侵食
三条は帰宅し、一瀬から借りた服とズボンを洗濯機に入れ回す。
適当にTシャツを手に取り袖を通す。
冷蔵庫から缶ビールを一本取り出し、一気に半分を煽り、パソコンの電源を入れる。
「二日間描いてねぇから、どこまで描いたんだったかな…」
右手でマウスを動かしながらデータを開く。
「あー…新キャラ描こうとして止まってたままか」
原稿は八割方仕上がっており、それほど焦りはしないが、ペンを握る右手が動かない。パソコン上の方に貼られた、龍夜と零と快斗の絵を剥がし手元に置き見やる。
取り敢えずペンを動かすも、新しいキャラクターではなく無意識に龍夜を描いてしまい消す。
何度描いても龍夜になり、描く消すの繰り返し。
そこで冷蔵庫から缶ビールとハイボールを数本取り出し、二本目のビールを一気に飲み干す。
三条曰く、酒を飲むと集中できるらしい。
酒を喉に送りつつ、描き進めるが、再び手が止まった。
新しい男キャラと相手の絡むシーン――一瀬の行為と言葉と同じだった。
「!!!!!?えっ、あ…」
昨夜の出来事が鮮明に脳内を過る。
顔が紅潮し、右手からペンが床に滑り落ちる。心臓が早鐘を打つ。
処理が追い付かず、ハイボール二本を開け飲み干す。
「他のページから仕上げよ…うん、それが良いって酒も言ってる」
問題のページを飛ばし、残りのページを仕上げていく。
残りの缶ビールとハイボールも空になり、空き缶が七本床に転がる。
時計は八時過ぎを指していた。
三条は欠伸をしながら何の気なしに保存を押す。
ファイル名を気付かず書き換えていた。“ryuya”と。




