第二十五話 六日目
今日は土曜日。会社はお休み。
普段なら、10時前に起きだして、パチンコにでも向かうところだった。
でも今日はやめた。お金が無いからではない。
ゲームをやりたかった。だから、朝起きたら、ゲームにログインした。
ログインしてすぐに新聞を読む。
鍛冶屋の1位は俺だった。ノーミスなのだから当然だ。
顔が少しほころんだ。
チームTKGは、順番的に、昨日は「風の塔」を攻略したはずだ。
「風の塔」の攻略記事を読む。チームTKGは載っていない。
オリハルコンの入手もしていたから当然だ。
風の塔は、谷の奥深くに隠されている。まずは入り口を探すところから始まる。
スピードドリンクを飲み、できるだけ敵とのエンカウントをさけ、エンカウントしたら霧の爆弾で逃げる。
そうやって走って走って走って探して、ようやく見つけることができる。
この世界の塔はメルヘンチックに統一されているようだ。とてもかわいらしい。
そして、塔の最上階に風の精霊がいる。
風の精霊は、塔の存在と同じように存在自体がぼんやりしており、どこにいるかわからず闇雲に攻撃することになる。
ただ、全てを照らし出す光と、存在を固定する白紙の新聞を用意しておけば、攻略は簡単らしい。
新聞屋の空白の欄から購入可能な“白紙の新聞”。そんなものがあったなんて知らなかった。
使うと、新聞に風の精霊の場所が記載され、場所が固定されるらしい。
使い道のないライトという光を放つ魔法とともに、新聞を使おうと記載されていた。
一通り読みたい新聞を読み終えると、鍛冶を行うことにした。
今日のコアタイムは別の事をしたい。だからオリハルコンは今使うことにした。
「上級装備+20」ができた。
コアタイム以外で作ったものとしては上等だったが、さすがにコアタイムに作ったものと比べると弱い。
装備してみた。「上級ハンマー+20」になった。
それから、時間の許す限り、今俺が最善と思う行動をした。
コアタイム以外で有効なのは、農家と薬師だ。
この二つの職業は、コアタイム関係なく時間に許す限り楽しみたい方向けのようだ。
ひたすら、素材を集めては調合をしてアイテムを効果的にさばいた。
そうやって、エリクサーをいくつかと、防具を買いそろえたところで時間が来たようだ。
チームTKGが現れた。
「こんばんは!よかったら今日、自分を冒険に連れて行ってください」そうチームTKGに声をかけた。
日頃の鍛冶の経験値で、レベルはそこそこ上がっているし、アイテムもある。
邪魔にはならないだろうと思っている。
けれど、経験値稼ぎも行っているうえに、日々塔の攻略をしている彼らには少しレベルは劣る。
「ケータさんならいいですよ」彼らは、嫌がることなく自分の提案を受け入れてくれた。
ボイスチャットに招待してくれた。
チームTKGの皆は、思ったより若い声だったし、それに何よりもマリオは女性だった。
「マリオさんって女性だったんですね」
「あっ、はい。女性の名前だと声かけられるのが鬱陶しくて、男キャラクターの名前にしました」
軽いあいさつの後、今日の攻略手順を皆で確認した。
俺のために少しだけ経験値稼ぎをしてくれるらしい。
その代わり、昨日まで行っていたオリハルコンの入手はしない。もう必要ない。
それと、道具屋でまだ使用目的の無いゴム手袋と凝固剤は買っておこうという話になった。
コアタイムになると値段が安くなる。買えるものは今のうちに売っておいて買いなおす。
スピードドリンクをいくつかと、後は回復薬を買っておこうという話だった。
コアタイムになる。早速道具屋でゴム手袋、凝固剤、スピードドリンクと回復薬を買った。
雷の塔の場所にたどり着く。メルヘンチックなムービーが流れる。
地上で高速飛空艇に乗って、それを操作し雷の塔を目指す。
途中雲が邪魔をするので避ける迷路が現れる。その迷路は時間と共に少しずつ変化していた。
やっかいだな、と思っていると、TAKASHIが凝固剤を使った。
雲は固定され、迷路は変化しなくなった。
普通、初見で気づけない。俺は驚いていたが、彼らは平然と先に進んでいく。
塔にたどり着く。スピードドリンクを飲んで、どんどん敵をかわして上へ登っていく。
ボスは雷の精霊。とても痛そうな雷攻撃をしてきたが、ゴム手袋のおかげで平気だった。
「神の杖+200」を装備したごーやが、ボスをあっさりと撃破した。
「この世界、結構こだわりが多そうだったから、アイテム気にしていてよかったな」
「ああ、でも“白紙の新聞”に気付けたのが、すごかった」カージの言葉にTAKASHIが返した。
「いやいや、ライトという魔法を使ったから、俺も気が付けたんだ。
それを言うならぐーやがすごい」
昨日風の塔を、初見で、ライトという魔法と“白紙の新聞”を用いて攻略したらしい。
あんなの初見で気づけるはずがないと思っていた。
このチームはやっぱり自分とは違う楽しみ方をしていたみたいだ。
時々、マリオの笑い声が聞こえる。男3人の反応を楽しんでいるようだった。
俺は、彼らの話を聞いて、感心するばかりだった。
「柔らかいタッチの画風も、新しい職業も、アイテムのギミックも、私気に入っちゃった。
この人の作ったサーバー、要チェックしなきゃ」マリオの言葉に、他の男たちも頷いた返事をしてた。
このゲームは、プレイヤーが作っているらしいとその時初めて知った。
だから様々なゲームがある、妙なギミックが使われている物があると教えてくれた。
「後は、ForTの意味だな」
「えっ、Four Towerで4つの塔って意味じゃないの?」
「なんかもう一つ意味がある気がする」カージとTAKASHIの会話が聞こえた。
今日一日、昔の俺の方法でこのゲームに挑んだけれど、彼らの方がはるかに上だった。
わかっていたけれど、今日、それを試せてよかったと思った。
彼らのように、柔軟に、集中力と閃きでゲームを楽しんでいきたい、そう思った。




