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第41話 思わぬ助っ人?

 そして迎えた決闘当日。


 俺は決闘の舞台である模擬演習場に立っていた。

 模擬演習場は、ユースティティア学院の敷地内に設置された屋外施設。


 通常は、魔法の実践授業などで使用する場所だ。

 だけど、ユースティティア学院では、生徒たちや招待客の前で魔法を披露する公開式の模擬演習が定期的に催される。

 そのため、その造りとしては、赤土で踏み固められた円形の演習場を、すり鉢状になった観客席がぐるっと囲む、本格的な円形闘技場アリーナとなっていた。


「おーおー、すげえ人だなあ……」


 俺はその観客席から周囲を見渡して、思わず感嘆の声を上げた。


 決闘開始の一時間前だというのに、観客席はぎっしりと人で溢れかえっていた。

 各クラスの生徒達はもちろんのこと、学院の教師たち……だけじゃないな、これ。


「ねえ、グレイくん。なんだか学院の外からきた人が沢山いない?」


 俺の抱いた違和感を察したかのように、隣に立つリオンが小さくつぶやく。


 観客席の前列周辺には、高位貴族の象徴である羽飾り付きの礼帽を被った紳士や貴婦人が前列で日傘を広げて優雅に腰掛けているかと思えば、その後ろでは騎士団っぽいゴツいお兄さんたちが腕を組み佇む。

 他にも、一目で庶民と分かるような労働着姿の男たちや、あまつさえ親子連れまで。

 老若男女、様々な人たちが観客席を埋め尽くしてるのだ。


「おい見ろよリオン。賭け屋までいるぜ。ははっ、もう完全に見世物だな」


 会場の空気を茶化すように笑ってみせた俺に、すぐ隣から冷静な声が返ってきた。


「……おそらく生徒会の手筈だろう。貴族同士の決闘は滅多に起こることじゃない。見世物としてはうってつけだ」

「なるほどアレク先輩のしわざか」


 アシュレイのその言葉に、生徒会長アレク先輩の顔が脳裏に浮かぶ。

 あの飄々とした腹黒い笑顔。

 こういうことをやりかねない。


「まあ、いいさ。派手なのは望むところだぜ」


 俺はニヤリと意地の悪い笑みを浮かべ、胸の前でバシッと拳を突き合わせる。

 それからふっと胸の内に湧いた、一つの思いつきをアシュレイに投げかけた。


「なあ、アシュレイ。せっかくだから、賭け屋で俺に賭けておけよ。どうせ落ちこぼれのクズに賭ける奴なんていないんだ。セルヴィスの勝利が本命だろ? 大稼ぎさせてやるぜ」

「……私は賭け事に手を染めることはしない」

「あっそ、相変わらず真面目だねえ」


 俺はその()()()()()に笑顔をひとつ残して、リオンの方に振り返る。


「うっし、リオン。会場の様子も分かったことだし、ぼちぼち控室にいくか」

「うん」

「じゃ、そういうことでアシュレイ。俺たちはもう行くから。ここで見守っていてくれよ」


 闘技場内に入れるのは、決闘者と立会人のみ。

 リオンは代理人として立てたから中に入れるけれど、アシュレイは今回は見学側。観客席から見守る形だ。


「グレイ、リオン……どうか無茶だけはしないで。決闘を終えた後、無事に私の元まで帰ってきてくれればそれでいい。私が今この決闘に望むことは、ただそれだけだ」

「なに言ってんだ、アシュレイ。今お前が望むべきは、完全な勝利! それだけだ。セルヴィスの首を持ってここに戻ってくるから、安心しろ」

「……まったく、君というやつは」


 俺の軽口に、アシュレイは小さく肩をすくめて、頬を緩めた。


「じゃ、そういうことで、いってくる」


 その笑顔を見届けた俺は、リオンと共に控室へと向かった。



 ***



「あれ……お前は…………?」


 控室に入った俺とリオンを待ち構えていたのは、予期せぬ先客だった。


 マギナクラスの制服に身を包んだ()()()は、壁に背をもたれながら腕を組んでいる。


 後ろで結った紫色の長髪に、文句なしのイケメンフェイス。

 なのにその不遜な表情ときたら、まるで世界が自分中心に回ってると信じて疑わないような、そんなつらだった。


「ギャリー……お前、ここで何してんの? 部外者は立ち入り禁止なんすけど」


 眉をひそめつつ俺がそう聞くと、ギャリーはじろりと視線をこちらに移す。俺の問いには取り合わないまま、壁から背を離して、こちらに向き直った。


「ブラッドレイ。ありがたく思え——今日の決闘、この俺が手を貸してやる」

「……あんだって?」


 クラスメイトの口から飛び出した、思いもよらない申し出に、思わず俺は聞き返してしまう。


「察しの悪い野郎だ。この俺が貴様の代理人に立ってやると言っているんだ」

「いやいや、そんなこと分かってるわ。そっちじゃねーよ。なんで部外者のお前に、突然手助けするとか言われないといけないんだよ。気味悪いわ」

「勘違いするな。俺は別に貴様を助けたいわけじゃない」

「はあ?」

「卑劣な手段を使ったとはいえ、貴様は仮にも、この俺に一度土をつけている。その貴様がセルヴィスに無様に負けたら、俺の沽券に関わるんだ」


 ギャリーは鬱陶しげに前髪をかきあげると、相変わらず偉そうな態度で言葉を続ける。


「だからこの俺が直々に手を貸してやる。ありがたく思え」


 俺はそんなギャリーの自信満々な顔をじっと見返し、呆れ半分に肩をすくめた。


「悪いけど、間に合ってるんで」

「なんだと?」

 

 ギャリーの眉がピクリと跳ねる。

 断られるとは1ミリも思ってなかったんだろうな。


「なんせ俺にはすでにリオンという強力な助っ人がいるからな」

「え、え……!? グレイくん、せっかく助けてくれるって言ってるんだから、ギャリーくんにも手伝ってもらった方が……!」


俺の隣で慌てふためくリオン。


「ほらこのとおりリオンくんはやる気満々だ。お前の助けなんかいらねーってよ」


 俺の言葉を受けたギャリーは、リオンのことを値踏みするように上から下まで見つめてから、視線を俺に戻す。


「……ブラッドレイ、貴様本気で言っているのか?」

「ああ、本気も本気だよ。俺はセルヴィスなんかに負けねえから。お前は部外者として、大人しく観客席からポップコーンでも頬張ってろ」


 そう言い切った俺のことをしばらく無言でにらみつけるギャリー。

 しばらくの沈黙のあと、ギャリーは小さく鼻をならして、出口に向かって歩き出した。


 そしてふいに扉の前で立ち止まり、ちらりと肩越しに振り返る。


「もしこの決闘で、無様に地を這うようなマネをしてみろ——そのときはこの俺が貴様を殺すぞ」

「やれるもんならやってみな」


 俺がにやりと笑って返すと、今度こそギャリーは去っていった。


「ねえ、グレイくん」

「なんだ?」


 ギャリーの足音が完全に聞こえなくなった後、リオンがちょっと不安げな顔で俺を見上げて声をかけてきた。


「よかったの? ギャリーくんの申し出を断っちゃって」

「あんなヤローの手助けは必要ねえよ」

「でも、ギャリーくん、頼りになりそうだったのに」

「バカ! それが罠なんだよ!」

「え、罠? 何が?」


 俺はポカンとした顔を浮かべるリオンに向き直り、人差し指を立てて言った。


「あいつに助けられたが最後、間違いなくフラグが立つ」

「フラグ?」

「俺と因縁を抱えた宿敵が、敵を倒すために一時共闘……そんな展開、モロBLじゃねえか。腐女子の格好の餌食だ」


 確かにギャリーのスペックを考えると、アイツが手助けしてくれるなら、この決闘はたぶん余裕で勝てることだろう。

 しかし、せっかくセルヴィスとの決闘に勝利できても、その結果、ギャリールートに突入にするとかマジで目も当てられない。

 だからこそ、アイツの申し出は断ることが正解。

 見えている地雷を踏み抜くことを、俺はしないのである。


「とにかくリオン。ギャリーの手助けなんかいらねえよ。事前の作戦どおり、俺達二人の友情パワーでやってやろうぜ」


 俺はそう言ってリオンの背中をバシッと叩く。


「頼りにしてるぜ主人公」

「いてて、もう……分かったよ」


 リオンは背中をさすりつつ、呆れたような笑みを浮かべた。 


 その瞬間、控室の外から、パァァンッと高らかに響いたファンファーレが鳴り響いた。

 観客の歓声が、地鳴りのように響いてくる。


「いよいよだな、準備はいいか?」

「うん、いつでも」


俺とリオンは目線を合わせて、頷きあう。


「よし、いくぜ!」


そして二人で同時に、闘技場へと続く扉を開け放った。


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