表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/114

【24】『魔の気配』

 

 荒れ果てた荒野を、東へ東へとひたすら進む。

 王都まで約三日の行程――。

 その間、通り過ぎる領内の、荒廃ぶりに息を呑む。


 中にはラナの暮らしている貧民街の方が、まだマシだと思える村もあった。

 もうそれだけで、東方を治める王兄の圧政ぶりが、十二分に理解できた。


 ――暴食王の名は、ダテじゃない。

 異世界とはいえ、人々が苦しむ姿は胸が痛む。


 その原因である圧政者の正体が、俺が討伐するべき『暴食神』であるならば、やはり倒さなければならない。

 苦しむ人々のためにも――。ラナのためにも!


「手筈は、王弟の配下がつけてくれるって話だが、まだ全然姿を現さないな」


 旅人を装うために、粗末なローブを頭から被った俺は、暮れていく地平線を眺めながら、独り言の様に呟く。


「そうですね。さすがに王の暗殺ですから、向こうも慎重になっているのかもしれません」


 同じくローブを被ったラナも、声をひそめながら、並んで歩く俺の顔を見上げる。


「ん――⁉︎」


 そんな時、沈む夕日の中に二つの人影が見えた。

 すぐに、スキル『洞察』と『索敵』を同時展開して、素性と敵意の有無を調べる。

 

 《所属:王弟軍近衛騎士団》

 

 それが攻撃してくる様子がない事を確認すると、


「ラナ、王弟の騎士団だ。ようやく来た様だ」


 心配そうな顔のラナに、危険がない事を知らせてやる。


 その二人に近付こうとすると、急に進路を変えて少し離れた林に入っていく。


 ――なるほど、人目につかない場所で接触したいって訳か。


 向こうの意図を理解した俺は、ラナを伴い少し遅れて林に入っていく。

 一応、スキル『探索』を発動させておいたが、特に伏兵らしき人影もなく、俺たちを闇討ちにしようとする罠はないらしい。


 深読みが過ぎるかもしれないが、これくらい慎重で丁度いいと思う。

 なんせ俺らは――、これから王の暗殺に臨むのだ。


「ラナ殿で、よろしいですね?」


 少し奥で待っていた近衛騎士たちに接触すると、まずは身分を照会される。


「はい――」


 ラナの答えに、近衛騎士が頷くと、


「一人と聞いていたが……、そこの男は誰ですか?」


 続けて、今度は俺に不審な目を向けてくる。


 やはり来たかと、


「ああ、俺は助太刀のレオだよ。聞いてなかったかい?」


 これで通ればよしと、とりあえずトボけてみる事にする。


「いや、来るのはラナ殿だけと聞いているが――」


 やっぱり通らない様だ……。

 うーん、ここは四の五の言い訳しても、余計に怪しくなるんだろうな……。


 それなら――、とスキル『情報操作』を発動する。


「――――!」


 途端に近衛騎士の片方が、何かを思い出した顔付きになる。


「そうだ――。助太刀のレオ殿ですね?」


「ああ、俺がレオだ」


 笑顔で請け合う俺に、


「私も失念しておりました――。失礼いたしました、レオ殿」


 もう片方の近衛騎士も慇懃に頭を下げてくる。


「いやいや、いいって事よ」


 そう言いながら、愛想よく笑う俺に、ラナがキョトンとしている。

 手のひら返しの対応だから無理もない。後でちゃんとスキルだと伝えておこう……。


 それにしても、この『情報操作』のスキルは、王弟の前線基地から逃げた時もそうだったが、ほんと使えるわ。

 だが冷静に考えれば、前線司令を殺しておきながら、今度はその王弟勢力の暗殺依頼を受けているんだから、因果なもんだ……。


「では、ご案内いたします。ラナ殿、レオ殿」


 俺の感傷を遮る様に、近衛騎士たちが声をかけてくる。

 まあ、考えても仕方ないなら、ここは余計な事は考えない方がいい。


 そう思い、ラナと並んで近衛騎士たちの後に従っていると、


『なにやらここは――、瘴気に満ちておるの』


 センチアが俺に念話で語りかけてくる。


『瘴気? なんだよそれ?』


『まあ、言うてしまえば『魔』の気配じゃな――。薄々は感じとったが、王都に近付くにつれて、どんどん濃くなっておる』


『どういう事だよ? モンスターの大群でもいるっていうのか?』


『確かに、かの存在も『魔』にあてられた獣のなれの果てじゃが……。とにかくレオ、気を抜くなよ』


『ああ……分かった』


 要領は得なかったが、いつになく真剣なセンチアの警告に、俺も素直にそう答える。


「なあ、ここから王都は近いのか?」


 不安を打ち消す様に、前を歩く近衛騎士に問いかける。


「およそ半日の距離です。夜のうちに王都に近付き、明日の『饗宴』に乗じて潜り込みます」


「饗宴?」


 初めて聞くキーワードに、俺は首をひねる。


「王兄は年に数回、王都で『饗宴』と称して、盛大な美女集めを催します――」


 近衛騎士の説明に、


 ――ケッ、権力者様はどこの世界でも悪趣味なこった。


 心で悪態をついていると、


「そこにラナ殿も出ていただきます」


「――――!」


 聞き捨てならない内容に、俺は放心状態になってしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ