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やっと。
「え…、それって…」
思ってもみなかった状況を把握しようと美夏の顔を伺うが、美夏はまた背を向けてしまった。
「カズは鈍感すぎだよ。…バカ」
美夏はつぶやくように言った。
「バカ、バカ言うな」
「本当のこと言ってるだけだしっ!」
美夏が小生意気に言い返す。
だけれど、全く腹は立たなかった。
むしろ、嬉しいとさえ思った。
やっと戻れた、そんな感じがした。
そして僕はあの言葉を言おうと、恐る恐る口を開いた。
「…付き合ってよ」
「無理」
即答?!
どういうことだよ?
美夏は僕のことが好きなんじゃないのか――…?