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第20話 エンカウント

 さらにダンジョンを進むことしばらく。

 記憶にしたがい、分かれ道を右へ進み、その先の大きな木の根の隙間をくぐったところで——


 がさり。

 前方から、木のざわめきとは明確に異なる、何かの物音が響いた。

 同時に視界の先で何かが動く。


 足を止めて身構える俺たち。


「くるぞ……たぶんモンスターだ」


 俺が背後の二人に声をかけると、ごくりと息を呑む音が聞こえた。


 次の瞬間、草むらの奥から黒い影が飛び出してきた。

 俺達の行く手を塞ぐように、大きな植物型のモンスターが立ちはだかる。


「ツタクラーだ!」


 俺は反射的にその名前を叫んだ。


 その見た目は、でっかい食虫植物みたいな感じだ。

 肉厚な葉のような本体の中心には大きく裂けた口があり、中からは粘ついた液体が糸を引いている。


 これは……消化液か? 

 飲み込まれたとしたら、いやな予感しかしない。

 そして、厄介そうなのが、体から伸びた二本の長いツタ。

 俺たちの動きを見定めているみたいに、ウネウネとうごめいている。


 これも、触ったらやばい奴だな。

 触手系エロ同人みたいな目に合わされたら目も当てられない。


 というわけで、先手を打って、速やかに排除するのが正解である。


「で、出た……! 本物のモンスターだ……!」

「敵は一体、慌てずに対処すれば大丈夫だ!」

 

 リオンとアシュレイの緊張した声が耳に響く。

 ちらりと肩越しに二人を見て、俺は不敵に笑った。


「ここは俺に任せてくれないか?」

「……え?」


 二人は一瞬、きょとんとしたような顔で俺を見た。

 俺はすぐにツタクラーのうねるツタに意識を戻す。

 落ち着いた声で告げた。


「ツタクラーは植物系モンスター。炎に弱いんだ」


 俺はローブの懐からそっと杖を取り出す。


「アシュレイ、リオン、見ててくれ。学院一の劣等生、グレイ・ブラッドレイの努力の成果を——」


 杖を眼前に垂直に構えて、深く息を吸い込み、集中する。

 体内のマナを練り上げ、それに指向性を与え、炎の属性へと変換。

 それを杖先に集束させると、熱が立ち上り、空気が揺らめき始めた。


 危険を感じたのか、ツタクラーが動く。

 ツタを大きく振り上げようとした。


 だが、もう遅い。

 燃え盛る力が一点に収束し、やがて、臨界点を迎えた。

 

「――燃え尽きろ。《アルデオ(Ardeo)》!」

 

 俺がそう詠唱した瞬間、杖先から赤々と燃え盛る炎球が放たれる。それは一直線にツタクラーへと突き進んだ。

 

 炎球はツタクラーに直撃。

 一瞬にしてその体が炎に包まれる。

 激しく燃え上がる炎の中で、ツタクラーはのたうち回るように暴れるが——すぐに力を失い、その場に崩れ落ちた。

 

 戦闘終了……うん、思ったよりあっさりだ。


 俺はくるりと振り返り、満面の笑みで一言。

 

「いやぁ、どうよ? 俺の華麗なる炎魔法!?」


 リオンは目を丸くしていた。


「グレイくん、いつの間に……? ルークスもできなかったのに……」

「ふふふ、リオンくん。貴族の間では、『男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ』という格言があるのだよ。覚えておくがよい」

「え、なにそれ……」

「いやなんでもない。戯言だから気にしないでくれ」

「でも、でもホントにすごいよ! グレイくん!」 


 アシュレイも驚いたように一歩前へ出た。

 

「グレイ、その魔法は……」


 俺はアシュレイの顔を見つめてから、肩をすくめて笑う。

 

「ああ、前にセルヴィスの取り巻きに絡まれたとき、これ使われただろ? また絡まれたとき、今度は俺がお返ししてやろうと思って、ずっと練習してたんだよ」

 

 俺がそう言うと、アシュレイが感激したように俺の手をぎゅっと握ってきた。

 

「すごいぞ、グレイ!」

「え? わ……」


 手、柔らか!

 あとめっちゃいい匂い!

 アシュレイの予期せぬ急接近に、俺の心臓がバクっと跳ねた。


「すごい、すごいぞ! グレイ! 信じられない速さで魔法が上達している!」

「ま、まあな。俺って意外と頑張る男だからね」

「何言ってるんだ。意外とじゃない。君はすごく頑張る人間だ! 君の努力を側で見続けてきた人間として——本当に自分のことのように嬉しいよ!」 


 アシュレイはそう言って、キラッキラに輝く瞳で俺を見つめてくる。


(は、反則だ! その顔——!)

 

「は、ははっ! ま、まあな! やればできる子なんだよ俺は! この後もモンスターは俺がまとめて薙ぎ払ってやるから、安心しろ! はーっはっはっはっ!」


 俺はアシュレイのせいで、バクバクになった心臓を誤魔化すために、勢いよく笑った。

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