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第43話 実力を見せつける

 いよいよ開始したセルヴィスとの決闘。

 とはいえ、今回の戦いは代理人を立てた形での戦い。


 決闘口上を述べたあと、セルヴィスはそそくさと、闘技場の後方へと引き下がっていった。


 俺はその姿を目で追いつつ、リオンに声をかける。


「んじゃ、そういうことだから。リオン、とりあえず控えといてくれ。あとは予定どおり……俺が戦う」

「うん分かった、気をつけてね、グレイくん」


 リオンはそう言って、闘技場後方へ下がっていく。

 俺はリオンを見送ったあと、あらためて視線を代理人五人衆に向けた。


「さあて、まずはどいつからだ?」

「……私だ」


 一番左端に立っていた男が一歩前に出た。


 太陽の光を浴びてキラキラに輝く金髪。

 華麗な装飾が施されたローブ。

 すらりとした長身と、甘いマスク。

 その口元に不敵な笑みを浮かべたいけ好かな……もとい、好青年。


「西方国境守備隊所属——焔の魔術師クラッソス……参る!」


 名乗りを上げたあと、俺の前に進み出たクラッソスは、ゆったりとした所作で杖を構えた。

 その動きに隙はなく、歴戦の手練てだれ感がビシビシ伝わってくる。


 ——でもまあ、こいつはメインキャラじゃない。


 なぜなら、背景に花が咲いてないから。


 そんなことを考えつつ、俺は杖を構えながら、相手の出方を伺う。

 しばらく互いが互いの動きを牽制しあう膠着状態が続いた。


 そして——


「動かないなら、こちらからいくぞ」


 しびれを切らしたように。先に動いたのはクラッソスだった。

 鋭く杖を振り抜くと、空間に火花が散る。

 そこから生まれたのは、直径はゆうに一メートルを超えるほどの真紅の炎球。


 熱風が肌を焼くように吹き付けてきて、観客席からもどよめきが上がる。


「燃えつきろッ!」


 クラッソスの号令と同時に、炎球がまっすぐ俺に向かって飛んできた。


「わおっ」


 俺は放たれた炎球を横っ飛びで回避。

 炎球は俺の真横をすり抜けて。その直後、耳をつんざくような轟音が鳴り響き、衝撃波が背中に突き刺さる。


 炎球はそのまま後方の壁に激突したんだろう。


 爆風で砂煙が舞い上がり、熱と砂の入り混じった空気が、喉をざらつかせる。


 その視界の先で、クラッソスは勝ち誇った表情を浮かべていた。


「どうだ、私の魔法の威力は。今のは序の口。私はこのレベルの炎魔法を、無詠唱で自在に操ることができる。命が惜しかったら、今のうちに降参したほうが懸命だと思わないかい?」

「いや、全然思わないっすね」


 俺は砂まみれのローブを払いながら、言葉を投げかける。


「確かに魔法の威力は凄かったけど、結局は火属性魔法アルデオを放ったってだけでしょ? 落ちこぼれの俺だってそれくらいできるし……」

「なんだと?」

「っていうか、アンタの肩書……焔の魔術師ってくらいだから、もしかして炎魔法しか能がなかったりして? だとしたら敵として、こんだけやりやすい相手はないね」


 俺の安い挑発を受けて、クラッソスの眉がぴくりと動いた。


「私の炎を侮辱したこと、万死に値するぞ——」


 そう言って、クラッソスは杖を高く掲げた。

 その先端に、さっきよりも巨大な炎球が形成されていく。しかも同時に三個。


 空気が震えるような熱気が、再び全身にまとわりついてくる。目の前の炎球から放たれる灼熱の圧に、額に汗が滲んだ。

 観客席からも、悲鳴にも似たどよめきが漏れる。


 しかし。


 俺は冷静だった。

 炎球の放射に備え、自身の杖を眼前に掲げる。


 「——《クリオ》」


 呟くような詠唱と共に、杖先から生まれたのは、小さな冷気の奔流だった。


 それを見たクラッソスは、あざ笑うような声を上げる。


「ふん、そんな小さなクリオで……この煉獄の炎を受け止めきれるとでも?」

「思ってるから、魔法を使ってるんじゃん?」

「愚か者め! ならば、消し炭になれッ!」


 怒気をはらんだ声が場内に響き渡り、それと同時にクラッソスは杖を振り下ろした。


「くらえっ——!」


 三つの巨大な火球が俺めがけて放たれる。

 炎球は、地鳴りのような唸りをあげて、同時に迫ってきた。


 俺は自身を焼き尽くそうとせん、その炎を見つめ、意識を研ぎ澄ます。


 ——臆すな、たぎるな、大丈夫。

 ——日々の練習のとおり、自身の底に渦巻く魔力マナを、ただ導け。


 俺は炎球の軌道を目で追いながら、魔力を練り上げていく。

 腹の底の底に渦巻く大きな魔力の塊——

 それを意識の奥から一気に引き上げ、杖先へと集中させた。


「——っ、いけっ!」


 炎球に向かって、杖を鋭く振り抜く。

 その杖先から、音もなく鋭い冷気がほとばしった。


 空気を裂くようにして放たれた冷気の濁流は、それにさらされた地面を凍りつかせながら、放射状にはしっていく。

 クラッソスの生み出した炎球をたやすく呑み込み、跡形もなく霧散させた後、なおも勢いを保ったままヤツの足元へと迫っていった。


「バカなっ……!? ぎゃあああああああっ!」


 あえなく冷気の濁流に飲み込まれるクラッソス。

 氷は容赦なく彼の下半身を包みこみ、地面と一体化させていく。

 クラックスはその場に縫い止められてしまった。


「く、くそ……! 動けない……!? こ、こんな……!?」


クラッソスは必死に氷から逃れようと必死でもがく。

しかし、その下半身はすでに完全に凍りついてしまっているため、びくともしない。


 俺はその様子を冷めた目で見つめながら、氷で軋む地面を踏みしめつつ、ゆったりとヤツに歩み寄った。


「ひっ——」

「ダメだよ、クラッソスさん。属性には相性があるんだから……」


 俺はにやりと意地悪く口角を吊り上げ、余裕たっぷりに話しかけた。


「火は風を制し、風は土を削り、土は水を喰らい……そして()()()()()()()――その均衡こそが、世界の理……」


基礎魔法の参考書に書いてあった一文をそらで口にする。


「バカの一つ覚えで一個の属性に固執してると、そうなっちゃうよ? 基本をおろそかにしないで、ちゃんと全属性満遍なく勉強しないとね。」

「バカな……ありえない……! この、魔法の威力は……! ありえない……! 貴様、どれほどの魔力を……!?」


 クラッソスの顔が、みるみるうちに驚愕と恐怖に染まっていく。

 絶望に染まるその顔に、俺は杖を突きつけた。


「まだやる?」

「こ、降参だ……」

「はい、勝負アリっと。おつかれさま」


 勝敗を決した俺は、杖先を下ろしてから、指をパチンと鳴らした。

 瞬間、俺が魔法で生み出した氷はすうっと溶け、あとには何事もなかったかのように、闘技場の踏み固まれた砂地だけが残った。


 一瞬の沈黙のあと、観客席からは、大きなどよめきが生まれた。

 驚愕と動揺が交じり合った空気が、まるで波紋のようにアリーナ全体を包み込んでいく。


「グレイ・ブラッドレイ……落ちこぼれだったはずじゃ……?」

「いや、今の魔法の威力、尋常じゃなかったぞ……」

「クラッソスが、一撃で……!」

「あんだけ広範囲を凍りつかせるなんて、どんだけの魔力を込めたんだよ……」


 きっと、そんな手のひら返しの意見があちこちでささやかれているんだろう。

 観客席の動揺を背に、俺は杖をくるりと回して肩に担ぎ、代理人たちのほうへと向き直る。


 「——さて、お次はどなた?」


 不敵な笑みを浮かべて、そう告げた。



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