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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【34】『駄々っ子』 


「レオさんは……、異世界の人なんですか?」


「――――⁉︎」


 倒れた俺に覆い被さる形で、ラナが真上から俺を見つめている――。

 その口から飛び出した、突然の質問に俺は絶句した。


 ――なぜ……、なぜ、それがラナに漏れた⁉︎


 そんな俺の動揺が伝わったのか、


「近衛騎士さんからの手紙、読みました」


 ラナが冷静な声で、答えを与えてくれる。


「――――⁉︎」


 いや待て、俺は暗殺が成功した『逃走後』に、手紙を渡してくれと頼んだはずだ⁉︎

 慌てて、依頼先である近衛騎士の姿を探す。

 考えてみれば、ずっとその姿が見えない事に嫌な予感がする。


 まさか⁉︎ と思い当たった瞬間、舞台上に横たわる犠牲者の中にその姿を見つける。


「…………」


 勘違いか手違いだったのか、それとも面倒くさくなったのか――。

 こうなっては、もはや真相は闇の中だ。

 それにもうお亡くなりになった方を、責める気も起こらない……。


 だがラナは、俺が書いた『別れの手紙』を読んでしまった。

 その事実は、もはや揺るぎようがない。


 手紙の内容は、黙って去っていく事への謝罪と共に、その理由として、俺が異世界から来た人間――、加えて『神の眷属』である事が綴られている。

 だからもうラナは、俺が『異世界人』である事を知っている。


 いや、それどころか、少なくとも俺が狙撃に挑んだ時には、もうラナは事実を把握していたのだ。


「私、レオさんがそれでいいなら、納得しようとしました――」


 何も言えない俺に、ラナが再び口を開く。


「レオさんが悪い神様を倒すのは、私のためでもある――。それなら仕方がないんだ。諦めなきゃいけないんだって思いました……。でも、でも……」


 ラナの声が切迫感を増している。


「でもやっぱり私、納得できません! 諦められません!」


「ラナ……」


「レオさんが悪い神様を倒さなきゃ、この世界が滅びてしまうのは分かってます! でも、だからって、こんなお別れの仕方はひどいです!」


 無理に抑えていた感情が解き放たれ、ラナは冷静さを失っている――。

 事を丸く収めようとした手紙は、完全に裏目に出てしまった様だ。


 ラナの怒りも理解できる。怒って当然の事を俺はしてしまったのだ。

 だから、どんな非難も受け入れようと思うが――、今は戦闘中だ。

 視界の端には、今もククルが、火炎、電撃、魔弾と、魔法系スキルのオンパレードで、なんとか王兄を食い止めてくれている。


『あーら、ダーリン。拗らせちゃいましたねー』


 そのククルが念話で語りかけてくる。


『すまねえ、俺もすぐにそっちに行く!』


 苦戦の様子に救援を申し出るが、


『今、ダーリンがやるべき事は、彼女を落ち着かせる事でしょうに。ほんと分かってませんわね』


 逆にククルは、俺に来るなと言ってくる。


『でも、このままじゃ、お前も――』


『じゃあ、ダーリンが来て、状況が改善するとでも言うんですか? さっきのダーリンの攻撃が、まったく通らなかったのをもうお忘れですか?』


『それは……』


 ククルの的確な指摘に何も言い返せない。


『王兄を倒すには、彼女の『限界突破』が必要――。なら、どうすれば彼女がスキルを発動できるか、早くそれを考えてくださいな』


 そう言いながら、ククルはスキルで迎撃しながら、さらに鞭で攻撃を加えていく――。

 だが、それも強靭な皮膚に阻まれて、まったく通っていない。


 ククルがやっている事は、ただの時間稼ぎに過ぎない。

 いや、その時間稼ぎをククルは買って出てくれているのだ。


『分かった、ククル』


 ククルの思いを無駄にする事はできない。


『ご武運を――。フフフッ』


 ククルはそう答えながらも、迎撃と攻撃の手を緩めてはいない。

 このままククル一人では、いつまでももたないのは明らかだ――。

 それなら、ラナの説得を急がなければならない。


 だが――、


「ねえ、レオさん。一緒に逃げましょう」


「――――⁉︎」


 あまりに意外なラナの申し出に、俺は愕然とする。


「もう世界が終わるなら、このまま遠くまで逃げて、二人でその日が来るまで静かに暮らしましょう」


「ラナ……」


「ねっ、いいでしょう? ねっ?」


 いつものラナとは違う、まるで駄々っ子の様な言い分だった。


 ラナはこれまで姉として、また一家を支えなくてはいけない大黒柱として、自分を殺して生き続けてきた――。

 どうやらその抑圧された感情が、この極限状態で一気に決壊してしまった様だ。


 ヤンデレならククルですでに免疫があるが、このまた違ったベクトルの拗らせぶりに、俺はどうしていいか困惑してしまう。


 黙り込む俺に、


「それともレオさんは、やっぱりククルさんの方が大事なの⁉︎」


 と、ラナは激しい嫉妬を隠す事もなく、戦闘中のククルを指差す。


 その指先を追うと――、ちょこまかと巧みに逃げては、カウンター攻撃を繰り返すククルに業を煮やした王兄が、近くの石像を掴んで投げつけていた。


 だが、そんな大味な攻撃がククルに当たるはずもなかったが――、地面に激突して粉砕されたその破片がこちらに飛んでくるのに、俺は仰天する。


「ラナ!」


 次の瞬間、上に被さるラナを払いのける。

 そして、俺は無意識にその前に立ちはだかっていた。


 激しい衝撃の後に感じる、焼けつく様な痛み――。


 それは俺の腹部が、鋭い破片によって、深々と刺し貫かれていた事によるものだった。


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