第三話 最初の冒険
PCでもできるらしい。家に帰ったら早速、調べてPCからログインした。
ゲームの中では、訓練が終わって元の場所に戻ったところだった。
HPや技力は回復している。1プレイごとに回復するらしい。
なるほど。だから最後の方、魔法使ったんだな。
ただ、訓練で得た物はほんのわずかだった。レベルも全然上がっていない。
コアタイム以外の時間はあまり儲からないという、浩司の言葉を思い出した。
20時45分になった。15分前だ。早速PCでログインした。
コージは既にいた。ピコーンと音がする。
「ボイスチャットを有効にしますか?」と画面に表示された。
迷わず「はい」を選択すると、聞きなれた声が聞こえてきた。
「思ったより早く来たな」「ああ、最初で遅れたくはないからな」
「いい心がけだよ」「裕也は?」
「まだ来てないな。5分前にきたらいい方だよ」浩司は残念そうな声をしている。
20時50分になった。裕也がボイスチャットに参加した。
「今日はいつもより早いな」
「いや、せっかくだから、東の塔攻略しようと思ってさ」裕也は張り切って答えた。
「おっ。大変だけどやるか」「あーやろうやろう」初心者の俺は、話しについていけない。置き去りだ。
「隆志!コアタイムになったら、道具屋はSALEで7割引きになる。そうしたら回復薬を買えるだけかってくれ」
「ああ、わかった。」いつになく真剣な裕也の声に押されて、質問はやめてそう答えるしかなかった。
「浩司はMP回復薬を、俺はちょっと高いけど加速ドリンクを買う」
「本気だな」少し楽しそうにしている浩司の声が聞こえた。
「30分まで東の空き地でレベル上げ、そこから一気に東の塔の攻略までやろう」
いつもお茶らけている裕也の声は無い。はきはきとした声に、自分の緊張感も高まってきた。
「時間との勝負だ。さあ、やるぞ」「おし」浩司の声にも緊張感が乗り移っていく。
不思議な高揚感につつまれて時計を見つめた。21時まで、5、4、3、2、1。
「さあ、時間だ」裕也の声が聞こえた。
早速道具屋で言われた通り、回復薬を買えるだけ買った。
最初の持ち金を全部使いきった。でも、値段は7割引きだから、それなりに買えた。
早速、東の空き地に向かった。
「加速ドリンクを渡すから飲め。個々の敵は少し強めだからレベル上がるまで全力で」
裕也の指示が飛ぶ。
「MPが尽きたら、MP回復薬渡すから、声をかけてくれ」浩司の声も聞こえた。
加速ドリンクを飲む。MAP上での速度が一定時間上昇する。体感2倍。
MAP上の敵めがけて突っ込んで、エンカウントする。
言われた通り、最初から一番強い技を使う。一撃では倒せない。4回ぐらい技を使った。
MP切れになりつつもぎりぎり倒せた。HPはぎりぎりだ。
「どのステータスに割り振りますか?」レベルが上がったようだ。割り振り画面が表示された。
「勇者はオートで均等に割り振ればいい。それよりできるだけ多くの敵を倒してくれ」
裕也から的確な指示が飛んだ。レベルは3も上がっていた。
「コアタイムでの経験値は、4倍なんだ」浩司が教えてくれる。
レベル上昇時に、HPは回復したが、MPは回復しない。浩司にMP回復薬をもらいMPを回復する。
レベルが上がって、強い技と通常の攻撃の計2回の攻撃で倒せるようになった。
徐々に、相手のHPもわかって、効率の良い倒し方がわかってくる。
30分間スムーズに敵を狩り続けた。
「よし、東の塔に行くぞ」30分経過したようだ。裕也の声がした。
加速ドリンクをもらい飲みながら、裕也の向かう方へ急ぐ。
東の塔に入った。東の塔を見上げる演出が入る。裕也は階段を上っているようだ。
敵にあたってエンカウントしないようにしながら、裕也についていった。
3階まで、上って裕也の声がする。
「ここで少しだけ、最後のレベル上げをする。MP回復薬は充分あるから最初は全力で」
言われた通り戦った。数は少ないが、空き地よりは格段に強い。
最終的にレベル15まで上昇した。
「さあ、ボスの部屋へ行こう」裕也は、戦闘を切り上げさらに上の階へ向かっていった。
途中、いくつか悩ませるギミックがあったと思うが裕也は簡単に謎解きを終わらせ上っていった。
「ボス戦は勇者だけが攻撃役だ。回復薬を全部俺に渡してくれ」浩司の声が聞こえた。
俺は言われた通り、回復薬を全て浩司に渡した。
東の塔のボス戦だ。ボスはドラゴンだった。
太いしっぽに、炎を吐く口、見た目の通りに強そうだ。
「最初のうちは、俺の後ろで、敵の攻撃を見ていてくれ」浩司の声に、俺は従い、浩司の影に隠れた。
「ゴオォォォ」ドラゴンブレスが飛んでくる。
浩司は、初期装備の小さい盾で耐えている。
「浩司は盾役。だから防御に全振りしてあるんだ」
ドラゴンブレスと、しっぽによる攻撃、腕や足の攻撃が交互に飛んでくる。
段々リズムがわかってくる。俺は浩司の後ろから飛び出して、攻撃を開始した。
しっぽの攻撃の時は、後ろに回り込んで、足への攻撃。
腕や足の攻撃の時は、一旦後ろに下がる。
ドラゴンブレスの時は、左右に交わして下がった首を攻撃だ。
時折ダメージを受けてしびれた時は、浩司の後ろに逃げて回復薬をもらう。
よし、慣れてきて、ダメージを受けずに攻撃できるようになってきた。
時々、盾の後ろに隠れた裕也の巨大魔法が飛んでいる。
魔法詠唱中は動きがとても遅くなる。だから盾での防御が必要なんだと理解した。
「まずい、あと1分だ。全力で攻撃しろ」浩司の声が飛んだ。
時計を見た。59分だ。そうだ60分でゲームが終わるんだ。あと1分のうちに倒しきらねばならない。
ガンガン技を使って、MP回復薬で回復して攻撃していく。
「いっけー!くらえ必殺技!」時間的に最後の攻撃だ。間に合うか?
ドラゴンが倒れた。ドラゴンが消えていく。倒した時の演出みたいだ。
「ぎりぎり間に合ったみたいだな」「ああ」裕也と浩司の声がした。
「お疲れ!おめでとう!」浩司が皆に声をかけた。
「今日はこれぐらいにしよう。また明日な」
「今日はありがとう!」そう言って、ログアウトした。
ふうっ、と息が抜けた。今まで緊張していたみたいだと初めて気が付いた。
時間制限付きの冒険。思ったよりスリリングだった。
アイテムやMP消費、レベル上げ、ボス戦。全てのバランスがとてもいい感じだった。
すごい集中していた気がする。こんなゲームは初めてかもしれない。




