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越境
酒が背中を押す。
話は意外にも盛り上がり、空き瓶がテーブルに並ぶ。
「で、──なんだけど…」
一瀬がグラスを手に背中を丸め、三条に距離を詰めた。
酔いが回っているせいか、無意識に軽く唇を重ね、舌で唇をなぞる。
「…っ──!!!?」
三条の顔は真っ赤に染まる。
心臓が跳ね、全身が熱を帯び、まるで胸の奥に小さな火が灯ったかのようだ。
息が詰まる。言葉が出ない。意識は唇に集中し、頭の中は真っ白になった。
「は、ガキだな」
──初めての感触。
どうしたらいいのか分からない。唇の震え、心臓の高鳴り、全てが新しく、甘く、痛い。
まだ名前も付けられない、けれど確かに「何か」が胸を満たしていた。




