ほの熱
スーパーで食材買い込み、三条は答えの出ないまま、一瀬の背中を追うようにバイクを走らせた。
着いた先は一瀬の自宅だった。
「…おじゃまします(お兄さんの雰囲気的にワインセラーありそう)」
静かにドアを閉め、靴を脱ぐ。
本来ならコンビニで弁当かパンを買っていた筈だったが、それが一瀬の自宅へと化けてしまった。
「座って待ってろ」
一瀬は台所に立ち、昼食の準備を始める。
★
「出来たぞ」
スマートフォンの画面を見ていた三条の前に、お茶の入ったコップ、湯気が立つチャーハン、カット野菜を彩るミニトマトのサラダが並んだ。
「美味そう…!いただきます」
先ずはチャーハンを一口、レンゲで運ぶ。
「美味しい!お兄さんめちゃくちゃ美味しいよ!」
「そうか」返事は短い。
気のせいかもしれないが、口角が微妙に上がっているように見えた。
三条の胸の奥が、知らぬ間に少し熱くなる。
食後、一瀬は台所で煙草を吸っていた。
三条も吸おうと手を伸ばすが、緊張で立ち上がれなかった。
気付けば、外は夕方。
「先に風呂入っていいぞ」
「あ、うん」
帰る事は頭の片隅にあったが、脳内のどこかで“このままここに居たい”と思っていた。
三十分程して風呂から上がると、
「お兄さん、服までありがとう」
「ん」
三条はベランダに出て煙草を吸い、緊張を追い出すように何本も火をつける。
風呂から上がった一瀬は、三条がリビングに居ない事に気付き、カーテンの隙間から後ろ姿を見つめる。
「お兄さんごめん、煙草吸ってた…ってか、酒の数が凄い」
「ウイスキーをロックで飲む位だ、ワインとかも飲めるだろ」
「飲めるけど、何その判断基準」
三条は一瀬の隣には座らず、足元に座る。
一瀬はワインを一口流し、気の抜けた声で言った。
「お前、煙草吸ってる時のしゃがみ方ヤンキーだよな。ちゃんと男なんだな」
「えー俺ちゃんと男だけど」
「いや、唯の変態かと思った」
三条は半笑いで答える。「女装なんて高校の文化祭以来だけどね」




