第十三話 知力の塔
チームTKGは、その後、特定の場所を決めて、時間の限り戦っていた。
よく見ると、経験値の高いモンスターが集まっていたみたいだ。
初日はレベル上げを優先するというのが、彼らなりの方法なのかもしれない。
次の日も、授業を終えて家に帰ると、ゲームの進行状況を確認した。
大抵のサーバーは月曜日から始まり、日曜日に終わる。だから今日は火曜日だ。
初日は皆、レベル上げを優先するものらしい。
「経験値稼ぎならここ」という新聞には、異次元の記録が記載されていた。
記事の内容を読むと、昨日チームTKGが最後に戦ってた場所だ。
チームTKG……、きっとゲームIQが高いのね。なかなかやるわね。
コアタイムが近づいて、チームTKGの皆も集まってきた。
今日はどこへ行くんだろう。少し楽しみにしている自分がいる。
道具屋の前に集まっていた。
なるほど、コアタイムになったら7割引きになるから、まずはアイテムを買うのか。
数秒のうちに必要なものを買い集めたみたい。
加速ドリンクを飲んで、あっという間にどっかに行っちゃった。
頑張って探したら、知力の塔に集まっていた。今日はここを攻略するらしい。
だんだん彼らの解像度が高まってきた。
これならわかる。私には聞こえる……、彼らの声が、呼吸が……。
――
知力の塔に移動すると、映像が流れる。
東の塔に似ているが、少し違う。この塔は幾何学的な形をしている。
「なんか変わった形をしているな」誰かのつぶやきが聞こえた。3人で一緒に塔に入った。
この塔のモンスターは変な形をしていた。
いや形自体は見覚えある形なんだけれど、モンスターとしては見たことのない形だ。
幾何学的、というより、どのモンスターも三角形だった。
塔の一階の壁面には三角形が描かれていた。正三角形ではない。いびつな形をしている。
角度は〇、×、△。長さはa、b、cみたいだ。
記号でそう書かれているのだ。
数学の授業風に言い換えるなら、三角形ABCに対し、角BACは〇、角ABCは×、角ACBは△、
辺ABの長さはc、辺BCの長さはa、辺ACの長さはbという具合になるだろう。
「一応一度だけ戦ってみようぜ、どんな敵でどんな強さなのか気になる」
「そうだな。そうしよう」TAKASHIの声をコージが肯定した。
三角形の形をしたシンボルにぶつかって、敵とエンカウントした。
4つの三角形が同時に現れた。少しずつ大きさや形が違うようだ。
初め、皆、ばらばらに攻撃してた。
何回か攻撃するうちに、攻撃に正解と不正解があることに気が付いた。
不正解の敵に攻撃しても、ダメージは与えられず、三角形の辺がぐるりと回転して逆に反撃を受けた。
「あれっ?何か、法則性があるのか?」TAKASHIの声にぐーやが答えた。
「わかった。多分、壁に描かれていた三角形と相似の三角形を探すんだ」
TAKASHIはなるほどと思った。
三角形の反撃は、三角形の相似の条件が不足していて、形が固定されていないからだ。
形が固定されていないから、辺がぐるりと回転して、攻撃してくるんだ。
「ああ、そっか。似たやつを見つければいいんね」
もう一度、壁面を見直した。形を頭に入れた。
それから、4つのうちの似た三角形の敵を攻撃してた。
「あっ、ときどき合同なやつもいるっぽい」ぐーやの声が鳴り響く。
コージとTAKASHIは「了解」と答えて攻撃対象を変える。
「なるほど合同な奴を倒すボーナスがもらえるみたいだな」コージの声だ。
一通り倒し終えると満足したのか、さらに上の階へ向かった。
「あれっ、もうボス戦だ」2階の赤い壁を見て、TAKASHIがつぶやいた。
「まだ、製作途中なんだろう。作られたサーバーは未完成な事もある」
「なーほーね」コージの説明にTAKASHIは納得したようだ。
「じゃ、一度戻って、1階で敵を狩ろうぜ」ぐーやの提案に皆頷いて一階へ向かった。
35分間ぐらい1階で戦った。合同な敵を倒したボーナスを抱え皆嬉しそうだ。
そのまま、2階のボスへ向かった。
幾何学的な音楽がする。幾何学的な音はどこか神秘的に感じるから不思議だ。
ボスは部屋の遠くにそびえたっていた。
そして向かうのを邪魔するように、雑魚敵が立ちはだかった。
攻撃可能な雑魚敵はいつでも4体。この部屋も、一階と同じように何らかのギミックがありそうだ。
何回か攻撃していて気付く。
中心から二本の線が出ている円を表す敵と、ボスまでの距離を表す敵を攻撃すればいい。
他の敵はダミーのようだ。
ダミーを攻撃すると自爆されて、大きなダメージを食らう。
正解の敵を見極めて、ダミーに惑わされずに攻撃するだけのはずだ。
ギミックがわかれば後は簡単だ。攻撃するだけ。
レベルが不十分なのか少し時間がかかったけれど時間には余裕をもって倒せた。
「やったな」
「結局、なんだったんだろうな」
「まだ、途中みたいだしよくわからなかったな」
「いづれにせよ、この塔はクリアだな。ありがとう、お疲れ様」
皆、挨拶を言って解散した。
――
ふふふ。きっとこんな感じね。
想像の物語だけど、誰も敵を作らない、とても素敵な物語だったわ。
そして、想像の彼らの言う通り、この塔には本当は続きがある。
1階は、三角形の相似を探すゲーム。
三角形の相似条件は、下記の三つ。
・3つの辺の比がすべて等しい
・2組の辺の比が等しく、間の角が等しい。
・2組の角がそれぞれ等しい。
そして時折、合同なものが混ざっている。合同条件は、下記の3つ。
・3辺の長さが等しい。
・2辺とその間の角がそれぞれ等しい。
・1編とその両端の角がそれぞれ等しい。
2階は、遠くにいるボスの高さを求めるゲーム。
遠く物体の高さを求めるには、距離と角度がわかればいい。
角度がわかれば単位円を描いて、距離と高さの比がわかるからだ。
彼らは1階と2階を難なくクリアした。相似とは、合同とは、単位円とは、が理解できたに違いない。
三角形の相似と単位円の概念が身に着いた彼らなら、きっと三角関数もスムーズに学習できるだろう。
そう、この塔のテーマは、数学の三角関数だ。
三角関数は難しい。よく聞く話だ。
だけど、公式の記憶方法ばかりで、三角形の相似や単位円の話題は出てこなかった。
それが不思議だった。
三角関数は三角形の相似と単位円を応用して便利になったもののはずなのに。
本来であれば、この塔はさらに、三角関数の細かい部分へと続くはずだ。
私の時間が無い事もあって、一旦ここまでにしておいた。
というより、三角関数のテーマで敵キャラとか戦闘とかのイメージが思いつかなかった。
でも、きっといつか、誰かがこの塔の続きを描いてくれる気がする。
私なんかより、ずっと数学が詳しい人がきっと完成させてくれる。
そういう意味では、未完成なまま投稿できるのも、このゲームの魅力と言える。
ゲームは日々、新しいクリエイターによってさらに進化していく。
最近、オリジナルサーバーで新しいイベントが発見されたという話だ。
もしかしたら、クリエイターが難易度調整として追加したのかもしれない。




