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◯◯しないと出られない異世界  作者: ワナリ
第一章『怠惰:異世界攻略⁉︎』

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【19】『女王の帰還』


「あ、あの、レオさん。この方は?」


 池のほとりで正座している俺に、ラナが心配そうに声をかけてくる。


「主人……、いいえ飼い主ですわ」


 目の前にいる声の主が、平然とそう言い放つ。


「そうなんですか?」


 ラナさん、そこは普通に受け入れないで。辛すぎるから……。


「どうなんです? ――ダーリン」


「…………はい。そうです……」


 真上から見下してくる女王――ククルの圧力に、屈服した俺はそう答える。


「フフッ、いいお返事でしたわ」


 答えに満足したククルがニヤリと笑う。

 何日ぶりかは忘れたが、久々に食らうこの女王様ムーブに、ククルという存在をあらためて焼き付けられた思いがする。


 だが、これで一通りの懺悔は済んだ……。いや済みましたよね? ねっ、ねっ?


 そう判断した俺は立ち上がると、


「なあ、お前――、いつからそこにいた?」


 さっきから、どうしても気になっていた点を、ククルに問いかける。


 緊張する――。

 意図していなかったとはいえ、俺の告白モードを一部始終見られていたのなら、恥ずいのと同時に、今後何を言われ続けるか分かったものではないからだ。


「ああ――」


 そう前置きしてククルが、妖しく笑う。


 瞬時に俺の心が、

 ――あっ、これダメなやつだ。

 と、警戒アラームを鳴らす。


「見ていましたわよ……。ダーリンが、そこの女が脱ぐのを、後ろを向くフリをしながら、横目で覗いていたあたりから」


 はいキター! ククルさん、見事な脚色です! 俺の好感度、爆下がりですよねー!

 ――などと感心している場合じゃない。


「おい、ククル、なに言ってんだ⁉︎ ち、違うぞラナ。俺は覗いてなんかいないからな!」


 抗議と弁解を同時展開する。


「ウフフッ」


「れ、レオさん……」


 ニヤつくククルと、頬を赤くするラナ。

 それぞれ予想通りのリアクションに、分かっていても動揺する。


 もうここでの弁解は諦めて、ラナには後で個別に説明するか……。


 そう思っていると、


「でもダーリン? あそこで私が声をかけていなければ……、いったい、どうするおつもりだったんですかぁ?」


 俺の思惑を読んだかの様な、追撃が襲ってくる。


「おっ、おい何を⁉︎ 俺は――」


 こればかりは、全力で否定しておかなければマズイ!


 焦る俺に、


『いやー、そりゃ当然、おっ始めとったじゃろうな』


 いきなりセンチアの念話がブチ込まれてくる。


「おっ始める訳、ねーだろ!」


 思わず念話でなく、素で口走ってしまった。

 しまったと思ったが、もう遅い。


「あ、あ、あああああ……」


 ラナがアワアワしてしまった。いや、そうなって当然だわ。

 純情可憐なオボコさんを相手に、おっ始めるとか言っちゃった時点で、もう完全アウトでしょ……。

 しかも過酷な逃走の後だったとはいえ、センチアがいつも俺のそばにいるという事を忘れていたのも、大チョンボだった。


「違う、違う、違うんだーっ!」


 俺の声が森の中に、虚しく響く。


「フフフッ」


『クックックッ』


 そしてククルとセンチアの勝ち誇った笑いが、俺の心をさらにズタズタに引き裂いていく。


 もう勘弁してくれよ、と思ったが、


「でも……、ダーリンもちゃんとレベル上げには励んでいた様ですわね。結構ですわ――」


 もう満足したのか、突然ククルが話題を変えていく。


「まあ、全部レベル20じゃ、私に比べればまだザコレベルですけどね」


 ククルさん、褒めるかディスるか、どっちかにしてくれませんかね……。


 ひと通りヘコんだ後、


 クソッ、じゃあオメーがどんだけレベル上がったってんだよ!

 腹立ちまぎれに、ククルのステータスをスキルで開いてみる。


「――――⁉︎」


 その凄まじさに息を呑む。

 

 HP:550/550 MP:700/700

 

 スキル:『魔弾:LV45』『火炎:LV43』『電撃:LV44』『氷結:LV41』『シールド:LV46』『陥穽:LV41』『浮遊:LV41』『念動:LV43』『魅惑:LV48』『再生:LV45』etc……。

 

 もう爆上がりとかいうレベルじゃない!

 HPとMPも跳ね上がっているが、スキルに関しては、この異世界に来た時よりも全部四倍増しのレベル40台になっている。

 他にも、前にはなかった新スキルも増えているし……、これじゃ俺がザコと言われても仕方のない成長っぷりだ。


 負けを認めた俺をククルがニヤニヤ見ているが、く、悔しくなんかないんだからね! と自分に言い聞かせて、ここはなんとかスルーする。


 そういえばこいつはレベル上げに出る前に、『伝説の邪竜でも征伐してくる』とかセンチアに嘯いていたらしいが、いったいどれだけの敵を相手にしてきたんだよ……。


「ど、どうすりゃ、こんなにレベルが上がるんだよ?」


 その理由が知りたい俺は、直球で問いかける。


「ああ……、ちょっと『伝説の邪竜』とかいうのを狩ってきただけですわ」


 ほんとに狩ってきちゃったんですねー! しかも近所のコンビニでも行く感覚で……。

 聞いた俺がアホでした。もうククルさん、相変わらず、パネえっす。


「いや、マジでそんなのいるのか……。ハハッ、やっぱ異世界すげえな……」


 俺が力なく苦笑していると、


「ええ、王兄の――、『暴食王』の領地にいたんですのよ」


 ククルが俺にだけ分かる、鋭い視線を送ってくる。


「――――⁉︎」


 暴食――。

 そのキーワードは、萎えかけた俺の心を叩き起こすのに、十分なものだった。


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