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初恋泥棒のホスト様  作者: 男鹿七海
9/20

ほの熱

 スーパーで食材買い込み、三条は答えの出ないまま、一瀬の背中を追うようにバイクを走らせた。

 着いた先は一瀬の自宅だった。


「…おじゃまします(お兄さんの雰囲気的にワインセラーありそう)」


 静かにドアを閉め、靴を脱ぐ。

 本来ならコンビニで弁当かパンを買っていた筈だったが、それが一瀬の自宅へと化けてしまった。


「座って待ってろ」


 一瀬は台所に立ち、昼食の準備を始める。


 ★


「出来たぞ」


 スマートフォンの画面を見ていた三条の前に、お茶の入ったコップ、湯気が立つチャーハン、カット野菜を彩るミニトマトのサラダが並んだ。


「美味そう…!いただきます」


 先ずはチャーハンを一口、レンゲで運ぶ。


「美味しい!お兄さんめちゃくちゃ美味しいよ!」


「そうか」返事は短い。

 気のせいかもしれないが、口角が微妙に上がっているように見えた。


 三条の胸の奥が、知らぬ間に少し熱くなる。

 食後、一瀬は台所で煙草を吸っていた。

 三条も吸おうと手を伸ばすが、緊張で立ち上がれなかった。

 気付けば、外は夕方。


「先に風呂入っていいぞ」


「あ、うん」


 帰る事は頭の片隅にあったが、脳内のどこかで“このままここに居たい”と思っていた。

 三十分程して風呂から上がると、


「お兄さん、服までありがとう」


「ん」


 三条はベランダに出て煙草を吸い、緊張を追い出すように何本も火をつける。

 風呂から上がった一瀬は、三条がリビングに居ない事に気付き、カーテンの隙間から後ろ姿を見つめる。


「お兄さんごめん、煙草吸ってた…ってか、酒の数が凄い」


「ウイスキーをロックで飲む位だ、ワインとかも飲めるだろ」


「飲めるけど、何その判断基準」


 三条は一瀬の隣には座らず、足元に座る。

 一瀬はワインを一口流し、気の抜けた声で言った。


「お前、煙草吸ってる時のしゃがみ方ヤンキーだよな。ちゃんと男なんだな」


「えー俺ちゃんと男だけど」


「いや、唯の変態かと思った」


 三条は半笑いで答える。「女装なんて高校の文化祭以来だけどね」



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