表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/114

【31】『冷めた闘志』


 錬成した大鎌で、ラナが王兄に斬りかかっていく――。


 ラナの固有スキル『限界突破』は一時的にスキルレベルを爆上げして、その一撃必殺の威力で相手を葬るものだ。

 以前、王弟の前線司令を護衛ごと瞬殺した時は、『斬撃』のスキルレベルが50を超えていた。


 ――あの恐るべき力なら!


 と、俺は期待を込めて、振り抜かれる大鎌の軌道を見守る――。


 だが俺の思いは、いとも簡単に打ち砕かれる。

 ラナの斬撃が――、王兄に軽々と片手で払いのけられたのだ。


「あああああーっ!」


 反動を利用して体勢を立て直すラナの体からは、咆哮と共に『限界突破』の象徴ともいうべき鈍い光が、しっかりと放たれていた。


 ――スキルは発動している! なら、なぜラナの斬撃が通らないのか⁉︎


 困惑する俺の耳に、


「あーら、あんなモンですの? 期待外れですわ」


 というククルの声が聞こえてくる。


「お、お前、期待外れって――」


「シャラップ、ダーリン。ちょっと落ち着いて、彼女のステータスを見てごらんなさいな」


 ラナをバカにする様な発言に抗議しようとする俺を、ククルはそう言って制すると、大鎌を構え攻撃姿勢を崩さないラナを指差す。

 

 スキル:『創造:LV5』『錬成:LV8』『火炎:LV11』『電撃:LV12』『シールド:LV15』『再生:LV6』etc……。

 

 ――『斬撃:LV21』

 

「な、なぜ⁉︎」


 言われるまま、ラナのステータスを確認した俺は声を上げる。


 爆上がりどころか、少ししかスキルレベルが上がっていない!

 肝心の『斬撃』も、やっとレベル20を超えた程度だ……。


「あんなんじゃ、今のダーリンに毛がはえたようなものですわ」


 ククルの言う通りだ――。

 スキルレベルがオール20の俺の攻撃が通らないのだから、今のラナの状態で攻撃が通る訳がない。


「どうしてスキルが発動しているのに、レベルが上がらないんだ……?」


 理由が分からない俺に、


「簡単な事ですわ。『気』が練れていないのでしょうね」


 ククルはさらりと言ってくる。


「気――?」


「ええ。彼女は今、私に嫉妬して頭に血が上っていますわ。そんな状況で、一撃必殺の『気』なんて練れるものですか」


「…………」


 確かにメンタルが乱れていれば、百パーセントの力が発揮できる訳がない。

 そういえば、ラナは王弟の前線司令を暗殺する時も、呪文の様に自己暗示をかけていた――。


 それが今、俺がククルを特別扱いしていると勘違いした事で、ラナは集中力を欠いてしまっているのだ。


「このままいけば、ジリ貧で彼女はいずれ負けますわよ――。まあ私にとっては、悪い虫が消えてくださるのは、それはそれで結構ですけど……」


 棘のある言い方で、ククルがチラリと俺を見てくる――。

 だが、俺にはククルの真意が分かる。


 ククルは、


 ――さあ、どうにかしてみせろ! 


 と俺に言っているのだ。


 ――まったくヤンデレ女の心が、以心伝心で分かるなんて、俺もどうかしてるぜ……。


 我ながら、自嘲を禁じ得ない。


 その時、王兄が、


「グハハ、まだ食い足りん。食い足りんぞ!」


 と、獅子の顔から雄叫びを上げる。


 周囲には逃げ遅れたせいで、五体を食いちぎられた美女たちの死体が、いくつも転がっていた――。


 『饗宴』という名の暴虐。

 魔族が人間の姿に化けて、これまでどれだけの人間を食らってきたのかと思うと、さらに怒りが込み上げてくる。


 そんな俺の怒りをあざ笑うかの様に、


「グハハ、その女は特にうまそうだと目をつけておったが、逃げずに自分から向かってくるとは――。グハハッ、重畳、重畳」


 あろう事か王兄は、対峙するラナを見つめながら舌舐めずりをする。


 瞬間、怒りに任せて飛び出そうとするが、


「ダーリン、怒りが満ちた時こそ冷静に――。あなたは、それができる人ですわ」


 ククルの言葉に、俺は雷で打たれた様な衝撃を受ける。


 確かにそうだった――。

 センチアの固有領域で繰り広げられた、あの壮絶な殺し合い。

 その中で、俺はたとえ瀕死の状態でも、いつも『生』への冷徹な計算を働かせていた。


 ――そうだ、考えるんだ!


 俺の脳が、勝利に向かってフル回転を始める。

 レベル20の俺の攻撃には限界があるが、それはスキルに依存した時の話だ。


 だが俺のスキルは、魔法系皆無の物理攻撃系――。

 つまり、レベルを凌駕する攻撃兵器を錬成すればいいんだ!


 まずは手近なところから考えろ――。

 ステアーの連射は通用しなかったが、もし弾丸の威力を上げたとしたら?

 思いついた瞬間、俺は新たな弾丸が装填されたマガジンを錬成していた。


 .56ミリNATO弾には、普通弾であるM855の他にもう一つバリエーションがある。

 弾芯にタングステンを使用して、重装甲も貫通できる様にしたM995徹甲弾だ。


 俺は素早くマガジンを交換すると、ラナに目を奪われている王兄の横顔に照準を合わせる。


 冷静に――、冷徹に。

 無言のまま引き金を引くと、さっきとは段違いの衝撃に体が軋んでいく。


 だがそれでも俺は、


「グハアッ!」


 という王兄の絶叫を耳にしながら、けっして引き金を戻さなかった。


「ウウッ――」


 側面から三十発の徹甲弾を食らった王兄が、ついに膝をつく。


 とはいえ、致命傷にはならなかった様だ。

 だが、はるかに格下のレベルの俺の攻撃が、王兄に通った――。


 その事実に、俺の闘志はさらに燃え上がっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ