第三十六話 八日目
10月8日(月)19時頃。
本日から、私、副総裁を務めさせていただいておりますモールが記載させていただきます。
再三、アスキーアートはダメって言ったのに、使っちゃうなんて!
書籍化できない……、じゃなかった、文章として少しダサい、表現力が皆無な証拠なの!
それに、それだけじゃない。
掲示板とは言え、読者がいるのだから多少盛り上げるのは許そうと思うの。
「ご慧眼」なんて言葉、私一回も使ったことないけれど、ある程度は許してあげるの。
記事のせいで、同盟員の人たちが、今まで姫プレイさせてくれていたのに、急に秘書プレイに変わったの。
だけど、少し楽しかったから、そこは許そうと思うの。
でもね……。ここは攻略掲示板なのよ。嘘はダメヨ。攻略記事でなくなってしまう。
というわけで、本日から、私モールが記事を記載するの。
どうぞよろしくてよ。
日曜日私たちのメインサーバーは「GAME OVER」となってしまった。
私たちは当然、再挑戦している。攻略まで続けるのが私たちの同盟の鉄則。
負けっぱなしは悔しいものね。
私はというと、せっかく次のサーバーを決めていたのに、とてもがっかり。
美人秘書が異世界転生して魔王に見初められて大活躍してざまぁする話。
とても楽しみだったのに!!!
「GAME OVER」のせいで、先送りになってしまった。ちょっとショック。
「GAME OVER」になってから、解析班は一斉に、次はどういう行動をするべきか考えてる。
他に、何かしら秘密があったのでは、とか、もっとくまなく捜査するべきとか、
街にいたモブキャラが怪しかったとか言っている。
しらみつぶしの捜査や、根性による調査は、解析班の得意とするところ、新しい情報が見つかるに違いない。
「とりあえず、サーバー初日の今日は、何かやらないといけない事あると思う?」
「いいえ、初日はおそらく経験値稼ぎで問題ないと思います」
「そうよね。私もそう思ってた。ではいつも通り、経験値の調査お願いね」
「了解しました。ミス モール」
解析班は、早速秘書プレイに切り替わっている。
以前は“YES,Sir! プリンセスモール”だったと思う。
ちなみに、姫プレイってのは、こんな言葉遊びだけじゃないの。
私の事を御姫様のように過保護に守る遊びのことよ。
私がどんなに軽率なプレイングをしても、危険な行動をとっても、周囲が身を挺して守ってくれるのをみていると、とても楽しいんだから。周囲もそれが楽しいって言ってるの。
長浜城の最上階にて、同盟チャットの様子を確認していると、総裁のケンイチが現れた。
「おはようございます」
「おはよう。今日もはやいね」
「はい。情報収集こそ副総裁の腕の見せ所ですので」
「いつも頼りにしてるよ。美人秘書さん」ケンイチは笑いながら私を秘書と呼んだ。
眼鏡はかけていないが、つい右手で眼鏡を上げる仕草をしてしまう。
「ところで、初日の今日は、経験値稼ぎだよね」
「ご慧眼です」キリッ。ついに私にまで記事の影響が……。まあ楽しいからいいけど。
「解析班にも確認しましたが、本日は経験値稼ぎとなります。
場所については既に解析班に依頼済みです」
「ありがとう。いつも助かっているよ。
よし。気合を入れて、経験値稼いで、新聞に載るぞ!」
21時。コアタイムが始まった。
ケンイチは経験値を稼ぎに、解析班が事前に調べていた場所に既に向かっている。
私は、長浜城、最上階で、情報収集をしていた。
今なお、解析班がさらに新しい情報を連携してくれている。それを見ている。
情報を取捨選択しながら同盟チャットを眺めていると、きた。
最大経験値と思われる敵の情報だ。
「NP。バブルポット。35000」
North Plain、北の平原で経験値35000のバブルポットという敵が見つかったという情報だ。
早速、ケンイチに連絡し、移動を促す。私も直ちに、北の平原に向かい、経験値稼ぎに参加する。
それから、時折、新しい情報がないか確認しながら経験値稼ぎを行った。
◇
「ありがとう。今日は大分経験値稼げたな。大同盟だと情報が早くていいね。
これなら、新聞載れるね」
「……」私は、口をつぐんでしまった。
「どうしたのかい?もしかして何か問題でも起きていたのかい?」
私は言葉にした。
「途中から、TKGが現れました。
彼らもそこが最適と判断し、同じ場所で戦っていたみたいです」
「でも、我々の方が早かっただろう」
「確かに、私たちの方が先着はしていました」
「なら我々の方が経験値は高いはずだ」
「ただ、彼らは皆、暗殺者でした……。
解析班に確認すると暗殺者には経験値ボーナスがあるとか」
「なに!全員暗殺者だと。随分偏った編成だな」
「はい。我々はPK禁止のため、暗殺者は少なめです。
そしてそのために、経験値については彼らの方が多いだろうと解析班は言っています」
「なるほど。経験値稼ぎの新聞に絞って狙いに来たという事か」
「TKGの目的についてはわかりかねますが、おそらくそういう事だろうと思います」
「彼らもなかなかやるな。人数の多い我々に勝つためにそこまでやるということか。
気を引き締めないといけないな」




