残り火
現在の二人は妙な関係であるが、一瀬辰樹と三条政宗は友人ではない。関係性で言えば多分知人なのだろう。
だから、一瀬が三条に境界線を引いた以上、そこで関わりが無くなったとて、変な男と関わった二ヶ月間だった、で、終わる。
だが、そうはいかなかった。
三条は、翌日以降も一瀬に会いに来た。店には週に一、二回は来店している。極めつけは、飲み歩いているのか、店の壁際に寄りかかり煙草を吸いながら、一瀬を待っている事もしばしば。
「お前マジでなんなんだよ。どんな神経してたら、俺に会いに来れんだ」
大きなため息が出た。ここまでくると、呆れるより先に感心してしまう。
「その割に家にあげてくれるし、なんなら今日は居酒屋に誘ってくれてるよね」
三条の言う通り、嫌なら、嫌っているなら、断るなりなんなりすればいい。
境界線を引くだけ引いて、それを一瀬はしなかった。
「まぁ、そうだな」一瀬はビールを勢いよく煽った。(俺も大概だ。コイツの言う通り、断れば済む話だろうに)
「でも意外だなぁ。お兄さんの口から居酒屋が出てくるなんて」ビールジョッキの縁をなぞりながら言葉にした。
「ハッ、そうかよ。だが、俺だって零と渚と呉羽とたまに来るけどな」
三条は目を丸くした。「え、零さんも!?お兄さんと零さんが居酒屋とか似合わねぇ。絶対バーで飲んでそう」
「俺等に対する偏見ヒデェもんだな」
三条が悪意を込めて言っていないのは、一瀬も判っていたので、笑い話となった。
それでも、三条の視線が逸れない事だけが、妙に気に掛かった。




