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LAST GAME  作者: よむよみ
第四章 魔王の秘密

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第四十七話 二十一日目

 10月21日(日)。


 今日はこのサーバーの最終日。

 先週と違って、人が多い。

 ゲームが進行し、塔が出現するようになって、人がだいぶ戻ってきた。

「えっ?このサーバー、オープニングあったの?見たかったな」

「新聞、全然違うじゃん」

「どうやるの?」

「悪魔倒しちゃいけなかったって本当?」

「じゃあ、前回悪魔を保護していた同盟は正しかったんだ」

 全体チャットは、いつになく盛り上がっていた。


 同盟チャットだって同じだ。

「今回こそ攻略できるはず!」

「次、どこのサーバーになるんだろ?」

 もう次のサーバーの事を考え始めている。


 長浜城の最上階に着くと、モールがいた。

 モールは目線が合うと、声をかけてきた。


「おはようございます。総裁。それより、おめでとうございます」

 んっ?何のこと?という顔をしていると、教えてくれた。

「まだ、新聞を読まれていないんですね?とうとう新聞に載ったようですよ」

 俺は急いで新聞屋に向かい、新聞に目を通した。

 おそらくこの新聞だ。「北の塔の攻略」

 攻略の記録34分57秒で我々が最速だったらしい。

 攻略時間が30分を超えて、俺はあきらめていた。

 すぐには喜べなくて、じんわりと後から嬉しさが込み上げてきた。


 コアタイムが近づき、多くのプレイヤーが集まってくる。

 TKGのマリオを見かけた。俺は嬉しさのあまり声をかけた。


「今回は、勝たせていただきましたよ」

「えっ?何のこと……?ああ、新聞の事ですね。おめでとうございます」

 周りは、ゲームの攻略に浮かれている中、マリオは心配でたまらないみたいな様子だった。

「どうしたんですか?何か心配事ですか?」

「えっ。ああ。まだTAKASHIが戻ってきていないので……」


 そうだった。TKGの総裁、TAKASHIはまだ、とらわれたままだった。

 そして、TKGはTAKASHIを欠いたまま、塔を攻略していた。

 もしかしたら、早くTAKASHIを見つけたい、そう思って急いでいたのかもしれない。


 TKGは純粋にゲームに集中していた。

 新聞に載るか載らないかを競っていた俺は、少し恥ずかしくなった。


 ケンジの「ケンイチも頑張れ!」という言葉を思い出す。


 大きな同盟になりすぎて、大事なことを忘れていたのかもしれない。

 目先の事ばっかり気になって、ゲームを楽しむ姿勢が欠如していたのかもしれない。

 ケンジは、しっかりゲームを観察して、ゲームを知ろうとしていた。

 ゲームを理解しようとしていた。

 そんなケンジからしたら、俺はだらしないように見えていたのかもしれない。

 そんな俺に、少し怒っていて、それが言葉になったのかもしれない。


 そんなことを考えていたら、もうすぐ21時。

 全体チャットのカウントダウンが始まった。

「5」「4」「four」「3」「three」「2」「deux」「1」「un」「0」「今日こそ勝つる」


 ゴゴゴゴゴゴゴォォォォ。

 魔王登場のムービーが始まった。


 街を見下ろす視点。町の外では地割れが起きている。

 街を押しつぶさんとする巨体が現れた。

 肌が赤黒く、耳や鼻が大きい。まるで赤鬼。

 見覚えがある。魔王は、間違いなくTAKASHIだ。

 TAKASHIが魔王に乗っ取られているんだ。


「この時を待っていた」

 魔王はセリフを吐くと、お決まりのように、左手を上げてポーズをとった。

 BGMが今までとはまるで違う。重低音の重なる中に高音のメロディー。

 しびれるような最後の決戦が始まった。


 いつもの村人の祈り、勇者強化の演出の後、魔王攻撃のターン。

 左手を振りかざし魔法を唱えた。

 塔を攻略していない勇者たちは吹き飛ばされる。


 残った勇者たちの攻撃。「謎のお店開店」「洞窟奥深くの闇」のカットイン。

 画面を放射状に6等分し、下二つのピースに二つのカットインが収まった。


 続いて、魔王の反撃だ。再び左手をかざし、勇者を次元の狭間へ飛ばしていく。

 4つの塔を攻略していない勇者達は消え去った。

 こちらには、まだ多くの勇者達が残っている。

 ゲームが進展したと聞いて集まってきた人たちも、しっかりすべての塔を攻略したようだ。


 魔王の攻撃を耐え抜いた勇者の攻撃のターン。

 4つの光り輝く塔を攻略したカットインが、先ほどの二つのカットインと合わせ画面がすべて埋まる。


「今度こそ、俺たちの勝ちだ!盛り上げろ!」

 全体チャットにコメントすると、このサーバー全体でコメントが増えていく。

「いくぞ!」「やれ!」「いまだ!」


 上から、勇者攻撃のカットイン。「ケンジ」だ。

 封印の鎧、盾を身に着け、剣を振り上げ魔王に切りかかる。


「これでとどめだ!」「雷神剣!」ケンジの技名が中央から拡大するように表示された。

 同盟チャットも大盛り上がりだ。ケンジコールが起きている。


 雷神剣が魔王に突き刺さる。

 赤い数字が魔王へのダメージを表示した。ぱっと見では読めないぐらい大きな数字だ。


 皆、勝ちを確信した。



「フッ。フフッ。フハハハハハッッッ。人間とは弱きものよ!

 これで終わりだ!」


 魔王はそう言い放つと、左手を下げ、右手を上げ始めた。



 これでも、だめなのか……。まだ何か足りないのか……。何が足りないんだ……。

 皆が絶望した瞬間だった。


「思う通りにさせるもんか!」どこからか声が聞こえる。


「TAKASHIの声だ!TAKASHIがいる」TKGのマリオのコメントが全体チャットに流れた。


 魔王は右手を思うように上げられない。

「邪魔をするな。お前の体は俺のものだ!」

「今のうちだ。早くとどめを!」


 左から、勇者が剣を振り払うカットイン。TKGのKOJIだ。

「TAKASHIは、俺が守る!」「魔滅水光剣!」勇者と共にKOJIの技名が右に流れていく。


 KOJIの剣が、魔王のコアを破壊した。


「なぜだ。なぜ人間ごときに……、これは夢だ…。これは夢なんだ………」

 魔王の断末魔の叫びが響き渡り、魔王の体が消滅していく。


 魔王の姿が消えた後には、TAKASHIの体が残っていた。

 KOJIやマリオをはじめ、TKGのメンバーが集まっている。

 TAKASHIは目を覚ます。


 画面が白に切り替わると「GAME CLEAR」と表示された。

 ゆっくりと、壮大な音楽と共に、エンドロールが流れ始めた。


 ◇ ◇ ◇


「もうこんな時間か」

 私は、だいぶ長い間、掲示板の記事を読んでいた。


「クリアおめでとう」

「ナイスクリア!」

 この記事には多くのコメントが付いていた。


 ゲームの流れを思い返す。

 このゲームには、いくつか分岐があり、ゲームのストーリーは3つあった。


 1つ目のストーリーは、悪魔を倒すと、悪魔が魔王と融合しゲームオーバー。

 2つ目は、悪魔を保護し、そのまま何もしないと、ゴーレムと魔王が融合しゲームオーバー。

 3つ目は、悪魔を保護し、プレイヤーが魔王と融合する。この時だけ攻略可能になる。


 この掲示板では、1つ目のストーリーを“ケンジ”、2つ目を“モール”、3つ目を“ケンイチ”が記事にしていた。


 このサーバーは、以前は攻略されていたが、最近は攻略に失敗していたという。

 ゲームの攻略には悪魔の保護が必須の条件になっている。

 おそらく、話題になってプレイヤーが増え、無意識に悪魔を倒してきたからだろう。

 エンディングや、暗殺者という職業の意味に気が付かないと、ずっと攻略できない仕掛けだ。


 ストーリー自体はとても単純だった。

 地面から現れた魔王を倒す。言葉にしてしまうと簡単なストーリーになる。

 特に面白いというギミックやストーリーは無かったと思う。

 しかし、そのゲーム上で人がロールプレイすることで多くの物語が生み出されていた。


 例えば、ゲームの仕掛けの上で、たびたび戦争が起きていた。

 悪魔を保護する勢力と、悪魔を倒す勢力。

 間違いなく、悪魔を保護するという簡単な仕掛けが、この戦争の引き金になっている。


 ゲーム制作者の仕掛けの上で、人々が実際にロールを演じ、物語を作る。

 TRPGテーブルトークアールピージーではこれほど多くの人数を同時にはさばけないだろう。

 このゲームだからこそ作られた物語だ。

 そしてこの物語はゲーム制作者とそれを遊ぶプレイヤーによって無限に作られていく。

 実に興味深い。


 こうなってくると、このストーリーをもう少し知りたくなってくる。

 まだ、明かされていない物語がある。


 幸い、この記事にはさらに続きがあった。

 ちょうど、私の知りたかったところ、TKG側の視点の物語が続くみたいだ。

 行方不明だった間、TAKASHIは何をしていたのか、明かされることだろう。


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