いや、ポーションはいらないんだが……」
そう言って俺は、悪魔の巣窟、最下層の広い部屋で聞こえた小さな声の事を話した。
「ああ、私の部屋に勝手に入ったのですね」
「あっ。あなたの部屋だったのか、それはすまない」
「いいえ、大丈夫です。もう使いませんから。だから、この鍵を渡しましょう。
その鍵をかざすと、先へ進めるようになります」
俺は鍵を受け取って部屋を出ようとした。
「ただ……、その小さい声以上に不気味な声がするからやめた方がいいと思う。
オレは気味が悪くなって地上で暮らすことにしたんだからな。
まあ、好き勝手にするがいい」
門を出るときに、そんな悪魔のささやきが聞こえた気がした。
悪魔のささやきって言葉はそういう意味じゃないと言われるかもしれないが、事実だから仕方ない。
「すまないが、このまま防衛をお願いしたい」
「ああ、まかせとけ。そっちは順調か?」
「結果を見ないとわからないが、手ごたえはある」
悪魔の初めての反応に、確かに手ごたえを感じていたんだ。
俺盟主のケンイチとそんな会話をして、再び悪魔の巣窟へ向かった。
最下層と入り口をつなぐワープポイントは、このためにあるようだ。
二度目の移動は一瞬だった。
広い部屋の中へ入っていくと、自動でさらに奥へつながる壁が開いていった。
この鍵はキーレスエントリーのようだ。
中世風の悪魔のくせして、技術レベルは高いと思った。
ボイスチャットからは、再び戦争がはじまりそうな不穏な空気が伝わってくる。
急いで壁の奥の洞窟を下っていく。
とても暗い洞窟だったが、微かに光源があった。
そしてその光源から声が聞こえる気がする。
「……ケテ。タスケテ」妖精みたいだ。妖精がロープで捕まっていた。
俺はそのロープをほどいて妖精を助けた。
「ありがとう。私は光の妖精。
不気味な声になんだろうって思ってきてみたんだけど……、来るんじゃなかったわ。
あなたも、早くここから立ち去りなさい」
そう言って、光の妖精は地上を目指し洞窟を上っていった。
光の妖精がたどった奇跡が、残像として目に残っている。
何本もの直線を組み合わせたような不思議な飛び方をしていた。
妖精が居なくなると、辺りはぼんやりと真っ暗になった。
こんなことならランタンでも持っておくんだった。
薄暗い空間に大きな塊がぼんやり見える気がする。
それに、少し動いているような気もする。
目を凝らして見ようとすると、不気味な声が頭に響いた。
「ほう……。人間か。あのちっこい小生意気な妖精でも、捕まえた意味があったというものだ。
ちなみに、人間よ。念のため聞いておこう。なに、簡単な質問だ。
世界の半分をくれてやるから、我の仲間にならないか」
俺は、迷わず「いいえ」を選んだ。
「ここへ来た褒美をやろうと思ったが……。なら話は早い。消えろ!」
その瞬間、俺は意識を奪われた。
「フッフッフッ。
1000年も我を閉じ込めてきたこの封印の力も、徐々に弱くなってきている。
人間の体は貧弱だが、これぐらいの封印を解くには十分だろう。」
徐々に俺の体が、取り込まれている気がする。
俺の体は、安らかな夢を見始めたようだ。




