間(あわい)
三条は久しぶりにホストクラブに来店していた。この眩しさも相変わらずだ。
キャスト二人が別の席にヘルプで呼ばれ、三条の席に来たのは龍夜と零だった。残っていたもう一人のキャストも別の席に移っていった。
「妹ちゃんさっき振りだね」
「さっきはありがとうございました。珈琲美味しかったです」
「何だ、お前等プライベートかアフターで会ってたのか」そう言う一瀬の目は刺すような目付きをしていた。
「女の子と別れた時に偶然会って、お茶してただけだよ。あ!もしかして、龍夜ってば嫉妬?」
「誰がこんなクソガキに嫉妬なんかするかよ」一瀬は鼻で笑いグラスを傾ける。(…何だ?何でこんなに胸がざわついてんだ?)
一瀬の中で理解が出来ない感情が芽生え始めていた。
「れ、零さん!カフェ代申し訳無いので、お礼にボトル入れますね」
「俺は男としての行動をしたまでだけど、妹ちゃんからのボトルは大歓迎だよ」
「龍夜お兄ちゃんにもボトル入れるね」
三条は一瀬に軽く微笑みを向ければ、返事は無いが、勝手にしろと言わんばかりの表情をしていた。
★
三条は閉店まで滞在していた。
店を出た後、壁際に寄りかかりしゃがみこむ。飲み過ぎたせいか、うつらうつらとしていた。
「──ろ。」
誰かの声がする。誰かは分からない。
「──おい、起きろ」ぞんざいに肩を揺する。「…チッ」
三条は眠りの世界に入ってしまっていた。
男は仕方無く三条を背負い込み、家路へと向かう。
「ん…」
男の背中から声がした。
「あんなとこで寝てんじゃねぇよ」
「あれ、お兄さん…。ごめん、一緒に帰ろうと待ってたら寝ちゃってた」
目を開けはしたが、意識はまだ浮ついていて、直ぐにでも瞼が閉じてしまいそうだった。
「──阿呆だろ」そう吐き捨てて、言葉を切った。
「俺ね──お兄さんの事、好きかもしれないんだ。初恋なんて経験無いからよく分かんねぇけど」
冗談みたいな夜に、似合わない言葉だった。




