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幻。
日が傾きかけた頃、僕は家路についていた。
さっきから、ひっきりなしにおなかが鳴る。
ん?
さっきむこうに彼女が見えたような・・・。
まさかな・・・。
おなかが減りすぎて幻覚みたのだろう。
やっぱ昼飯無しはきついな。
僕は自分の頬を二、三回たたいてまた家路を急いだ。
・・・どこからか彼女の笑い声が聞こえる。
僕は、辺りを見回した。
あ、あれか?!
彼女らしき髪の長い女の子を見つけた。
後ろを向いていて顔は分かんないけど。
「美夏っ!」
彼女らしき女の子の肩に手を置く。
振り返ると・・・
彼女じゃなかった。
「なに?」
「いや、人ちがいです。すみません・・・」
「もうっ!」
そういうと、彼女じゃない女の子はワンピースの裾をひるがえして歩き始めた。
「すみません・・・」
僕はもう一度女の子の背中に謝って
肩を落として家に帰った。