僕の決心と翔子の涙。
四時間目の終了のチャイムがなると、教室にいた大勢の人が食堂へ向かうため出て行く。
「ダーリン」
翔子が僕の肩を叩く。
「どしたの?ぼーっとして、いつものことだけどさぁ」
「ん?いや・・・なんもない」
翔子が二人分のお弁当を置いて、前の席を僕の方に向けて座った。
昼休みはこうして一緒に翔子の作ってくれた弁当を食べるのが日課になっている。
翔子は何となく料理ができなさそうなイメージだが(僕だけか?)
コレが意外と美味い。
男の僕には物足りない気もするが、
タコさんウインナーとか前も言ったように両親が作れないので、嬉しい。
一応言っておこう。
両親が料理できなくて、僕も料理できないのに誰が料理つくるんだ?
って思う人もいるかも知れないけど、うちにはちゃんと、料理上手なおばあちゃんがいる。
「ダーリン、玉子焼き食べてみて!今日のは自信あるんだぁ」
「え・・・うん」
翔子がアスパラガスのベーコン巻きを、ほおばりながら言った。
僕は今日、翔子にあることを言おうと決めていた。
「あのさ・・・」
「ん?」
「今日で一緒にお弁当食べるのやめよう・・・?」
「え・・・・・?それって・・・どういう意味・・・?」
翔子の顔がひきつる。
「ごめん。別れよう・・・」
カランと翔子の箸が乾いた音を立てて床に落ちた。
慌てて拾う翔子。
その瞳にはうっすら涙が浮かんでいた。
―心が血を流しそうだ・・・。
・・・翔子の顔を見れない。
僕のことを好きでいてくれて、お弁当も作ってくれたけど・・・。
「でも、関係を断つとかじゃなくて、友達に戻ろう・・・?」
翔子は涙も拭かずうつむいて、肩を震わせている。
「いいよ」
「・・・え?」
「ダーリン、美夏ちゃん好きなんでしょ?」
顔を上げた、翔子が赤い目でニッと笑う。
「なぜそれをっ?!」
「バレバレだっつーの!美夏ちゃん以外全員知ってるんじゃない?
美夏ちゃんも知ってるかも。ダーリン、分り易すぎだしっ!」
・・・恥ずかしすぎる。
「後悔しても知んないからね!」
「・・・うん」
「私、箸洗ってくるね!」
翔子はいつものように笑って教室を出ていった。
その昼休み中に、翔子が戻ってくることはなかった。
この話(72話)の翔子の気持ちにぴったりの歌見つけましたw
奥華子さんの「あなたに好きと言われたい」
*歌詞*
追いかけて 追いかけても あなたの背中の端も見えない
一つだけ願えるのなら あなたに好きと言われたい
いつか笑っていってくれたね あたしにはどんな事でも話せると
それがどれだけ残酷かを あなたは知るはずもないでしょう
会えなくなるくらいなら 自分の心に嘘をつくの
ずっと傍にいたい 恋人じゃなくても
追いかけて 追いかけても あなたの背中の端も見えない
一度だけ嘘でもいいから あなたに好きと言われたい
もしもあの子になれるなら やっぱりあたしはそれを選ぶでしょう
人は守りたいものだけに 本当の嘘をつけるのかな
夜中の電話 急にゴメンネと いつもの声であなたはずるいね
傍にいられないなら 優しくしないで
もう二度と戻れないなら あなたを抱きしめられないなら
この声も この体も あの時 捨てれば良かった。
会いたい ただそれだけであたしを動かしているんです
会えない ただそのことが すべての心をまどわしてゆくのでしょう
追いかけて 追いかけても あなたの背中の端も見えない
もう二度とあなたの声であたしを呼ばなくてもいいから
一つだけ願えるのならあなたに好きと言われたい